2023/8/24

眠らせていては意味がない。お金は望む未来への「投票権」だ

NewsPicks Brand Design / Editor
 2000年代前半から、政府が「貯蓄から投資へ」を訴えたこともあり、個人投資家の投資意欲が増しつつある。実際、2023年3月末のつみたてNISAの口座数は540万口座。2018年末の53万口座から約5年で10倍以上増加した。(※1)
※1 出典:日本証券業協会「NISA口座開設・利用状況調査結果(2023年3月)」
 一方でつみたてNISAを活用し、投資信託を購入しても、個人が投資した資金が何に使われているのか把握している人は少ない。
「自国の成長企業への投資が進まないことには、個人資産の金融市場への流入による景気回復が進まず、最終的に個人の継続的な投資意欲も削がれるのではないか」
 そう語るのは、成長企業に固定利回りで貸付投資ができるサービスを手掛けるファンズ株式会社の代表取締役、藤田雄一郎氏だ。
 では個人投資家は投資の際にどんな観点を持てばよいのか。
 慶應義塾大学総合政策学部准教授であり、上場企業を含む数社のスタートアップの社外取締役を兼務する経営学者、琴坂将広氏と意見を交わした。

「投資」は「投票」だ

──「貯蓄から投資へ」をスローガンに掲げるなど、政府も個人の投資を後押ししています。個人投資家の活動について、現状をどう考えていますか。
藤田 資産運用の重要性について、みなさんの理解も進み、投資に興味関心を持つ人が増えてきました。これはとても良い傾向だと思います。
 一方で、投資された資金がどんな使われ方をしているか。この議論はあまりなされていません。
 例えばつみたてNISAなどを活用し、インデックスファンドを購入した場合、自分の資産がどこの企業にどれだけ渡り、何に使われているのかわかりづらい。
 もちろん、投資信託やETFは個人が資産形成をする上で重要な手段の一つですし、より多くの人が実践すべき投資の王道といえます。
 ただ、投資をした資産が日本の成長企業に渡り、成長資金として活用されれば、日本経済の活性化につながりますよね。
 そういう観点での投資先選びも、もっと広がってほしいと思います。
琴坂 投資は社会との関わりを多様にするものだと私は考えています。
 例えば、給料を勤めている会社からもらい、銀行に預ける。残ったお金で投資するときになんとなく積み立てをする。すごくシンプルですが、そこに思考がないことが大半です。
 しかし、特定の企業へポジションを取って投資をするとなると、その企業が好きか嫌いか、どんな企業活動をしているのか調べる必要性が生まれます。
 その上で投資の意思決定をする。つまり、思考という過程を経て投資をする。そうあれば、投資という行為は、自分の将来や未来をより良くするための選択肢を深く考えるきっかけになります。
 また、投資を未来を考えるきっかけにできれば、普段の生活から離れて、より広い視点から社会について考え、世界の見え方を広げる機会にもなります。
──投資は単なる資産形成にとどまらない、ということですね。
琴坂 投資は“未来への投票”でもあるのです。
 誰かが社会を良くしてくれる、国が先導して課題を解決してくれる、という時代ではないフェーズに世界は突入しています。
 様々な課題が世界レベルで山積みとなる中で、個人のアクションが大きな意味を持っています。特にお金の使い方は、誰でも自分で決められます。そこには意味がある。
 投資をするということは、どんな未来を描く企業に成長してほしいのかを考え、自身が望む社会の方向性に自分が“投票する”行為ともいえます。
──つまり、個別銘柄の株式をもっと買うべきということでしょうか。ただ個別企業の株を購入するのは、投資信託と比較するとリスクでもあり、ハードルが高いと感じる方も多いと思います。
藤田 株式投資は、比較的ボラティリティ(価格変動)が高いため、リスクを受け入れられる一部の方以外は、前向きになりづらい。
 ただリスクが低ければ、個別の企業に投資したいと考えている方もいるかもしれません。
 現在、日本には約1100兆円の現預金が眠ったままと言われています。日本経済の活性化のためにも、応援したい企業へ投資をする選択肢がもっと増えるべきです。
 ボラティリティを懸念して二の足を踏む個人投資家に向けて、より安定性のある選択肢があれば、眠っている資金も動きだすかもしれない。
 われわれ「Funds」も、そんな新しい投資の選択肢となることを目指して、サービスを展開しています。

