2023/3/31
【シューカツ】面接官はあなたの何を見ているのか
就職活動解禁とともに公開された「いきなり最終面接」。求人サイトなどを運営するワンキャリアが新卒採用の最終面接を、動画で披露するという企画で、Twitterではこの企画や面接内容について多くの意見が交わされました。実は、この最終面接に登場した木野本賢さんは、
NewsPicksのStudentPickerとしても活躍してくれた大学生でした。
この動画を観た
トピックスオーナーの南和気さんから「木野本さんの良さをもっと表現できるように、お手伝いできることありませんか」とお話がありました。木野本さんも「是非!」という流れで、対談を実施。就職活動をする上でのポイントを丁寧に教えてもらう機会となりました。
- 面接官はあなたの活躍を想像できるか
- 新卒はみんな“粘り強く、結果にコミットする”
- 自己紹介だけが「唯一のあなたの土俵」
面接官はあなたの活躍を想像できるか
南和気さん(以下、南):まずはDeNAとの最終面接、お疲れ様でした。木野本さんは、DeNA含めて、現在もまだ就職活動中ですか?
木野本賢さん(以下、木野本):はい、まだ継続中です。
南:今日は、僕自身がグリコや独SAPの人事担当者として5000人以上の新卒を面接してきた立場で、お伝えできることがあればと思っています。参考になる部分、もしかしたらならない部分もあるかもしれませんが、何か1つでも持ち帰ってもらえれば嬉しいです。
特に、どうやったら木野本さんが自分の強みや良いところを伝えられるか、というのを念頭にお伝えしていきたいと考えています。
面接動画を観て振り返りをする2人
まず、新卒一括採用というのは、一度に50万人程度の求職者がマーケットに出てきて、企業は採用オペレーションを集中させ、相対評価で決められる、企業にとって効率よく人を採用できるように最適化したシステムです。そのシステムの中で企業側が新卒の学生のどこを見ているかということを考えるべきです。会社によって少しずつ違いますが、実はほぼ変わりません。
結論としてはとてもシンプルで、「この人は、うちの会社で活躍できるのか」この1点です。もっと言うなら、活躍できるイメージを面接官に持たせられるのか、が勝負になってくるということです。
DeNAの最終面接後、僕が感じたのはこの点で木野本さんは面接官とすれ違い続けていたのではないかということでした。面接後、どんなことを考えましたか?
木野本:はい、面接直後は、面接の中で自分の考えを面接官の方に伝えることはできたかなと感じました。一方、終了してみて数日経ち、より的確に伝える方法があったのではないかとも考えています。
南:木野本さんは、ご自身について分かってもらおうとしていましたよね。でも、そこに今回の面接で気をつけなくてはいけないポイントがあると思っています。
新卒採用は「自分のことを分かってもらう機会」ではないんです。相手が感心のあること、つまり企業で活躍できる姿を面接官が描けるように、自分のことを打ち出していく必要があるんです。
新卒はみんな“粘り強く、結果にコミットする”
例えば、この動画で、6分半過ぎ、11分くらい。それ以外にも何度かあったのですが、面接官の方が何度も言っているんですよ。「分からない」とか「もう一度教えて」とか「価値基準ってなんですか」と。その時点でかみ合ってないな、と気付かないといけないですし、通常の面接だと、かみ合わないまま「終わり」になってしまいます。
木野本:確かに、もう面接官の目線が僕に合ってないですね...(笑)
南:そうなんですよ(笑)。でもね、これは修正のチャンスでもあるんです。面接官が「わからない」と何度か言っているときに「僕の言っていること、質問の答えになってないですかね?」とか「質問の意図をもう一回聞かせてもらえますか」とか。分からなかったり、不安になったりしたら、すぐに確認していいのです。無理して答え続けて、相手が必要ないと思っていることを聞かせ続ける必要はない。
今回の動画では面接時間が1時間以上時間があったようですが、そんな企業はめったにない。短い時間で、相手が知りたいと思っていることに的確に答えられるかが重要で、つまりそれこそが企業でどう活躍できるかを相手が探ってくれているポイントだと考えてほしいのです。
そして、ここで気をつけてほしいのが、それっぽい言葉やどこかから借りてきたことを自分の「特徴」として打ち出さないことです。研究職などを除けば、50万人の新卒学生はほぼ横一線です。業務上の経験やスキルがあるわけではないので、ほぼ皆さん、"粘り強く、結果にコミットするし、困難な状況でも頑張れる”と話します。ここで差はつかない。ゆえに、木野本さんの特徴を絞る必要がある。あなたの特徴はなんなの、と。その特徴を、面接官はその企業の中で活躍するイメージに繋げたいのです。
