2023/11/13
医療危機にどう対応するか?「重い」業界を変える変革者たち
日本のスタートアップ・エコシステムは、この10年で確かに成長してきた。しかし、諸外国との差は広がるばかり。なぜか。
そんな問いを巡りながら、日本ならではの希望と勝ち筋を探る、NewsPicks主催のカンファレンス
『START UP EVERYTIME』が開催された。
カンファレンスと連動し、すべてのステークホルダーのリテラシーを上げる大型連載、題して「〝スタエコ〟の論点──日本のスタートアップ・エコシステムの論点」をお届けする。
危機迫る日本の医療を支える、7年分の「リアルワールドデータ」
日本最大級のプライマリ・ケアプラットフォームを提供するヘルステック企業・ファストドクター。急速に進む超高齢化社会で、救急往診やオンライン診療を全国的に拡充し、いつでも誰もが医療にアクセスできる環境の実現を目指している。新たな医療インフラを構築するためのロードマップとは。代表取締役の水野敬志氏に聞いた。
──ファストドクターの創業は2016年です。水野さんとともに代表を務める菊池亮さんは医療の現場経験も持つ医師ですが、なぜ起業を選択されたのでしょうか。
水野 当時は、救急医療における選択肢が「救急車を呼ぶか・呼ばないか」の二択しかありませんでした。
愛媛県出身。京都大学大学院農学研究科修了後、外資系コンサルティングファームのBooz&Company(現PwC Strategy&)、楽天株式会社(現楽天グループ株式会社) にて戦略および組織マネジメントの経験を積む。楽天退職後、ファストドクターを含む複数ベンチャーを支援。2017年7月よりファストドクターの経営に参画、2018年6月代表取締役に就任。現在に至る。
「救急車を気軽に利用するのはやめて」と言われる一方で、「いざという時は躊躇せずに呼んでくれ」とも言われる。どうすればいいのか、悩みますよね。
深夜に急に体調が悪くなったとして、救急車を呼ばないと選択したら、朝まで苦痛に耐えることになる。緊急度の自己判断は非常に難しいので、重症者が診療を遅らせたことで病状を悪化させるケースもあります。
逆に、本来であれば救急車の必要がない軽症者の搬送が増え、結果的に重症者への対応が遅れたり、救急現場の逼迫につながったりもしています。
こうした状況に対して「救急往診」という新たな選択肢を提供し、患者さんの行動変容と医療の負担軽減につなげたいという思いがありました。
──ファストドクターでは「救急往診」だけでなく、さまざまな医療サポートを提供しています。
夜間・休日の救急往診に加え、オンライン診療、医師と看護師による医療相談を組み合わせて、プライマリ・ケアと呼ばれる初期医療の領域で、全国の医療アクセス改善を目指しています。
いまは一般の病院が閉まっている夜間や休日は、救急車で救急病院に行くことが中心ですが、ファストドクターが提供する救急往診では医師が患者さんの自宅で診察するので搬送の必要がありません。
往診が難しい地域ではオンライン診療を活用し、軽症であれば病院訪問の頻度を減らしつつ、必要な医療アクセスを維持できる全国的な仕組みを構築しています。
往診は医療機関から16km圏内で行うように法律で定められていますが、オンライン診療であれば一つの医療機関から全国の患者さんを診察できますから。また、医療リソースの少ない地域でも遠隔で都心部の医師を活用できます。
医療相談だけでいいのか、救急往診が必要なのか、もしくは救急車を呼んだほうがいいのか。窓口で重症度や緊急度を判定し、医師の最終判断のもと患者さんに適切な医療手段をナビゲートできるようにしています。
プラットフォーム上には3500人ほど医師が登録しており、最適な医療機関とのマッチングも行っています。
ドクターの勤務時間やマッチング先を調整するために、医療需要を予測するシステム開発やAIにも投資しているんです。
──コロナやインフルエンザのように医療需要は急に高まるので予測はかなり難しそうです。
おっしゃる通り、とても難しいですね。医療相談の件数や内容をリアルタイムで見ながら、どこにリソースを寄せるべきかを判断しています。
たとえば、大阪で「インフルエンザ」というキーワードの流入が増えたら、流行の可能性があると踏んで提携する医療機関に診察データを求めます。