成長企業と個人をシンプルに結びつける

──Fundsとはどのようなサービスなのでしょうか?
藤田 個人投資家から資産を集め、その資産を基に弊社がファンドを組成し、“継続的に成長”しそうな上場企業を中心に貸付けをするサービスです。
 個人投資家からすれば運用期間と予定利回りが設定された、社債(※2)に投資をするようなイメージです。
※2 企業が発行する債券。投資家から資金提供を受ける代わりに満期までに利子を支払い、満期に元本を返済する。
 利率も年利1〜4%程度(※3)なので、銀行の普通預金に預けるよりは、ずっと高い利回りを実現しています。
※3 税引前の年利で記載。
 一度投資をしたら、あとは運用期間の終了を待つだけ。投資した企業が倒産しない限りは、予定通りの利息を得ることができます。
 独自の審査基準を定め、審査を通過した企業のみを貸付先として選定しており、返済確実性を最重要視して貸付けをする企業を選定していますので、現状では、正常償還率(※4)は100%です。
※4 運用終了したファンドのうち、元本毀損(貸し倒れ・デフォルト)がなく正常に償還が行われたファンドの割合であり、将来の運用成果を保証するものではない。また元本毀損リスクはゼロではない。
──なるほど。比較的リスクが少ないため、株式投資よりも成長企業を応援しやすいということでしょうか?
藤田 それは一つあると思います。初めて投資をする個人投資家の中には、ボラティリティの高いものを避けたい方もいらっしゃいます。
 また7、8割の方は投資信託などの金融商品も保有しつつ、その次の投資先として、ポートフォリオの一部に組み入れていただいていますね。
琴坂 何よりも応援したい企業に投票する、その選択肢が増えたことが重要だと思います。
 資産形成の方法は人それぞれなので、個人のライフステージにあわせて一人ひとりが異なるポートフォリオを持てるといいですよね。
 これまでの投資の選択肢の多くは、そもそも一定の資産規模がないと購入することができなかった。また一定以上の複雑性が存在する商品もあるため、個人の方には手が届きづらかった。
「Funds」は、個人でも手の届きやすい選択肢を厳選して提示している。つまり投資の民主化に貢献しているといえるのではないでしょうか。
 例えば、株式投資と比較するとします。株を購入する際は、その企業が将来にわたってどう成長し、株価がどう変わりそうか、将来価値を自ら見定める必要があります。なぜならば、株式はその将来価値が現在の株価に大きく反映されるからです。
「Funds」は借入期間と利息が設定されており、その期間内に企業が借入金を返せるか審査された選択肢です。
 シンプルに元本と利息を返せるか、が焦点になりますので、個人が企業の将来価値を考える必要はより限定的です。
 そのうえで、その企業を応援したいかも勘案して、最終的な投資判断をすればいい。比較的シンプルなのがよいですね。
藤田 ありがとうございます。日本には約4,000社の上場企業があるため、一から応援したい投資先を探すのは難しい。
「Funds」はまだプラットフォームが小さいこともありますが、借入を予定している企業の特徴を見て選ぶだけです。個人投資家が「Funds」を見て、初めて知った企業の株に投資するケースも多々あります。
 そのなかには、非常に良い会社だけれど、株式市場では光が当たりにくい企業もある。「Funds」では、そういった企業を個人投資家の方にレコメンドするような役割も、一定できていると思っています。
──応援したい企業を探しやすく、シンプルにマッチングすることで成長支援ができているのですね。
藤田 はい。また、お預かりした資金を、直接企業にお届けしているため、個人が企業の事業成長に確実に貢献できます。これも株式投資とは異なる点です。
──株式投資でも直接企業に資金を届けているのではないのでしょうか?
藤田 個人が証券会社を通じて購入している株式は、既に市場に出回っているものです。つまり、証券会社が買い手と売り手をマッチングして、株式を購入したお金はその株を売った方に届きます。資金は直接企業に届いているわけではありません。
 もちろん、個別株を買うことでその企業の株価が上がり、結果的に企業が資金調達しやすくなるなどの間接的な効果はありますが。
 そのため、借入側の企業にとっても「Funds」は資金調達の新しい手段の一つになり得るんです。

