2023/3/15

【独占】ChatGPTは「SaaS」をディスラプトする

NewsPicks NY支局長
創業者自らプロダクトを作る。
スタートアップなら当たり前かもしれないが、従業員7000人の大企業では、なかなか考えられないことだろう。
米SaaS界の雄で、CRM(顧客管理)サービスを手掛けるHubSpotが3月、ChatGPTを組み込んだ新プロダクトのChatSpot(α版)を公開した。開発を主導したのは、共同創業者兼CTOのダーメッシュ・シャー氏だ。
チャット一つでCRMのあらゆる能力を引き出せるこのソフトは公開と同時に一気に4000人がウェイトリストに並ぶ人気ぶりを博している。
「生成型AIは、インターネット史のこの30年で最強のディスラプションだ」
実は、こう話すシャー氏は、CTOでありながら、「最も働きやすい会社」「最高のカルチャーを持つ企業」など、職場系のランキングで常にトップにランクインする同社の「カルチャーコード」を作り上げた人物としても知られる。
NewsPicksが、普段めったにメディアに出ない本人を直撃したところ、自らこのAIプロジェクトを率いた理由に、「大企業化」しないカルチャーの深淵、さらに次なるSaaSビジネスの成長軸までを、超絶マシンガントークで語ってくれた。
その全容をあますところなくお伝えしよう。
INDEX
  • ①私は毎日コードで遊んでいる
  • ②ほとんどのUXは「直感的」ではない
  • ③失敗の数が「少ない」時が危ない
  • ④「スタートアップ文化を守れ」はウソ
  • ⑤「文化的負債」が持つ毒性
  • ⑥5年後、コミュニティなき企業はムリ
  • ⑦「指数関数的」な成長の源泉

①私は毎日コードで遊んでいる

──まず、あなたは昨年11月末のChatGPTのリリースの瞬間から興奮を隠していませんでしたね。そして3月には自ら開発を主導したChatSpotをリリースしています。その経緯をまず教えてください。
実は、私は長年「チャットUX」という概念にハマっていました。
ソフトウェアのユーザー体験として、チャットのインターフェースを使用する概念のことですが、15年ほど前から考えていて、6年前には、HubSpotのUXとして、GrowthBotという実験的なプロダクトを作りました。
ですが、当時のテクノロジーでは自然言語のクエリを本当に理解するのは難しく、一度は棚上げにしたままだったんです。一生懸命やったけど、テクノロジーが追いついていなかった。
それでも、アイデア自体は時代の先を行っていました。
そんな中で、OpenAIがGPT-3、そしてChatGPTのAPIを発表したので、即座に反応したわけです。OpenAIの創業者であるサム・アルトマンは、OpenAIを立ち上げる前のYコンビネーター時代から長年親交を温めてきた人でしたから。
当然、多くの人がChatGPTのコンテンツ生成能力に衝撃を受けていました。