2023/6/4

【熟考】「テック資本主義」の世界を、私たちはどう生きるか?

NewsPicks編集部
話題のChatGPTはじめ、資本主義にテクノロジーをかけあわせた「テック資本主義」は、私たちの生活に次々と新しいテクノロジーを送り込む。
たしかに、大抵の場合生活は便利になる。だが、その引き換えに実は大きなものを私たちは失っているのではないか?
「今週の1冊」インタビュー後編は、政治学の入門書籍『政治的に無価値なキミたちへ』(イースト・プレス)著者の大田比路氏に、進み続ける「テック資本主義」の課題と解決策を聞く。
INDEX
  • 時間をバラバラにされる私たち
  • 「ささやか」に抵抗せよ
  • 資本主義以外の選択肢
  • NPは少し孤独なメディア

時間をバラバラにされる私たち

──本書では、人権や教育、結婚などさまざまなテーマが扱われています。その他にビジネスパーソンこそ考えるべき内容はありますか?
ビジネスパーソンの皆さんにぜひ考えてほしいのは「後期資本主義」というテーマです。
僕は大学の講義でいろいろなテーマを喋りますが、学生たちが最も関心を寄せるのは、「資本主義」や「階級構造」の話です。
後期資本主義とは、1920年代から始まった資本主義のことです。
それまでの伝統的な資本主義は、単に企業やビジネスや労働に関する仕組みや思想を指しましたが、1920年代あたりからは僕らの日常空間まで本格的に拡張していきました。
いまや僕らは、街中のどこを歩こうと広告宣伝に遭遇するし、テレビドラマや映画の鑑賞中にもPPL(編集部注:Product Placement、間接広告)などの実質的な広告を目にする。
恋人を見つけるのも、友人と会話するのも、夕食のレシピを考えるのも、左翼政党が大衆に理念を訴えるのも、資本家階級の所有するプラットフォームに依存しています。