[東京 28日 ロイター] - 28日の東京市場で大幅な債券安、株安が進行している。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化を決めたことで、債券売りが強まり、為替市場での円高と株安がそれぞれ深まる「玉突き」が生じた。

国債先物は、日銀会合の結果発表後に下げ幅を拡大。中心限月9月限は一時前営業日比1円62銭安の146円79銭に下落した。新発10年国債利回り(長期金利)は同14.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.575%と、2014年9月以来の水準まで上昇した。

日銀が長期金利の変動幅について上下0.5%を「目途」としたことに加え、連続指し値を1%に引き上げたことを背景に、売り圧力が強まった。市場では「0.5%は目途という日銀が得意とする曖昧な表現にして残し、事実上は上限を1.0%まで拡大したことになる」(三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト)との見方が聞かれる。同様の観点から「YCC自体を形骸化させつつあるのだろう」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミスト)との声が聞かれた。

為替や株式市場では、結果発表の直後こそ、事前の観測報道の範囲を出ないとの受け止めから、出尽くしが意識された。ドル/円はいったん上昇し、日経平均は下げ幅を縮小した。ただ、長期金利の上昇が勢いづく中で、流れが一変し、それぞれ再び下げを強めた。日経平均は先物が主導する形で一時800円超安に下落。会合結果を消化する中で、目先は不安定な値動きが続く可能性がある。

もっとも、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは、日本株は割高とまではみられておらず、米株のようには金利上昇を受けた株安の余地は大きくないと指摘、「押し目を買いたいニーズは根強く、日米の中銀会合の通過を待ってエントリーするにはいいタイミングとの判断があってもおかしくない」と話す。金利の上昇が一服すると、株価は500円安程度に下げ幅を縮めた。

目先の焦点は、植田和男総裁の記者会見に移る。仮にタカ派姿勢が明確に確認されれば、さらなる円高進行の可能性もあると、トレイダーズ証券の井口喜雄市場部長は話す。「植田総裁がどのようなスタンスをみせるかで、今後のドル/円の方向性が決まりそうだ」(トレイダーズ証券の井口氏)として、関心が寄せられている。