木野本:受かるために、自分を合わせていこうとか、変えていこうとは思っていなかったので、まずは「自分のことを分かってもらう」ことを念頭に置いていたところがありました。
南:自分を無理に合わせるという話ではありません。飾らなくていい。でも、全部そのまま出すという話じゃない、ということです。
例えば、恋愛を考えてみてください。好きな人ができたとき、相手は自分のどこに興味を持ってくれそうかな、と考えますよね。共通点や、関心がありそうなところが大事。そうしたことを考えずに、優先順位なくどんどん「そのまま」を出していったら、せっかくマッチングするポイントがあっても、時間切れで振り向いてもらえなくなることもある。あれこれ出しているうちに、他の人に気を引かれてしまって、離れていってしまうことがありますよね。本当は、木野本さんの中にあって、かつ、相手にとって関心があることから順に出していけば、すぐにマッチングするかもしれないのに、です。
奇をてらった特徴がある必要はないのです。自分の中から、相手が欲しいと感じているのはどこかなと、「何を」出していけばいいかを考えるということなんです。そしてそれは具体的であればあるほどよい。それが個性になるからです。例えば、何かを体験したときに、何を感じて、どう動いて、その結果がどうで、その結果から何を得たのか。それを通じて伝わる「木野本さん」が、相手の企業や職種、業界とマッチングするかが問題なのです。
まとめます。新卒採用の面接は、時間が短く、差異化が難しい状況の中で、いかに相手とマッチングを狙っていくか、という土俵です。これをまず心得てください。
自己紹介だけが「唯一のあなたの土俵」
では、このような土俵で何を準備すべきかを考えていきましょう。木野本さんは、DeNAの面接で「ありのままでいたい」「ありのままでいられる人を増やしたい」と言いましたね。でも、具体的な中身を聞かれていった末に、黙ってしまった。
木野本:はい、考えてしまいました。
南:出てきた答えが、サッカーとカラオケと友達でしたね(笑)。
木野本:いや、ほんと、なんか客観的に言われると、ちょっとピントがずれてますよね。
南:いえいえ、いいんですよ。難しいですよね。例えば、「ありのままでいる」ことが本当に大切で、DeNAで活躍できそうに思ってもらえるとしたら、どのように伝えるのがよいでしょうか。例えば、すぐに思いつくものとして、自分はゲームが死ぬほど好きで、ゲームをやっていると喜怒哀楽全部そのままさらけ出して、自分のままでいられる。そういう人を増やしたいとか、DeNAの事業とそれがどう繋がってくるのかを考えれば「繋がり」って作れますよね。こんな3秒で考えられるような答えじゃだめですけど、自分の中にある「ありのままのエピソード」が、とにかく目の前の企業とどう繋がるかを考えてみてください。
木野本:確かに、「ありのままに生きる」って、生き方とか過ごし方としても成り立つわけで、それがビジネスとか企業にどう繋がるかが、面接官の方と会話を成立させるために必要ですよね。
南:そうなんです。短い時間に、ほかの候補者と差異化して、企業にマッチングさせる、のポイントをカバーできていないと、なかなか面接を突破できないですよね。
この心得を踏まえた上で、面接までに準備すべきものを3つお教えしますね。1つが自己紹介、もう1つが独自の「推し」を絞り込むこと、もう1つが企業調査、です。結構当たり前に思えるかもしれないのですが、これを、さっきの「短い時間に、人と差異化できるレベルで、企業にマッチングさせることを目的に」やることが重要です。
まず1つ目の自己紹介。これがもっとも重要。大学名を言って、サークルやアルバイトを言う、というのではだめです。ここは木野本さんが木野本さんのペースで話せる唯一の時間なのです。面接が始まってしまえば、相手の質問は予測できないし、すべては事前に準備できないので、自分の土俵では話せない。結局全部相手の土俵です。最後に「聞きたいことある?」と質問を促されることもありますけど、それさえも質問の仕方や何を聞くかを「見られている」ことなので、相手の土俵です。
できれば、自己紹介で「会社で活躍できるイメージ」までを相手に想像させられたら完璧ですね。私はこうです、で終わらない。自分の特徴がどこにあって、それが相手の企業の特徴に合うように話すのです。これを暗記して話すくらい徹底的に磨き上げる。これができているのは、新卒だと1割程度です。これですでに差異化ができます。
木野本:どれくらいの時間で話せるようにするのがよいですか?