イノベーションを起こすパートナー

──上場企業であれば、銀行融資や新規株式発行など、成長資金を得る手段がいくつもあります。なぜ「Funds」から借入をする必要があるのでしょうか。
藤田 上場企業であっても、成長のための資金が借りづらいケースがあります。上場企業が資金を調達する手段は主に二つ。
 一つが銀行融資です。
 ただ銀行融資で借りられるお金も、元はといえば個人の預金。大事な預金を融資するにあたって、銀行は使い道に厳格な基準を設けています。
 企業運営のための資金は借りやすくても、新規事業やM&A、海外進出など、過去の収益実績のない“成長資金”に関しては、十分に借りられない場合があります。
 またもう一つはエクイティとよばれる新規株式の発行です。
 ただ株価があまり高くない状態では、新株を発行しようにも大きな金額は集めづらい。また、既存株主などのダイリューション(※5)も懸念されるため、簡単にできる新規調達手段ではありません。
※5 既存株主の持ち株比率が低下すること。株価が下がり売却される。既存株主の企業への決定権が弱まるなどの影響が出る。
 そのような事情から成長投資ができず、上場までは急成長を続けていたスタートアップ企業でも、上場後に成長スピードが落ちてしまうことがあります。
琴坂 まさに、上場の前はVC(ベンチャーキャピタル)などから潤沢に資金調達ができたものの、上場後の資金調達に苦労しているスタートアップの声はよく耳にしますね。
 そもそも、本来の意味でのスタートアップは、まだ誰も解決していない社会課題に対して、そこに起業家がビジネスとしての可能性を見出し、勝ち目があるとは言いきれない中でも、挑戦をするものです。
 つまり収益実績がないところに切り込み、非連続的成長を目指す。そこにはリスクが介在しますし、成功は約束されていません。
 世界を変えようとしているスタートアップにとって上場は通過点にすぎない。上場してもこの挑戦を続けていきたいと考えている。
 特に上場後も急成長を続けている企業であればあるほど、成長の種をいくつも抱えている。資金があればもっと挑戦できる。
 そのため銀行融資や新株発行以外の、資金調達手段があることは非常にありがたい。
 実際に私が社外取締役を務めているスタートアップ2社も、資金調達の選択肢の一つとして「Funds」を利用しています。
──どのような目的で利用されているのですか?
琴坂 借入の目的は二つあります。一つは事業刷新、成長のための余裕資金。もう一つは事業そのものを成長させるための資金です。
 例えば、累計7億5000万円を調達したユーグレナは前者にあたります。ユーグレナは藻の一種であるミドリムシを食品や飲料、化粧品に活用することで、注目されている企業です。
 またサステナビリティを強く意識しており、ミドリムシからバイオ燃料を製造する研究開発にも取り組んでいます。
 非常に時間軸の長い研究開発であり、収益実績の観点から銀行融資が受けづらい部分です。また高い事業目標もある。
 そこで「Funds」を利用させてもらい、ヘルスケア事業、バイオ燃料事業、その他の事業の機動力を上げ、より積極的に展開し、同社の掲げる「Sustainability」が当たり前となる世界を目指しています。
 また、累計21億円を調達した五常・アンド・カンパニーは後者にあたります。同社は、新興国でマイクロファイナンス(中小零細事業者向け小口金融サービス)を行っている企業です。
 新興国の中小企業に融資することで、雇用の安定をつくり、低所得層の支援を行っています。
 お客様に対して資金を提供するためには、もちろんその原資が必要です。魅力ある調達条件で資金をいただけるのであれば、その資金を直接的に事業の成長に結びつけることができます。
 実際に「Funds」から得た資金を、新興国のお客様への融資に活用し成長を加速させています。数多くの新興国のお客様が「Funds」の資金によってその生活を前に進めているのです。
藤田 素晴らしいビジョンを持った成長企業に、資金面で協力できていると伺えて大変うれしいです。
 また「Funds」は銀行融資と比べると、審査・資金提供のスピードが速いため、タイミングを逃さずに借入れたいというニーズにも応えやすいと思っています。
琴坂 借入のスピードが速いこともメリットではありますが、比較して考えると成長企業に寄り添ってくださっている印象があることが「Funds」のメリットです。
 一緒に新しい世界をつくるスタートアップとして、連帯感があるというか。金融という異なる領域でありながら、一緒にイノベーションを起こしているという空気感を共有できていることがありがたいですね。

