2023/2/27

【村上臣】20代、やりたいことで「市場価値」を高めるヒント

苦労した就活で内定を得ても、なぜか心から喜べない。そんな時、頭をよぎるのは将来の市場価値や働き方への不安でしょう。
やってみなければ分からないとはいえ、社会に出る前になるべく不安を減らしておきたい──。
そこで今回は、ヤフーやビジネス特化型ネットワークのLinkedInで要職を務め、『転職2.0』(SBクリエイティブ)などの著作でも知られるプロピッカー村上臣さんに
「市場価値を高めるキャリアデザイン」
を教えてもらいます。
話を聞きに行ったのは、NewsPicksの学生アンバサダー「NewsPicks Student Picker」第二期生の村上貴文さんと上野翔碁さん。
村上臣さん自身のキャリアを振り返りながら、これからのキャリアデザインをひも解いていきます。
INDEX
  • 「市場価値」とは何なのか
  • 「売れるスキル」習得のコツ
  • 理想のキャリアを探すには
  • 「グローバル感覚」を磨こう
  • 就活における情報収集のコツ
  • 学生生活・進路タブの使い方

「市場価値」とは何なのか

村上貴文(以下、村上(貴)):Augustana College3年生の村上貴文です。臣さんは『転職2.0』などを通じて社会に出た後のキャリア形成について情報発信していますが、ご自身は就職せずに学生起業していますよね? なぜ、起業する道を選ばれたのでしょうか。
というのも、僕はいまプロ経営者を目指して国際経営学を専攻しています。将来的には起業を視野に入れていますが、現時点では学生起業はリスクが高いんじゃないかと悩んでいるんです。
村上(臣):実は、僕も最初から起業しようと思っていたわけではなくて。
小学5年の時に「自分でゲームをつくりたい」とプログラミングに興味を持ち、大学でもパソコンルームに入り浸っていたところ、共通の友人から大学の先輩で現・Zホールディングス代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎を紹介されたのがきっかけなんですよ。
ちょうどインターネットが普及し始めた頃で、ホームページを制作できる人間を探していたらしいんです。それで手伝い始めたら次々と依頼が来て、今後のこともあるので法人化したほうがいいねと、「有限会社電脳隊」を設立しました。
ただ、その時に気づいたのが、世の中のニーズに応えて課題を解決するとお金がもらえるということ。
僕は家庭の事情で、家賃や生活費も自分で稼がなくてはいけなかったので、けっこう苦労していました(苦笑)。
仕事に費やす時間と生活のバランスに悩んでいた時に、「ホームページを作りたい」というニーズと、自分のプログラミングのスキルを掛け合わせると、他のバイトより効率よく稼げることが分かったんです。

「売れるスキル」習得のコツ

村上(貴):そんな原体験があったのですね。でも、プログラミングのような「お金になるスキル」がないと、いきなり起業するのは難しいのではと思います。
近年の就活生はVUCA時代の到来やコロナ禍の中、安定を求めて公務員や大企業への就職を希望する人も増えているという調査もあります。
不確かな世の中でも食べていくためのスキルを獲得するには、何を意識すればいいでしょうか?
(Photo:iStock / BeritK)
村上(臣):「売れるスキル」にはトレンドがあります。今であればIT関連、特にデータを分析するデータサイエンティストは将来性があると言われているけれど、5年ごとぐらいにホットスキルは変わっていくものです。
だからこそ、学生時代も社会に出てからも、世の中で需要が高まっているスキルに関して敏感でいることが大切です。
ただ、数学の素養がない人がデータ分析をするのが難しいように、得手・不得手があるから、自分なりに頑張れば得られそうなスキルを選ばなければなりません。
その時の考え方としては、効率的にお金を稼げるか、興味関心のあるもの(楽しい)か、そして中長期で見てキャリアを転換する時に必要か。
この3つのうち、どれが今の自分に重要かを考えながら、身に付けるスキルや経験を選んでいくのがいいと思います。
そもそも今は大企業も倒産する時代、安定なんてありません。だから安定を求めるのではなく、幸せや生きがいといった人生の軸を持ちながら社会との接点を見つめて、スキルを身に付けていくのが大切になるでしょう。
ちなみに、皆さんがこれから社会に出て市場価値を上げるためには、SNS検索に引っかかるためにハッシュタグを付けるのと同じように、自分ができることや得意分野を示す「タグ」をたくさん付けていくのが大切になります。
この「タグ付け」という観点で考えると、必ずしも仕事上のスキルだけが必要になるわけでもありません。例えば趣味を極めることだって、タグの一つになる。
僕自身、学生時代は趣味でやっていたプログラミングが、偶然「社会で換金できるタグ」になると分かったので、起業しました。
当時は「これからはコードを書くスキルが重要だから学ぼう」といった考えでプログラムを書いていたわけではないんです。
こういう視点も持ちながら、自分の将来を考えてみたらいいのではないでしょうか。

