Makiko Yamazaki Maki Shiraki

[東京 17日 ロイター] - 三菱商事が半導体製造事業への参入を検討していることが分かった。半導体の重要性が高まり商機が広がる中、富士通が売却に動く上場子会社・新光電気工業への応札も視野に入れる。事情を知る関係者2人が明らかにした。

三菱商事が参入を検討しているのは、半導体を最終的に完成させる「後工程」と呼ばれる製造プロセス。同関係者2人によれば、半導体の素材関連事業に携わる社員が主導するチームをすでに立ち上げ、事業化に向けた調査や分析などに動いている。

同関係者らによると、三菱商事は参入の足掛かりとして、富士通が50%を出資し、売却手続きを現在進めている新光電気の買収を検討。他の買い手候補と共同で入札する可能性があると、関係者の1人は話す。

三菱商事はロイターの取材に対し、「今年6月に半導体・環境素材事業部を立ち上げ、さまざまなビジネスを模索している」と述べる一方、新光電気の買収については「個別案件については回答を控える」とした。

富士通は「独立事業として価値を最大化すべく、さまざまな検討をしているのは事実だが、現時点で決まっていることはない」とし、新光電気も「コメントは控える」と話した。

後工程が主力の新光電気はインテルやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)など世界の半導体大手を主要顧客としており、前出とは別の関係者らによると、政府系ファンドの産業革新投資機構、米投資ファンドのベインキャピタル、KKR、アポロ・グローバル・マネジメントが買収に意欲を示している。

半導体製造は、シリコンウエハーの表面に電子回路を形成する前工程と、ウエハーからチップを切り出して封入、検査して完成させる後工程に分かれる。回路の微細化が極限まで進んだ前工程に比べ、後工程はまだ進歩の余地が大きく、競争力強化に向けて半導体各社が技術開発に注力し始めている。

前出と別の関係者らによると、韓国サムスン電子も部材メーカーなどが集積する日本に後工程の試作製造ラインを新設することを検討している。

「半導体立国」の再興を目指す日本は、政府が外資の半導体メーカー誘致や最先端製品の量産を目指すラピダス(東京・千代田区)の立ち上げに関与。異業種から参入を目指す動きも出てきており、SBIホールディングスが7月、台湾の力晶科技(パワーチップ)傘下の半導体受託生産大手・力晶積成電子製造と日本に工場を建設すると発表した。

(山崎牧子、白木真紀 取材協力:浦中美穂、大林優香 編集:久保信博)