まるで渋沢栄一のような投資体験を

琴坂 私が想像する「Funds」の未来として、インパクト投資(※5)のリターンを入れていくことが可能だと思っていますが、藤田さんはどう考えていますか?
※5 社会問題や環境問題などの解決を目的として投資を行い、社会的リターンと金銭的リターンを同時に追求する投資
 例えば、五常・アンド・カンパニーであれば「融資した中小企業の従業員年収を20%向上させる」という特約条項を入れた上で貸付を募集するとか。
藤田 まだ本数は多くないのですが、人権や環境など、社会課題解決に調達資金をすべて使うと約束した上で借入をする「サステナビリティボンド」のような取り組みは既に行っています。
 今後は、個人がインパクト投資をすることができるファンドも増やしていきたいと考えていて、既に社内で議論も始まっています。
琴坂 広がってほしい取り組みですね。世の中的にも、投資した資金が具体的に何に使われるのかという視点は重要性が増してきています。
 資金を預けることで、金銭的なリターンだけではなく、社会的なリターンも得られるとするならば、投資という行為はもっと魅力的になるのではないでしょうか。
 自分の資金によって望む未来をつくることができるようになるためです。
 投資の規模や時代は違いますが、例えば、渋沢栄一も日本の産業育成・振興のために様々な資金ニーズの企業に投資をし、鉄道網の発展等を後押しした。
 そのように、自分の資金によって社会が変わった、社会課題の達成に関われたと実感できれば、充実感を得られます。
 株式という仕組みの中だけでは得られない充実感を「Funds」なら補完できるのではないかと思っています。
藤田 まさにそうですね。投資を始める個人は増えてはいるものの、まだ約1100兆円の現預金が眠ったまま。
 個人には、低リスクでしっかりとリターンをお返しする。企業には成長資金としての貸付を増やし、個人と社会の双方を幸せにする。それが「Funds」の役割だと信じています。
 まだまだ微力ではありますが、個人が企業の成長を後押しするエンジンとなれるよう、さらに邁進していくつもりです。
 そのために今、弊社に足りていないのが”人”の力です。
 今回お話したような、弊社の実現したい世界観に共感いただける方、まだ明確な答えのない領域に知的好奇心を持って挑める方がさらに集まれば、社会への影響力も高まり「Funds」の役割を全うできると考えています。
ファンズ株式会社 第二種金融商品取引業
関東財務局長(金商)第3103号
加入協会:一般社団法人第二種金融商品取引業協会
手数料・リスクについて https://funds.jp/terms/commission-risk-matters