白木真紀 山崎牧子

[東京 15日 ロイター] - 東芝の持分法適用会社のキオクシアホールディングスと、ウエスタンデジタル(WD)の日米半導体大手2社の合併協議が加速し、統合比率など詳細を話し合う段階まで進んでいることが分かった。フラッシュメモリーの市況低迷で両社とも業績が悪化しており、合併による規模拡大で競争力を強化したい考え。事情に詳しい関係者2人が明らかにした。

キオクシアとWDはNAND型フラッシュメモリーの世界シェアでそれぞれ2位と4位。合併すれば最大手の韓国サムスン電子と並ぶことになる。

関係者の1人によると、検討中の現在の計画は、統合会社の出資比率がキオクシア43%、WDが37%。残る20%は両社の既存株主が保有する方向で調整している。東芝など既存株主の各社が合併会社にどう関与するのかは現時点で明らかになっていない。

同関係者によると、WDはすでに発表しているハードディスク駆動装置(HDD)事業の分離を実施。その上でフラッシュメモリー事業をキオクシアと統合する。合併後は営業・マーケティングをWDが主導し、製造をキオクシアが担う。統合会社は将来的に上場を目指す。

キオクシアには米投資ファンドのベインキャピタル率いる連合が56.24%、東芝が40.64%、HOYAが3.13%出資している。WDには昨年、米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメントが約10億ドル相当の株式を購入したと発表し、フラッシュメモリーとHDDの事業を分離するよう提案していた。

ロイターの取材に対し、キオクシア広報は「憶測にはコメントしない」と述べた。WDにも取材を試みたが、連絡がとれず、コメントを得られていない。

両社は三重県四日市市の工場を共同出資するなど関係が深く、ロイター含めた報道各社が合併協議を報じてきたが、両社を取り巻く事業環境が悪化する中、ここに来て話し合いが加速した。キオクシアはもともとIPO(新規株式公開)を目指していたが、米中対立の影響で中国への輸出が鈍化して延期になった上、市況の悪化で実現できずにいる。

メモリーは開発と製造に莫大な資金が必要で、規模が競争力を左右する。ただ、寡占化が進んでいるDRAM事業を持つサムスンに比べ、キオクシアのようなフラッシュメモリー専業メーカーは市況に左右されやすい傾向にある。

キオクシアが12日発表した2023年3月期業績は1381億円の最終赤字(前年は1059億円の黒字)に転落。WDが9日発表した23年1─3月期業績は5億ドルの最終赤字だった。

エリオットは非上場化を計画する東芝の大株主でもある。東芝は日本産業パートナーズ(JIP)が主導する買収提案に賛同しているものの、買い付け価格が低いことを理由に、株主に対し公開買い付け(TOB)への応募推奨を留保している。JIPがTOB価格を下げた理由の1つは、東芝の持分法適用会社で業績が悪化しているキオクシア株の評価額が低下したためだった。

(白木真紀、山崎牧子 編集:久保信博)