その結果、インフルエンザ陽性率に高い数字が出ていたら、そのエリアにドクターを多く配置する、といったイメージです。
感染が落ち着いてから配置しても、提携する医療機関には人件費の負担だけが残ってしまうので、リアルタイムで予測することが重要なんです。
──数ある医療系スタートアップのなかでも、ファストドクターは医療インフラとしての存在感を高めています。強みはどこにありますか。
創業した2016年から蓄積されている診察データが強みです。
実際に患者さん一人ひとりを診察したデータ、つまり「リアルワールドデータ」をすでに7年分持っています。
3500人の登録医師が診察の現場に出ていて、患者さんとのコミュニケーションの品質も把握できています。
加えて、ファストドクターのプラットフォームは診察のオペレーションに深く関与しているので、それらのデータをもとに新たなオペレーションや開発したシステムをすぐに現場で試すことができます。
テクノロジー開発に特化した医療スタートアップが新たなシステムを試すとなると、共同研究や実証研究をしてくれる病院を探さなければならず、現場導入まではかなり時間がかかります。
圧倒的な早さでPDCAサイクルを回すことができるのは、大きなメリットだと感じています。
また、実務のフィードバックから現場を効率化することで医師にとっても魅力的な労働環境になっていて、ありがたいことに全体の20%がリファラル(紹介)で登録してくださっています。
──非常に社会的意義の高い取り組みですが、医療という領域で新しくビジネスを始める難易度はかなり高そうです。
そうですね。厚生労働省や医師会、地域の医療機関のみなさんに活動の意義を理解していただくために。社会的意義や医療品質の担保を含め幾度も対話を重ねました。
創業時は社会的意義以前の問題で、往診に対しての理解も得られていませんでした。
「救急往診で何ができるんですか? 医師が家に来ても聴診器を当てて帰るだけじゃないんですか?」と、逆風からのスタートでしたね。
2016年から2020年の間は少しずつ実績を積みながら、地道に理解者を増やしていたのですが、新型コロナウイルスの流行が転機となって急速に理解が進みました。
日本には「2040年問題」と呼ばれる、少子高齢化でピークに達する医療需要に、どう対応すべきかという深刻な課題があります。そこに向けて国も方策を議論していたものの、明確な答えは出ていなかった。
しかし、コロナによって同様の状況が20年も前倒しとなり突然、医療逼迫に直面したわけです。
病床が満員になって在宅医療の必要性が叫ばれるなかで、私たちはすでにそれを効率的にまわせるシステムとリソースを持っており、2020年時点で4年間オペレーションを続けてきた実績がありました。
2016年に始めたというと、「どうしてそんな前から?」と驚かれることも少なくなくて。それだけ新規性が高いことを当時からしていたのだと再認識すると同時に、実績の有無が物を言うと痛感しました。
診察データや患者さんからのフィードバックが蓄積されていた結果、私たちの安全性を証明できたので、自治体から委託を受け、ファストドクターを利用するように呼びかけてもらうことができました。
新規性の高い事業、かつステークホルダーが多いため批判を浴びることもありますが、そうした声に真摯に向き合うことが会社を強くすると思っています。
医療品質や適正度への声が聞こえた際にはトリアージ(症状の緊急度や重症度に応じて治療の優先度を決めること)の基準を見直すなど、アップデートを重ねてサービスのクオリティを高めてきました。
──医療DXの最先端を行く水野さんは、これからの医療がどう変わっていくと思いますか。
医療業界も、生成AIによって大きく変化すると思います。
前回のAIブームはディープラーニングが中心で、画像診断に革命をもたらしました。熟練の医師でないと見つけられない腫瘍をAIで見つけることができるようになったんです。
いま話題の生成AIには医師の診察に代わり得るほどのポテンシャルがあり、より精度の高い医療が可能になると思っています。
AIによる診察は患者側の受容度の問題もありますが、「30年後の医療で導入されていると思いますか?」と聞くと、みなさん「はい」と答える。
それくらい近い未来にはAI医療が当たり前になっていて、リソースを浪費することなく全国に適切な医療を届けられるようになると思います。
