遺伝アルツハイマー病の薬物治療、年内にも新潟大・東大が治験…原因物質を除去
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「家族性アルツハイマー病」の家系の人を対象とする臨床試験は研究成果の発展に大変な意義がある研究方法であり、日本でこの臨床試験を開始することは極めて意味があります。
一方で記事にある通りだとすると、試験デザインとしてA群「『レカネマブ』(米国で承認、日本未承認)+未承認薬」、B群「『レカネマブ』のみ」という研究デザインだとすると、学術界と薬事承認のプロセスの過程で議論を呼び、新薬の承認データとしては使われないリスクが伴う印象を受けます。A群で使われる「未承認薬」の単独の効果や安全性もわかりません。したがって、かなり異例の臨床試験デザインと言えます。
この試験方法は、(1)現時点で日本では未承認の「レカネマブ」と他の薬剤を併用効果を確認する試験内容になってしまうため、「レカネマブ」の承認動向によってはそれが障害になること。(2)アミロイドβ発現量に関して薬剤非投与のベースラインと比較することはできず、試験結果を広く解釈することが可能になるため、このまま実施するよりも、予防的投与として(倫理的問題を伴わずに)実施可能と思われる「未投与群(プラセボ投与群)」を加えた3群比較をすれば科学的にはっきりした結果が得られるのに、なぜそうしないのかという疑問です。
製薬企業との利害関係を有しているならば、成果の解釈範囲が広いこの(報道通りの)試験デザインを支持するかもしれません。しかし上記に関わる不完全さがが障害になって、薬事承認当局や研究者などから、ここで記載したように試験デザインの変更が求められる可能性があると思います。もともと、アルツハイマー病の解明は、遺伝性のアルツハイマー病の家系の調査から始まっています。
90年代に、この50パーセントの確率でうけつがれ、遺伝子上の突然変異が受け継がれれば、100パーセント若年で発症する「家族性アルツハイマー病」の突然変異がどこにあるのかがわかって来ました。
その突然変異がアミロイドベータの産出を増やすものだったために、アミロイドベータを標的とする創薬が、2000年代に始まったのです。
エーザイが開発した「レカネマブ」も、スウェーデンの北極圏近くの街に代々続いている遺伝性アルツハイマー病の家系の研究がヒントとなって生まれたものでした。
新潟大学と東京大学でこの遺伝性のアルツハイマー病の突然変異をもっている人たちに対しての治験が始まるわけですが、これは、アメリカのワシントン大学を本部とするDIAN-TUという大きなプログラムのなかの一環です。
もともと、遺伝性のアルツハイマー病は全アルツハイマー病の1パーセント以下の人口しかいないため、世界中で、このネットワークをつくることで、被験者の数を増やし、統計学的に有意な様々な成果を観察研究でだしてきたのがDIANで、実際に治験を含むものがDIAN-TU。
そのDIAN-TUが始めたのが、「レカネマブ」を最初に投与し、プラセボ群と実薬群を1対2にわけて、エーザイの開発したタウ抗体薬をさらに投与するという治験です。