なぜ危機にある日銀植田総裁にみんな優しいのか
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注目のコメント
「植田総裁はなぜ攻撃されないのか。引き締めていないからである」 (@@。
次の総裁は火中の栗を拾うことになると言い続けて来ましたが、おそらく強い打診を受けただろう黒田緩和に責任のある日銀副総裁が全て挙って就任を拒否する中、敢えて引き受けたのが学者出身の植田総裁です。長く続いた異次元緩和とそれに頼った巨額の財政赤字で、日本経済の水面下には、政策変更、即ち利上げに耐えられない構図が出来上がっています。
①政府が抱える1000兆円の借金
②日銀が抱える600兆円を超える低利の国債とETFとREIT
③バブル的に高騰したマンションを買うため家計が積上げた低利の変動金利ローン
④企業が長期運転資金を賄って生き延びるため借りた短期転がしの低利の借金
⑤カネ余りで集まる預金を日銀に預けたらマイナス金利を取られるので社債等々長期の資産を買って運用している地銀等の存在
などが最たるもので、万が一にも米国並みに政策金利が5%、長期金利が3%上がったら、これらが内包するリスクが一気に表面化するでしょう。加えて、日銀が大株主の株価も不動産価格もおそらく急激に下がるはず。
「欧州は実体経済がそもそも脆弱すぎて、引き締めに耐えられない」とありますが、引き締めに耐えられないという点で、10年の黒田緩和を経た我が国は欧州の実体経済より数段上のレベルにある筈です。
日本経済は、このまま緩和を続ければ出口で起きる混乱が大きくなり続ける、かといって引き締めの素振りを見せれば、水面下に隠れた問題が一気に表面化する、という二律背反の状況に置かれています。植田総裁は、ひょっとしたら、学者として外から見ていた時以上のリスクを日銀に入って感じていらっしゃるんじゃないのかな・・・
金融緩和を歓迎する市場の思惑は脇に置き、火中の栗を敢えて拾った植田総裁の無為を現時点で責めるのは、あまりに気の毒なように感じます。とはいえインフレ率が日銀の言う通り今年度1.8%、205年度1.6%で収まるとは考え難いところです。それがはっきり見えた時、果たしてどんな手が打てるのか。
「『正しい』金融政策に向けた6つの指針」に書かれた内容、私は同感です (^^;理由はシンプル。
①小幡さんは「緊急避難的なトリッキーな手法は即時撤廃すべきだ」と言って、かつての白川時代の愚策に戻ることを望んでいるようだが、植田総裁は過去の失敗を繰り返すほど愚かではないからであり、国民はそれを肌で感じているから。
②ジャーナリストに、植田総裁に経済的の理論をきちんと踏まえて、議論をふっかける力がないから。これは、総裁就任会見でのQ&Aを見ても明らか。
だから、国民は「植田さんに優しい」のです。
この現実と、小幡さんは向き合うべきです。これは、小幡先生の筋論は別として、メディアにもある種のバランス感覚が働いているということではないかなと感じました。
海外中銀への批判の根本には、「インフレ圧力を『一時的』と見誤った」ということがあります。ただ、日本の場合、植田先生はまだ就任直後であり、前総裁時代の見方を短期のうちに急変させるのは、市場への影響も考えればなかなか難しいことを、記者の方々もわかっているという事情はあるでしょう。
また、「通常の政策における引き締め」と「極めて異例の政策の正常化」がいくら違うといっても、中銀がアクションを起こせば「引き締め転換」と受け止められがちである以上、軽々な発言はできないという事情も、記者の方々は勘付いているのかなと感じます。
一方で、法的に与えられた中銀のマンデートが物価安定である以上、近年の物価情勢のもとで海外中銀が批判にさらされているのも、やむを得ないことだろうと思います。