──最新テクノロジーも活用しながら、医療資源の効率的な供給を目指していくのですね。前例のないことに挑むうえで大切な考え方はありますか。
解決を急がないことに尽きますね。
救急往診のような新しい受診行動を日本に広げたいという思いで日々、取り組んでいますが、一方で「自分の代で根付かなくてもいい」という気持ちもあって。
たとえば、私たちの生活を支えてくれているヤマト運輸の「クロネコヤマト」も、47都道府県すべてに普及させるまでに、20年かかったそうです。
社会インフラとして定着させるためには数十年の時間がかかるし、イシューが大きいほど自分たちの代だけで解決することは難しい。
良いかたちで次の世代にバトンを渡せるように、自分たちの代でできるところまで駒を進めようと思っています。
「自分の仕事が後世につながっていく」喜びが、山あり谷ありのスタートアップで長く走り続ける原動力になっています。
日本の医療を未来へつなぐ「カケハシ」へ
超高齢化社会に突入している日本。これから医療のエコシステムが大切になってくるなかで、業界のアップデートを通して、医療の受け手と担い手に「しなやかな体験」を生み出すことをミッションとするスタートアップがある。日本の医療を未来へつなぐ “カケハシ” になるべく奮闘する、カケハシの中川貴史CEOに話を聞いた。
──カケハシでは、どのような事業を行っているのでしょうか。
中川 私たちカケハシは、調剤薬局向けのバーティカルSaaSをクラウドで展開している“だけ”の会社だと思われがちですが、実はもっと大きなビジョンを持って新しい世界の実現を目指しています。
東京大学法学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにて製造・ハイテク産業分野の調達・製造・開発の最適化、企業買収・買収後統合マネジメントを専門として全社変革プロジェクトに携わる。イギリス・インド・米国でのプロジェクトに携わった後、株式会社カケハシを創業。
いま薬局では、患者さんの安心と納得と満足が置き去りになっていたり、医療従事者が過剰な献身と自己犠牲を強いられていたりする現状があります。
ジェネリック医薬品は供給不足になるし、新薬は日本に入ってこない。その上、医療従事者が置かれる環境はより厳しくなっています。
私たちはこのような日本の医療のあり方を変え、サステイナブルな医療を作りたい。
カケハシのサービスはすでに、市場の10%を超える薬局に使っていただいています。その先にいる数千万人の患者さんへダイレクトリーチできる仕組みがあるのが、私たちの強みです。
この強みを活かし、日本医療の受け手と担い手、両者の体験をアップデートしたい。そして、単なるバーティカルSaaSプレイヤーから、日本の医療をより良く変革するプラットフォーマーになるべく進化の途上です。
──コンビニよりも数の多い薬局市場で、すでに10%以上のシェアを獲得しているのは驚異的です。猛スピードで導入が進んだのには、何か理由があるのでしょうか。
業務のすべてを管轄するような基幹システムの領域でマーケットの10%以上を取る事例は、国内ではほぼないほどの規模まで成長できました。
意思決定の重い「医療」という難しい領域であるにもかかわらず、このスピードで進めることができたのは、自身でも振り返ると、かなりすごいことだな、と。
背景には、薬局が「ただ薬を渡す場所」から、「薬の専門家として患者さんに価値を提供する場所」への大きな転換期を迎えていることが挙げられると思います。
飽和した薬局のマーケットでは、これまでとは違う薬局としてのあり方、薬剤師として医療との関わり方を変えていく必要がある。大きな岐路に立たされているんです。
国も変革方針を大きく打ち出していますし、薬局さんたち自身もその必要性を感じていた。そして、ちょうどそのタイミングで、並走しながら変化を実現する絶好のパートナーとしてカケハシが存在した。これが大きな理由ですね。
さらに、コロナをきっかけとしたオンライン化やクラウド化、DXの波といった大きなトレンドも、変化のスピードを加速させる追い風になりました。
──今年、シリーズCで総額94億円という大きな調達をされました。2016年の創業から7年、思い描いていたプラン通り、順調に進んできたという感覚ですか?