理想のキャリアを探すには

上野翔碁(以下、上野):兵庫県立大学3年の上野翔碁です。僕はまだ卒業後の進路を悩んでいて、就職、大学院進学、学士就職、学生起業などさまざまな選択肢を模索しています。
村上さんが今、改めて学生に戻ったとしたら、「理想の進路」はどのようなものでしょうか?
村上(臣):僕も学生の時はすごく悩んでいたし、理想の進路なんてものはそもそもないんじゃないかと思います。なぜかって、それは自分自身にしか分からないから。
理想というものは、自分との対話でしか見つからないと思うんです。
それを見つけるために重要なのがキャリア教育なのですが、残念なことに日本は学生がキャリアのロールモデルを知る機会が少ない。どのような仕事があって、10年後、20年後はどう働いているのかというのを想像しにくいんですよね。
それなのに、大学3年生になって急に就職活動のために自己分析をしなさい、業界研究をしなさいと言われても、戸惑うに決まっています。
情報が不足しているから、最も身近な社会人である親の影響を受けやすく、親と同じ大企業に勤めるのが正しい道だって思いこんでしまう。
でも、自分と親は違います。何が楽しくて、やりがいを感じるかというのは自分にしか分からないのです。
だから僕は、学生のうちにいろいろなアルバイトをすることを勧めています。僕もプログラミングだけじゃなく、コンサートの設営や家庭教師や短期肉体労働などのバイトもしていました。設営の仕事は裏方の仕組みが見られて楽しかったし、勉強にもなりました。
周りがやらないようなことにチャレンジしてみると、新しい発見があるかもしれない。そのうちに自分が何に対してわくわくするのか、キャリアの方向性が見えてくると思うんです。

