2023/6/3

思考を整理分解することでパワポを最強の武器に

ライター
ビジネスパーソンなら多くの人が日常的に使っているソフト、PowerPoint(以下、パワポ)。手軽にわかりやすく作る資料というイメージがある一方で、実は「わかりにくいパワポ」になっているケースは少なくありません。

Twitterなどでパワポ芸人として活躍する一方、シリョサクを起業し、資料作成にまつわるさまざまなサービスを展開する豊間根青地さんに、今さら聞けない「使えるパワポ」の極意を教えてもらいました(第1回/全3回)。
INDEX
  • 大事なのは「何を伝えるか」
  • 主役は「聞き手」。相手をどう説得できるか考える
  • 要素が多すぎると伝わらない
  • 「1スライド1メッセージ」にこだわらなくてもいい
豊間根青地(とよまね・せいち)
1994年東京都生まれ。東京大学工学部卒。サントリーで通販事業のCRM・広告などを担当する傍ら、趣味のPowerPointで作成したスライドがSNSで反響を呼び、「パワポ芸人」として出版・メディア出演・セミナーなどさまざまな活動を行う。2022年に独立し、シリョサクを創業。Twitterフォロワー数は11万人を超える。

大事なのは「何を伝えるか」

「桃太郎」の鬼退治をテーマに「もし桃太郎がイヌ・サル・キジにお供になってくれるようプレゼンしたら」というパワポのスライドを作成。Twitterで1.8万の「いいね」がつくなど大バズりしたのがパワポ芸人こと、豊間根青地さんです。
提供:豊間根青地さん
豊間根さんが作成した桃太郎の鬼退治のプレゼンスライドはTwitterで大きな反響を呼んだ
豊間根「もともと高校生のときからTwitterが好きでいろいろ投稿をしていましたが、2020年くらいからパワポを使ったネタ画像を投稿するようになりました。そうこうするうちに、桃太郎など誰もが知っている昔話をビジネスに置き換えた『パワポ昔話シリーズ』がブレイク。
今ではシリョサクという会社を起業して、パワポを始めとする資料作成についてのセミナーや資料の制作などを担っています」
そんな豊間根さんは、パワポのメリットはずばり「ビジュアライゼーション」だと言います。
「パワポがWordより優れているのは、文字情報だけではわかりづらい概念をビジュアルで直感的に伝えられる点です。そのため経営企画や営業企画などの企画系の仕事をしている人には、使い勝手がよいツールとなっています」
ただし、資料としてパワポが最も優れているというわけでもありません。Amazonやトヨタが社内会議でのパワポ資料を禁止した例もあるように、パワポ作りにムダに時間をかけるのは非効率だという見方もあります。そもそも、その組織がパワポ文化なのか、Word文化なのかでも、最適なツールは違ってくるでしょう。
資料を作る目的は“わかりやすく伝える”ことにつきます。それができるなら、必ずしもパワポである必要はなくWordの箇条書きでもOK。大事なのは、ロジカルシンキングで思考を整理して、相手に伝えることです。
それはあらゆる仕事に共通すること。つまり、パワポ作成には仕事の考え方ややり方の基本が詰まっているともいえます」
takasuu / iStock

主役は「聞き手」。相手をどう説得できるか考える

スライドを作るときに、主役はあくまでも「聞き手・読み手」だと心がけることも重要です。相手がその資料から知りたい情報を得られ、それにより提案に納得したり、行動に結びついたりすること。それがパワポで資料を作成する最終的なゴールです。
「作り手が言いたいことだけを一方的にパワポに書き連ねても、聞き手や読み手は興味をそそられませんよ。相手の気持ちになって、その資料にどんな価値があるのかをわかりやすく伝えることがポイントです」
上司に提出する企画書なら、コストや成果についてひと目でわかる。それが優れたパワポ資料となります。
「ただし、情報が羅列しているだけでは、相手の心に響きません。いかに相手の心を動かすようなストーリーで伝えられる資料かが、パワポ作成の肝となります」

要素が多すぎると伝わらない

逆に言いたいことが伝わらない、わかりにくいパワポというのはどのようなものでしょうか。
典型的なNGパワポは、要素が多すぎる、つまりノイズが多いケースです。情報を詰め込みすぎている、色やムダなデザイン要素が多いなどで、目立たせるべきメッセージがわからなくなっています。
下にあるようなスライドだとごちゃごちゃしていて、結局、何が言いたいのかひと目でわかりません。
提供:豊間根青地さん

「1スライド1メッセージ」にこだわらなくてもいい

また、パワポ作成の基本ルールとしてよくいわれるのが「1スライド1メッセージの法則」です。要素が多くなりすぎないように、1スライドにメッセージをひとつだけにするというのは合理的なようですが、その結果、ページ数が膨大になってしまうのは考えものです。
次のスライドは豊間根さんのパワポ昔話シリーズで「赤ずきん」を題材にしたものですが、オオカミが“私の顔の部位が大きい理由”を1枚のスライドで3つあげています。
提供:豊間根青地さん
「1スライド1メッセージと考えるならば、この3つの理由はそれぞれ1枚ずつのスライドに分けることになりますが、必要最小限の要素にして並べることで、情報が多すぎるという印象にならず、十分見やすく仕上がっています。
逆に、あえて1枚に3つの理由を並列にまとめたことで、わかりやすさが増しているはずです」
ここまで、優れたパワポの基本的な考え方を学んできました。では、さっそく次回から具体的なパワポ作成のステップをご紹介していきます。