薬局さん向けにより良いシステムを提供し、さらにその一歩先、医薬品の供給や流通にまで関わることで患者さんに「しなやかな医療」を提供する。
このテーマは、創業当初からずっと描き続けている事業の伸ばし方だったので、その点では着実に思い描いた通りのステップを進んでこられました。
ただ、ここまでにいたる道のりは想像以上に大変でした。
まず、難易度が非常に高かった。私たちの挑む市場は、「いいプロダクトができた。市場規模も大きい。あとは“ザ・モデル型”を組めば売れる」というSaaSの王道のやり方で上手くいく場所じゃありません。
医療ど真ん中の根深い課題を解決することが事業の主軸であるがゆえに、そう簡単に成長させることができない。事業構築の難しさが半端なかった。
難易度の高いことを必死にがんばるかっこよさに共感して集まってくれる強い仲間がいなければ、やり遂げることはできなかったと思います。
また、薬局に導入の意思決定に踏み切ってもらうことも簡単ではなかったですね。
いいシステムや仕組みを作っただけで売れるわけではありません。
たとえば、私たちの提供する薬局体験アシスタント「Musubi」は業務基幹システムなので、「いいね」と思ってもらえてからが本番。
システムを導入し、既存システムからデータを移し、オペレーションの業務フローを全部切り替え、マニュアルを作り直して──非常に工数のかかる、大きなジャンプをしていただかなければいけません。
やはりこのジャンプのハードルは高く、興味を持ってもらえても「いまのままでいいや」と諦めてしまう方もいました。
ハードルを越えてもらうためにどう伝え、どう並走するかを考え、組織づくりをしていくのには想像以上に時間がかかりました。
──導入してもらうために、どのようなアプローチを試みたのでしょうか。
カケハシのシステムを導入することで生まれる変化や未来図を意思決定者のみなさんに共有し、医療業界が良くなっていくイメージを伝えてきました。
そのためには、まず私たちが深く現場を理解することが必要です。
医療のこと、薬のことをよく知った上で、現場の大変さを本当の意味で理解し、共感したうえで、カケハシの描く未来図を伝えなければいけません。「座学でちょっと学んだだけ」では薬局のみなさんを本当の意味で動かすことはできない。
でも実は、過去の経験よりもミッションやビジョンへの共感度やバリューに合うかを重視して採用しているので、カケハシに入ってくるメンバーの8割は医療業界出身者ではないんです。
業界のことを深く学び、パッションを持って相手の気持ちを動かせるようになるまでには時間がかかる。入社してからキャッチアップしていく情報量は多いので、大変ですね。
私自身も、創業初期からすごく勉強してきました。現場の方がどうやって仕事をしているのか、業界はどう変わろうとしているのか、国や厚労省は何を考えているのか──。それぞれが何を課題と捉えているのかを肌で感じる。
解像度を上げていくことを、すごく大事にしています。そうすることで、現場の方と一緒に悩み、課題解決をしていけると信じています。この「深い現場感」は、カケハシが大切にしている原点ですね。
──調剤薬局の現場で働く方々は大変そうですが、変革に積極的なのでしょうか。
人それぞれですね。でもやっぱり、「患者さんに価値を届けたい」「意味ある医療をしたい」「私たちは患者さんを救うためにいるんだ」という、いい意味でのプライドをみなさん持っている。
そのなかでも、とくに思いの強い方がカケハシの利用者には多いなと思っていて。熱い心を持った方々と一緒にがんばっていけるのは、すごくうれしいです。
この熱い輪が広がっていくことで、業界全体がきっと変わっていく。輪の中心にもっと炎を入れ続け、さらに熱い想いを伝播させていくような、そんなエコシステムを作りたいと思っています。
日本は人口が減り続け、超高齢社会になるうえに世界最長寿国。GDPも他国に抜かれ、国債を発行しながらなんとか国を生き延びさせているという現状にあるなか、さらに円安も加速している──。
この先、日本はどうしていけばいいのか。私たちに立ちはだかる大きな壁は、高齢化、医療や介護、そしてそれを支える社会保障制度、財源の確保です。
根本的で一番重たい日本の課題を、どう解決していくのかをカケハシは本気で考えています。大きな課題に熱い思いを持って取り組んでくださる方と、ぜひ一緒にチャレンジしていきたいですね。
ヘルスケアAIを世界に広げる「Ubie」独自の成長戦略
問診エンジンをコア技術に据えたプラットフォームを提供するヘルステックスタートアップ・Ubie。「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」をミッションに掲げ、超高齢化社会において成長産業である医療業界で注目されている。そんな急成長スタートアップの代表・阿部吉倫氏に、日本のスタートアップ・エコシステムの課題と展望を聞いた。
