いまだにMotoの赤字消化にひきずられるが…
モトローラ買収から1年、2つの戦場に挑むレノボ
2015/2/17
あっという間に、また春節(旧暦正月)がやってきた。昨年の旧暦大みそかは誰もが新年の準備をしているときに、レノボによるモトローラ・モビリティ買収のニュース原稿を書いていた。あの買収からまもなく1年という今、とうとうレノボがモトローラのスマートフォン「Moto」を中国市場に連れ戻した。Moto X、Moto X Pro、Moto G、Moto Hintなどいずれも高評価な4機種。かつてノキアと並ぶ人気を誇っていた、あのMotoが「帰って」きたのだ。
もっとも、ここ数年激しく変動してきた中国スマートフォン市場は、懐かしさだけで生き残れる場所ではない。販促、価格、販売ルート、製品の魅力がメーカーの生死を決める。ここ1年の大きなトレンドとしては、ブランド価値やプレミアム性を武器とするメーカーが低迷し、コストパフォーマンス、すなわちシンプルな設計ながらも高性能を実現しているメーカーが成長を遂げた。後者の代表格がシャオミとファーウェイだ。
足を引っ張るモトローラ買収を「後悔していない」
先日、レノボが2014年第3四半期(10〜12月)の財務報告書を発表した。売り上げは上昇し続けているが、純利益は前年同期比で5%のマイナスとなった。モトローラ・モビリティが抱えている赤字が足を引っ張った。
もし、モトローラ・モビリティ、そしてそれと同じく大型買収となったIBMのX86サーバー業務に関する無形資産償却と約束手形利息払いなどのコストがなければ、今期の純利益は前年同期比23%増の3億2700万ドルに達していたはずだ。モトローラ・モビリティ買収をいかに受け入れるのか、レノボは今現在、消化の苦しみに直面している。
だが、レノボの楊元慶CEOは、Motoの業績は好調と語る。レノボとMotoブランドの販売台数は合計で2470万台に達した。Motoの今期出荷量だけでも1000万台を突破している。モトローラ・モビリティ買収は、レノボをサムスン、アップルに続く世界3位のスマートフォン・メーカーの座に押し上げた。
楊CEOはもともと、Motoの黒字転換には4〜6四半期が必要だと語っていた。昨年10月の買収完了時から数えれば、レノボのMoto受け入れと黒字化にはあと1年近い時間が残されている。「買収後も赤字が続くMotoだが、後悔はしていない」と、楊CEOは繰り返しこうコメントしている。
楊CEOの強気はどこからくるのか。
それはたんにレノボが国際大型案件買収の経験が豊富だというだけではない。生産・運営におけるマネージメントという長所があるからだ。今後は販売増に加え、原材料や運営コスト、生産・物流コストのコントロールなどをサポートしていく予定だ。そうして次の四半期には4億〜5億ドルのコスト削減が実現する見通しとされる。
2つのトレンド、2つの戦場
米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は、Motoの中国市場復帰は、2つのブランドを持ったレノボが2つの戦いを強いられることになると指摘している。レノボブランド自体はシャオミなど中国国産メーカーとの競争、一方でMotoはアップル、サムスンといった海外のハイエンド・ブランドと戦う、と。
これはあくまで感性的かつ表面的な認識に過ぎない。だが、楊CEOはこれらの背後に潜む2つの隠れたトレンドを見据えている。しかもこのトレンドはいずれもシャオミと深い関係があるのだ。
第1のトレンドとして挙げられるのは、オンラインショッピング・モデルの衝撃により伝統的な販売モデルが大きく揺らいでいることだ。携帯電話キャリアという既存の販売ルートは弱体化し、携帯電話キャリアの縛りを前提とした契約を検討する人は激減している。問題はレノボの携帯電話販売がいまだに携帯電話キャリアに依存していることだ。
もう1つのトレンドは「ユーザー」作りである。シャオミはファンによる販促モデルを作り上げた。無数の忠実なファンユーザーを育てることで、大きな波及効果を勝ち得たのだ。
レノボにとっての2つの戦場とは、ローエンドおよびミドルレンジでのシャオミとの競争、ハイエンドでのアップル、サムスンとの戦いだけではない。むしろ販売ルートとブランドイメージの再構築という2つの戦いこそが喫緊の課題なのである。
まずは、コアになるユーザー作りに着手
かつてレノボは、IBMのパソコン業務買収で逆襲のきっかけを得た。今、同様の状況が出現していると言える。しかし、スマートフォンの競争はパソコン以上に激烈だ。携帯電話キャリアや実店舗に依存した販売ルートではすでに戦えない。販売ルートを刷新し、ネット時代のトレンドに適応することが必要だ。
パソコン時代に築いたブランド資源をいかにスマートフォンに敷衍(ふえん)させていくか。これは厳しいチャレンジだ。モトローラ・モビリティ買収は近道だったとはいえ、携帯電話業界におけるブランド力をさらに進化させる必要がある。
先月行われた記者会見は、主にMotoファンにスポットを当てた。ここ数年、中国市場から姿を消していたとはいえ、Motoにはいまなお多くのサポーターがいる。コアとなるユーザーへの対応から着手し、「ブランドによって製品展開し、ファンによって販売台数を稼ぐ」という、レノボのモトローラ新戦略が透けて見える。
新しい取り組み――スマートホーム戦略
またあまり注目されていないようだが、レノボ自体のブランド転換とその思考、Motoというブランドをいかに利用するかという点以外に、レノボという老舗パソコンメーカーによるモバイルインターネットと未来のトレンドへの取り組みが始まっている。今年4月初頭には、レノボが新たな子会社「神奇工場」を立ち上げることが判明している。これはスマートホームのオープンプラットホームとエコシステムの構築を目的とした企業だ。
類似の動きとしては、先日明らかになった、スマートフォンメーカー「魅族」とEC大手の「アリババ」、家電大手「ハイアール」との提携がある。アリババのクラウドサービス「アリクラウド」とハイアールのスマート家電システム「U+プラットフォーム」を基盤としたサービスだ。スマートホーム分野にはまた大々的な動きを見せるシャオミもいる。
レノボの陳旭東副総裁は以前、20種以上の人気製品がすでにレノボ・スマートホーム・プラットフォームに接続可能になったと明かしている。今後6カ月以内にさらに200〜400種もの製品が加わるとしている。
スマートホーム、ハードウエア・スタートアップ、そしてモノのインターネット。検証はこれからとはいえ、これらが新たなトレンドとなることが明らかになりつつある。レノボは自らのブランドとMotoに加え、この未来のトレンドをも重視し戦力を投入していくことになるだろう。
(執筆:劉学文/ifanr.com 翻訳:高口康太)
※本連載は毎週火曜日に掲載する予定です。
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