月面着陸失敗。それでもispaceが「成果大」と言える理由
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注目のコメント
実際、かなりいい線まで行っていたと思う。
自動着陸に必要なソフトウェア技術を総称してGNC (Guidance, Navigation, and Control)と言います。自分の位置と速度を知るのがN、そこから取るべき軌道、姿勢、速度を求めるのがG、Gが与えた姿勢・速度に追随させるのがCです。今回はNのエラーで失敗しました。なぜかは分かりませんが、上空6 kmほどの地点ですでに高度0だと「勘違い」していたみたいです。その時点で速度を減速し、接地するまでゆっくり降りたのですが、あまりにも実際の地面が遠すぎたので燃料が切れて落下してしまったようです。それまでは姿勢はちゃんと制御できていたとのこと。もしGとCがちゃんとうまく行っていたならば、問題はNの一つだけ。
しかも、今回の失敗で実データを手に入れた。ミッション2の前にGNCを実データを使って試験できます。これは果てしなくでかい。今回の失敗からしっかり学び改良すれば、ミッション2の成功はかなり期待できるのではないでしょうか。
どんなに控えめに言っても、今回の着陸失敗は後退ではない。それどころか非常に大きな前進だったと思います。
ちなみに高度の推定はうちの火星探査機はレーダーを使っています。ispaceのはレーザーレンジファインダーを使っていたみたいですね。そこら辺のトレードオフは僕はわかりません。信頼性が命なので、性能を攻めるよりも古くて確実で保守的なチョイスの方がいいと思います。
さて、お金の話。
10年、100年単位でモノを考えなくてはいけない宇宙開発は、株式市場との整合性が極めて悪いかもですね。どうしてこのタイミングでIPOだったのかは、たしかに大きな疑問。どうやって民間宇宙開発をファイナンスするか、まだ未解決の問題ですね。結局、今のところうまく行ってるのは
1) 超大金持ちさんのポケットマネーに頼る(Blue Origin)
2) 国からドカンとお金をもらう(SpaceX)
のどちらかです。VCも株式市場も数年単位で儲けを出すことを狙っている人たちが基本なので、うーむ。株式市場からの調達はVirginOrbitが盛大に失敗しましたからね。結局、10年、100年単位で投資してくれるのは、超金持ちか国かの二つしかかいがないのかもしれません。
追記 二日連続ストップ安か。。。厳しい。。。中継で着陸の様子を見守っていたのですが、予定時刻を過ぎても、ispaceの管制室からは一向に「成功」の連絡はなし。
映像では、CTOの氏家さんが厳しい表情をされているのが見えたので、「これは何か良くないことが起こってるな」と思いました。
中継の映像に写っていたテレメトリーのデータが実態を反映したものだったのかはわかりませんが、予定時刻の直前までうまくいっているように見えただけに、宇宙のミッションは本当に最後までわからないものですね。
しかし、一夜明けた会見では経営者の皆さんに悲壮感はなく、妙に安心してしまいました。確かに株価は下がっていて、ミッション2、3に向けた資金調達も簡単なことではないでしょう。
それでも、月に1000人が住み、年間1万人が訪れる時代の到来という夢に向かって、挑戦し続けてほしいと思います。このフェーズの不確実なビジネスに対して一般市場の投資家にリスクを持たせるのか?というのはもっともな指摘。一方、だからこそリスクを分散させる必要がある、という見方もできるのではと思います。