──阿部さんは「日本医療ベンチャー協会」の理事も務められています。日本のスタートアップ・エコシステムの現状をどう見ていますか。
阿部 終身雇用が当たり前だった時代から働き方の多様化が進んで、転職や副業がしやすくなりました。しかし、スタートアップへの転職はまだまだ少ないのが現状です。
スタートアップの大半はソフトウェア企業で、人材が企業の成長を左右するため、人材流動性の低さが成長の障壁になっていると思います。
2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。2017年5月にUbie株式会社を共同創業。2019年12月より日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science部門選出。2023年より日本医療ベンチャー協会(JMVA)理事。
──流動性を上げるには、どうすればいいでしょうか。
スタートアップへの転職を考える際に、優秀な人材が直面する最大のハードルの一つが給与です。
成長過程では給与にかける原資に限りがあるため、スタートアップの初任給は大企業に比べると決して高いとは言えず、これが転職を考えている方、とくに大企業に勤める方にとってネックになっています。
優秀な人材を取り込むためには、待遇面での課題解決をしなければならないわけです。
そのためUbieでは、全正社員にストックオプション(SO)を付与する制度「U-win」を今年4月から開始しています。
将来的な利益を共有することで、給与のハードルを越えて優秀な人材を引き寄せることが目的です。
入社時にストックオプションを付与する制度はもともとあったのですが、組織成長への貢献度に応じた付与や業務目標に合わせた付与を新たに加えて、会社の成長が個人の成長につながる仕組みに整えました。
また、社員一人ひとりの希望やライフステージに合わせて、ストックオプションではなく現金を選択することや、退職後に在籍年数に応じて権利を保有し行使することもできます。
ストックオプションがスタートアップに不可欠だという認識も定着してきていて、最近では政府による環境整備も進んでいます。
たとえば、副業での参画など社外協力者へのSO付与の要件の緩和などがあると、能力のある人材がより多くの企業でバリューを発揮することにつながると思います。
こうした取り組みによってスタートアップへの人材流動性を高めることで、グローバルに成長する企業を増やすことができるのではないでしょうか。
──医療事業をグローバルに展開するうえで、日本ならではの強みはありますか?
日本は平均寿命が80歳を超える世界一の長寿国で、医療先進国です。
国民皆保険とフリーアクセス*を採用していて、いつでも、誰もが安心して自らが選択した医療を自由に受けることができます。
また、医療へのアクセスと質を評価する「HAQ(Healthcare Access and Quality)インデックス」でもランキングの上位に位置しています。
*患者が自由に医療機関を選び、必要な医療サービスを受けることができる制度
そんな医療先進国の日本だからこそ、生成AIの安全かつ積極的な社会実装をリードできるのではないでしょうか。
生成AIは現在、驚異的なスピードで発展を遂げ、多くの業界で活用されています。
医療・ヘルスケア分野では、患者さんへの影響やプライバシー保護、医療倫理の観点から慎重な利用が求められていますが、政府は国際的な生成AIのルールづくりの牽引に意欲を示しています。
Ubieのサービスは創業時からAIをコア技術としており、2013年から多くの現役医師の協力を得ながら開発を進めてきました。
その結果、症状検索エンジン「ユビー」は月間利用者数700万人、「ユビーメディカルナビ」は全国1500以上の医療機関に導入されるまでに成長しています。
この医療・ヘルスケア領域でAI活用をリードしてきた知見・経験をもとに、今年7月にヘルスケア領域における生成AI等のイノベーションと安全性の両立を目指す研究組織「Ubie Lab」を創立しました。
テクノロジーとビジネスの力で増大する医療ニーズを解決し、マーケットでのプレゼンスを高めていきたいと思っています。
📍2024年1月31日までファストドクター水野氏が登壇したセッションを含むカンファレンスのアーカイブが、無料配信中。「アーカイブ・オンライン配信」チケットを選択!
執筆:伊東瑞紀、川合彩月
デザイン:月森恭助
編集:樫本倫子