塩野義、早期退職を募集 50歳以上の約200人
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日本の研究開発型製薬企業は、そのバリューチェーンにおいて、かつては研究力と営業力という上流と下流の2極で競争優位性が相当に決まる構造だったため、これら人材の質と量の確保に対して大きな投資を行ってきました。しかし近年、競争環境が変化しています。
研究力については、かつての自前主義とは異なり、現在は見込みのあるシーズを提携や企業買収で入手する指向性が高まっており、必ずしも自社の研究所の人材を拡充する方向性が指向されなくなりました。その方が比較的確実性が高いまたは低コストという考え方によるものだと思います。
医薬品は特許が切れるとジェネリックの台頭を許す運命にあることから、短期間で売り上げを高い位置に持ち上げる必要があります。それに失敗すると次の新薬への投資に支障が出ます。
製薬企業が営業力を重視していた理由は、日本独特の「人の影響力を介した販売手法」が確実に成果を上げる方法と考えられてきたことによるものですが、新型コロナ感染拡大で訪問営業に大きく制限が加わっても、それほどの売上の低下は見られなかったため、業界各社は非常に高コストな訪問営業に力を入れなくても良いのではないかと考えるようになりました。そこで先行企業が営業要員の数と販売費を削減すると業界全体として人的営業の競争環境が緩やかになり、そこに追随する企業が加わった結果、さらに業界の人員削減が進んでいるものと思われます。
塩野義製薬に限らず製薬企業が考える競争環境の変化が激しい以上、しばらくの間は多くの企業で人員削減が指向されるでしょう。また開発職や事務職のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を引き受ける企業も増加していることも人員削減の動機になり得ると思います。昨年から増えてますよね。ノバルティス、ファイザー、バイエル、中外製薬と早期退職優遇措置を実施していたと記憶しています。塩野義製薬が特別というわけではなく業界全体で進んでいますが、外資ではないという点は珍しいですね。
なお、OpenWorkでちょうど発表した“40-50代が評価する育成環境が優れた企業ランキング”の2位には中外製薬さんがランクインしていました。教育体系の充実だけでなく、キャリアパス、評価に関するポジティブなコメントが多かったのが特徴的でした。早期退職を促すだけでなく、リスキル・アップスキルによる社内労働市場の活性化がセットになっていることがミドル人材の活用でポイントになりそうです。