南:1分ですね。
もう一つが「ポイントを絞る」準備をすることです。例えば、木野本さんであれば、「ありのまま」がキーワードでしたが、それを「推し」とするなら、そこに絞って徹底的に掘り下げる。そこに絞って考え抜くのです。
絞ったあとは、その絞ったポイントにおける成功体験を思い出す。自分なりで良いので、成功体験であることがすごく大事です。そういう実体験から学んだことが自分の「推し」の説得力に繋がります。また、逆境があればオリジナリティになるし、より迫力が増しますね。
例えば、木野本さんの場合、英国でサッカー部に入って、いろいろなことをリーダーとしてやった経験を自分自身の自己PRとして書いています。でも、「課題を見つけて」「それを克服する方法を試した」ことは書いてありますが、それをやる上で、どんな逆境にさらされたのか、どんな反対意見にあったのか、その中でやり遂げられたのか、その経緯を体験とともにもっと掘り下げるのが大事だと思います。
そしてその過程に木野本さんが大切にする「ありのまま」に紐付けられることがどこにあるのか、といった具合に、自分の「推し」となる部分を先鋭化するのです。
最後がおなじみの企業研究ですね。例えば、DeNAの一番儲かっている事業は何でしょうか。
木野本:ゲーム、ですよね。
南:では、ゲームの中でも、稼ぎ頭は何でしょうか。また、今後ゲーム以外で成長を見込んでいる事業はなんでしょうか。海外と国内の売り上げの比率はどうでしょうか。
組織として、平均勤続年数はどれくらいか、リーダー層はどれくらいの年齢か。あらゆることから、企業が「どのように成長しようとして、どんな人を求めているのか」ということを探るのです。ただ儲かっている事業を調べて暗記するのとは違います。すべての情報から、その企業の「特徴」をつかむのです。
ホワイトボードを使いながら丁寧に説明する南さんと、それを真剣に聞く木野本
例えば平均勤続年数は5年6ヵ月と出てますね。これがソフトバンクになると13年1ヵ月です。これは何を示しているのか。ハードワークであることも想像できますし、ついていけなければすぐに辞める人もいるのでしょう。一方で、よく創業者の南場(智子)さんもおっしゃっていますが、力を付ければどんどん起業してほしいという企業風土でしょうから、その意味でも鍛えられて社外に飛び出す人も多そうですよね。若い人にどんどん権限委譲もしているでしょう。
この手の情報は点で見るのではなく、面で見てください。各社の数字はどうか。木野本さんが受ける会社の数字をExcelとかで並べちゃう。5年って言われて、その数字自体が長いのか短いのかって分からないですよね。例えば、DeNAと創業年度が近いサイバーエージェントと比べると同じくらいなのかもしれないし、一般的な日本の大企業からすると異常に短いです。長いか短いか、は絶対的な数字からは判断できないので、比較することが大事です。
企業の情報は、皆さんが見る採用サイトはもちろん、企業のIR情報にたくさん載っています。IRサイトは学生の皆さんには難しいことも多いので、近くにいる先輩や大人に見てもらって、分からないところは聞けばいい。口コミサイトも、結局似たような内容が多くて、企業の特徴は見えてこないですよね(笑)。
ここからが大切で、企業の特徴を先ほどの面接心得や準備にいかに活かせるか、です。企業特性をつかんだ上で、企業で活躍しているイメージを持ってもらうための自己紹介はどうするか、自分の「特徴が」企業特性とマッチングするか。そのために企業分析をするのです。
ここまでやって、ようやく企業の面接官と「対話できる」状態になると思います。
木野本:おっしゃっていただいたポイントで、できていないことがたくさんありすぎました...。
南:いえいえ、難しいですよね。僕は、木野本さんは魅力ある人だと感じています。自信をもって、引き続き就職活動頑張ってくださいね!
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編集:染原睦美
デザイン:九喜洋介