【ミニ教養】ハマスの「真の狙い」を理解する
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ムスリム同胞団系のハマースに限らず、イスラーム政治運動というのは、イスラームに基づく国家をつくるのが目標です。
アル=カーイダに連なるターリバーンもそうだし、その名の通りのイスラーム国もそうです。
それは、イスラームというのは、預言者ムハンマドが行った通りのしたことをするのが人間として正しいことであると教えているからで、ムハンマドという人は、アッラーから伝えられた教えを説くとともに、武装した信徒たちを率いてアラビア半島を統一して、国家を打ち立てた人だからです。
ハマースが、イスラエルを倒してそこにイスラームに基づく国家を建てたい、というのは、特にユダヤ教が問題であるということではなく、何であれ異教徒の侵略者であり、もともとムスリムが支配していた土地を奪ってユダヤ教徒の国をつくったからです。
イスラームの教義上、異教徒に領土を明け渡すということはありえないので、取りもどす以外の選択肢はありません。
取りもどしたら、そこにイスラームに基づく国家をつくる、というのは、ハマースのようなイスラーム政治運動であれば、当然の目標です。
ただ、イスラエルが強大化するにしたがって、この目標はどんどん現実的ではないように見えてきました。
1988年ころは、ハマースはムスリム同胞団の一翼でしたが、エジプトのムスリム同胞団本体が、アラブの春で一時的に選挙で政権を取ったものの、その後エジプト軍のクー・デタで壊滅してしまいました。
現在のハマースは、イランの支援で成り立っている、イランの手駒です。
イランもまた、イスラームに基づく国家として1979年のイスラーム革命で成立した国ですが、国是としては、ムハンマドとその後継者たちがやったように、イスラームに基づく国家を拡大していくことになっています。
ただし、そういう革命当初の理念を本気で実現したがっているのは革命防衛隊などの政権中枢だけで、大多数の国民は生活がよくなる方が関心事ですが。
イランは、まず自国第一、次いでイラク、シリア、レバノン、イエメンといった、すでに影響下に置いている国を維持することが優先で、ハマースはそのための手駒として使われています。
ハマース自身がイスラーム国家をつくるのは、イランとしては、できればいいですが、それよりも、イスラエルをかく乱してイランを攻める余裕を無くすための手駒に使っています。ハマス憲章をメディアが取り上げることには意義があります。この手の原典にメディアで立ち返る記事は、あまりみることがありません。また、日本語翻訳が紹介されており、訳者の鈴木さんはパレスチナ研究者。今、フォローすべき研究者の一人。