2023/6/2

【衝撃】わずか3時間で「神AIツール」を作り上げた日本人

NewsPicks NY支局長
3月29日、あるツイートが生成AI界の話題をさらった。
「タスク駆動型の自律エージェントを作りました!」
これは、自分の目的や夢を入力するだけで、その実現に必要なタスクをAIが自律的に洗い出し、反復することで、その取り組むべき優先順位をAIが列挙してくれる。
例えば「最強のビジネスメディアを作る」と打ち込む、と…。
  1. 既存メディアをリサーチし、業界の現状を知る
  2. そのメディアの目標、オブジェクティブなどミッションを作る
  3. ターゲットとなるオーディエンスを同定し、彼らにリーチする戦略を作る
などと、取り組むべきタスクの優先順位を自動作成した後、次のような結果を出してくれた。
私は、このビジネスメディアに、顧客に報酬とインセンティブを提供する顧客ロイヤルティ(会員)制度を開発します
お、NewsPicks惜しいじゃないか…、と思いつつ。
こうしたタスク駆動のAIは、ChatGPTだと逐一質問文を考えないといけないが、このBabyAGIを使うと多少抽象的なゴール(例:世界の飢餓を直す)でも、AIが自律的に反復を繰り返し、具体的なタスクに落とし込んでくれる。
精度を上げていくと、ビジネスパーソンのメンターになり得る神ツールだ。
しかも面白いのが、これを開発したのが、非エンジニアの投資家だということ。日本生まれの中島洋平さんは、米国でVCを創業する傍ら、何年にもわたり、主にノーコードでIT系のツールを作る日々を続けてきた。
生成AIのポテンシャルも昨年8月には気づき、色々触っていたところ、コードを使わずにプロンプト(自然言語の指示)だけで作ったこのBabyAGIが、3月公表するや否や、米国中で話題をさらった。
わずか数日の間に英語メディアで次々と取り上げられると、プロジェクトには直近までOpenAIで製品トップを務めていた人物が参画し、全米トップVCのa16zまでが取り上げ出したほどだ。
さらに現在も次々とBabyAGIの派生ツールが生まれ続けている。
NewsPicksでは、中島さん本人に直撃し、BabyAGI開発から、これをオープンソースで公開した経緯、さらには、このローンチが本業のVCに利益をもたらす意外な仕組みまですべてを聞いた。
INDEX
  • ノーコードで全部作る
  • 自作ツール70個。OpenAI公式に
  • 最短30分。BabyAGI誕生の瞬間
  • 論文もコードも、ChatGPTで
  • OpenAI元幹部が参画
  • 勝手に「派生ツール」が誕生
  • 「15分」でツールを作るコツ

ノーコードで全部作る

──中島さんは投資家でありながら、自らBabyAGIを開発されました。その背景からお伺いできますか。
僕は、日本で生まれシアトルで育ちました。
高校だけ日本だったんですが、大学はカリフォルニアで過ごして、またシアトルに帰ってきました。
父が元マイクロソフトのエンジニアである中島聡で、その関係で、高校の頃からたまにコードを書く練習は父にも勧められたこともあって、楽しくやっていたんです。
とはいえ、僕自身はエンジニアになることはなく、卒業後は、VCのTechstarsでディズニー・アクセラレーターに入って働きました。さらにその後、日系のスクラム・ベンチャーズで投資家をやり、3年前にUntapped CapitalというVCを自ら立ち上げました。
その創業時に、一つ決めていたことがありました。