「脳動脈瘤」に薬による治療の可能性 理研など研究グループ
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遺伝子情報の解析が病気の新しい治療の解明につながる可能性を示す好例だと思います。ただし、あくまで「可能性」であって、実際に既存の治療を置き換える治療になるかどうかは臨床試験の中で確認される必要があります。
仮にマウスでスニチニブまたはその類似薬の効果が確認できたとして、人間で投与した際にも同様に効果を発揮するのか、既存の治療と少なくとも同等の効果が見られるのか、また薬剤の全身投与となった場合に局所治療となるカテーテル治療と比べてかえって副作用リスクが大きくならないかなどを確認するプロセスが重要となります。スニチニブは、マルチターゲット受容体型キナーゼ阻害剤で通常は抗がん剤として使われています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%81%E3%83%8B%E3%83%96
マルチターゲットという名前が示しているように、標的となるタンパク質が複数あり、複数のキナーゼを同時に阻害します。ここでは血小板由来成長因子受容体(PDGFRβ)が標的として挙げられていますが、スニチニブを投与した場合、その他のキナーゼも同時に阻害してしまいます。今回の用途の場合、スニチニブそのものでなく、血小板由来成長因子を阻害し、他の標的に結合するにしてもスニチニブとは別の選択性を持つ阻害薬の方がより望ましい可能性はあります。
そもそもキナーゼは、活性サイトの構造が似ており、1つの標的にのみ結合する際立った選択性を持つ化合物をつくることは難しいです。ここで言及されているスニチニブは、VEGFの阻害薬の文脈で開発されてきたことが覗えますし、Kit受容体にも結合します。(リンク先pdfの表1を参照)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/136/4/136_4_204/_pdf
臨床試験については、カテーテル治療のみを行った場合を対照群にして、カテーテル治療とスニチニブまたは新たに調整したPDGFRβ阻害薬を併用した場合を比較した試験を行えば、臨床試験に参加した患者さんへのデメリットは少ないのではないかと思います。