「グローバル感覚」を磨こう

村上(貴):これから社会に出ていくにあたって僕が気になっているのは、少子高齢化で生産年齢人口が減少していて、日本の経済にどんよりとした空気が流れていると感じることです。
いずれは日本から抜け出し、海外で働くことも視野に入れるべき……?とも考えていて。
LinkedInなど、外資企業でも働いてきた臣さんから見て、日本国内で日本企業に就職するのは、キャリア形成の面でマイナスになると思いますか?
村上(臣):日本のGDPは世界3位だけど、1人当たりの労働生産性は先進国の中でも低いほうになってしまっています。
これは働き方や効率を見直せば、再び労働生産性を高める余地が他の先進国よりあるということ。つまり、人口減少にもある程度は対応できるはずです。
ただ、長期的に考えると、外貨を稼ぐマインドにシフトしていくことが必要になるでしょう。
例えば、韓国は国内経済がシュリンクすることを見据えて、国策としてK-POPなどのエンターテインメントを輸出産業にする方向に舵を切り、ある程度の成功を収めています。
日本はハイクオリティなモノづくりだけでなく、サービスやホスピタリティなど、働く人たちのソフトスキルに関連する分野が強い。これをどのようにグローバルに展開して外貨を稼ぐか、という点が、これからの勝ち筋かなと思っています。
村上(貴):確かにアニメや独自の歴史・文化など、日本には魅力的なコンテンツもたくさんあります。ただ、そうしたものを外貨に変えるには、やっぱり世界を知る必要もあると思っていて。
僕は、その手段として「留学経験」が重要になると思っているのですが、村上さんは留学についてどうお考えですか?
村上(臣):チャンスがあるなら行くべきでしょうね。
国は問いません。重要なのは異なる環境、文化、価値観に触れること。それがビジネスだけでなく、人間形成に大きな影響を与えるからです。
特に大きいのが、ダイバーシティに対する考え方。例えば会議一つをとっても、同質性の高い社会で生きてきた日本人は落としどころを決めて議論を避ける傾向にあるけれど、グローバル社会では、より正しい答えを構築するために考えや価値観をぶつけ合います。
これはグローバルな企業で生きていく上で、非常に重要な感覚です。グローバル企業は、年齢も性別も人種も関係なく、とにかく議論し合いますから。
(Photo:iStock / ferrantraite)
就職や転職の時も、履歴書には写真も性別もなく、職歴とスキルしか書いていない場合が多い。認知バイアスを排除するために、あえてそうしているんです。
このような感覚を身に付けるには、留学したり、海外で働いたほうがいい。僕は留学も移住経験もなくグローバル企業にいるので、より強く感じますね。

就活における情報収集のコツ

上野:僕は大学で情報科学を学んでいるのでIT企業に入るのがいいんだろうなと思っていましたが、もっといろいろな世界を見て検討したいと思います。それにはまず、情報が必要です。
広大な情報の海の中で、どうやって情報を集めればいいのでしょうか?
村上(臣):僕はメルマガを愛用しています。いまさらメール?と思うかもしれないけれど、新聞社の多くが今もメルマガを出しているので、朝か夜に集中的に見て、興味を持ったものを深掘りしていくんです。
そこで得られない情報は、TwitterやNewsPicksといったタイムライン形式のメディアで、その日のヘッドラインを見てチェックします。
基本的にはこの2つですね。あとは、集めた情報をメモアプリ「ノーション」を使ってブックマークしたり、メモに書き溜めたりしているくらいですかね。
ただ、インプットだけでは単なる情報のままで終わってしまいます。重要なのは、情報をもとに自分なりの考えや見立てを持ち、情報を自分の知識、知恵にすること。そのために必要なのがアウトプットです。
気合いを入れてSNSで公開する必要はなく、自分専用のメモでも充分です。週に1回とかルールを決めて、あるトピックに対して考えや疑問点を書き出してみましょう。
これをしておくと、後で答え合わせができるんです。
例えば「FRB(米連邦準備理事会)が●%の利上げをするがインフレは抑制できるか」というトピックに対して、「もっと上げないと抑制できないと思う」と自分の考えを書き残す。
それを1年後に見たら、どちらが正しかったか分かる。そうやって社会との接点をつくっていくのはすごく大事だと思います。
上野:NewsPicksのコメント機能もマイページに残るので活用できそうです。ただ、私は考えを書き出したり、自分のメモを見返す習慣がないので、ルーティンとして身に付くまでは苦労しそうです。
村上(臣):1人では続かないというなら、情報感度の高い友達と定期的に話すのもいいですよね。おそらく一番ハードルの低いアウトプットは人との会話です(笑)。
気になるトピックを出し合って考えを述べると、自分では気づけない情報を得られます。違う考え方に触れることもできて、効率よくものの見方が広がります。
今回、こうして話しているのも立派なアウトプットです。上野さんも村上さんも、今日のためにリサーチしてインプットし、自分の考えを伝えてくれているわけだから、すごく良いアウトプットになっていると思います。
会話でもいいし、ブログでもいい。まずは自分が一番心地よいやり方で始めてみてください。

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