2023/3/21

Siri、Alexa...「音声アシスタント」がChatGPTに負けた理由

INDEX
  • 12年前の「熱狂」
  • 時代はチャットボットへ
  • 「進化しにくい」仕組み
  • アマゾンの「読み間違い」
  • 報われなかった投資
  • 2つの技術は「融合」する

12年前の「熱狂」

ある雨の火曜日、サンフランシスコのホールを埋め尽くす観衆を前に、アップルの幹部らが舞台に登場した。発表された第5世代のiPhoneは、外見こそ前のバージョンと同じだったが、搭載された新機能に会場はざわめいた。
それが、バーチャルアシスタント 「Siri(シリ)」の登場だった。
当時、アップルのソフトウェア部門を率いていたスコット・フォーストールは、iPhoneのボタンを押してSiriを呼び出し、質問を投げかけた。
するとSiriは言われたとおりに、パリの時刻を確認し、「mitosis(有糸分裂)」の意味を説明し、高評価のギリシャ料理店14軒のリストを挙げた。そのうち5軒は、会場の近隣にある店だった。
2011年10月4日の発表会で、Siriは華々しくお披露目された(Kevork Djansezian/Getty Images)
「私は長い間AIの分野に携わってきましたが、この性能には感動せざるをえません」と、フォーストールは語った。
それが、いまから12年前のことだ。
しかし時を経たいま、Siriや、競合するアマゾンのAlexa(アレクサ)、グーグル・アシスタントといったAIアシスタントの存在は、もはや感動とはほど遠い。
この種のテクノロジーはほぼ停滞したままで、しゃべるアシスタントはジョークのネタになっている。
アメリカのバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」の2018年のコントでは、「高齢者向けのスマートスピーカー」が登場した。