【迷走】相次ぐ中国当局の介入。民間企業に活力は戻るのか
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テンセントの創業が1998年、アリババの創業が1999年。このあたりの時期に、今や世界でも時価総額が20位に入るくらいの中国企業の創業が集中していました。
今の若い中国人で、自分もテンセントをつくってやる、とか、ジャック・マーになってやる、と思う人はいないでしょう。
(楽天の創業が1997年ですが、今の日本の大学生が、自分も楽天をつくろう、とは考えないのと同じことです)
2000年前後の、今から起業すればどこまで成功できるかわからない、というような、可能性のワクワク感は中国から消えました。
市場には飽和点が必ずあるので、これは政府が有能かどうかとか透明性があるか、といったことではどうにもならないことではあります。
可能性としては、グローバル市場に展開していく、ということでしたが、これは1つには米国政府の方針もあり、それから一帯一路で投資してきた国も、パキスタンとかスリランカとかケニアとか、あとロシアとか、経済成長の可能性がかなり微妙な国、欧米諸国や日本が手を出さずに余っていた国なので、今や巨大な不良債権となっています。中国が独占する新興市場、とはなりませんでした。
もちろん、中国企業が、あまりにも中国市場に特化している、ということも根本的な問題としてあります。巨大な市場を持つ中国企業の多くは、グローバル市場に展開しようとはしないでしょう。中国政府もそれを許容せず、ニューヨーク市場からの撤退を強要しています。
日本もそうでしたが、中国企業も、若い中国人も、動機を失っています。貧困から脱出したい、という動機もないし、グローバル市場を制覇しよう、というのは無理らしい、ということになっています。鉄鋼とかアルミニウムとかレアメタルとか太陽光パネルとか、一部の産業では世界トップのシェアを取っているし、そういう企業への就職は、公務員と並んで、若い中国人に人気にもなるでしょう。
これから先は、高騰した不動産価格をできるだけ守り、それを資本とした経済を回しながら、役所と企業が持ちつ持たれつしながら、国内の経済を回していく、しかし少子高齢化で経済全体はしぼんでいく、という国になるでしょう。
そこを打開して、グローバル市場で優位に立ちたければ、米国とやりあって、人民元を世界の基軸通貨にするくらいのことをしなければなりません。2つの別々の問題について述べた記事です。
一つは地方政府による民間企業への前のめりな介入、もう一つは民間企業等のそもそもの私有財産への懐疑。これらは別々の事柄だと思います。
前者については、地方政府はもともと、中央への見栄えをよくするために過剰な演出を行い、時に扮飾をも辞さない傾向を持っています。それが、ゼロコロナ政策の経済停滞によってGDP5.5%成長という目標の達成が困難になる中で、最近はかなり露骨に行われるようになったのと、多くの会社が潰れることでこれまで隠されていた事柄が露出するようになった、というのが実情でしょう。
大きな潮流というよりは、もともとの傾向が短期的な事情によって目立つようになって来たに過ぎません。
後者はもしかすると今後の中国の経済政策を左右する話かもしれません。
本記事末尾に「民間企業は国内総生産の60%以上に貢献」とありますが、逆に言えば国有企業は国内総生産のうち40%近くを占めるわけです。未だに国有企業の存在感は大きなものです。
鄧小平以来、中国が豊かになるための手段として民間企業や外国資本の誘致が行われて来ましたが、これはあくまでも分配の前段階としての豊かになるための手段です。貧しいままで分配しても仕方ないので、まず全体の豊かさを増すために資本主義的要素を持ち込んだのです。
資本主義的手法は全体の富を増やしますが、一方で貧富の差を生み出します。習近平氏は「共同富裕」をスローガンにしていますので、当然ここの部分に切り込んで行くはずであり、民間企業の国有化と富の再分配に踏み込んで行く可能性は大いにありえます。
マルクス主義理論では、資本主義が発達しきって限界を迎えた際に社会主義革命が生じ、次のステージへ行くとされます。
しかし中国は、明らかに資本主義が未発達な段階で共産党が政権を獲ってしまったので、辻褄を合わせるために補正が必要です。それが鄧小平の「黒い猫でも白い猫でも鼠を捕るのが良い猫だ」であり、江沢民の「3つの代表」であったのですが、世界第2位の経済大国になったところで社会主義理論の本流に戻ろうとするのが、習近平の「共同富裕」と考えられます。
民間企業が今後どうなるのかは、かなり大きな政治的・思想的問題と言えるでしょう。共産党本部へ心地よい成果報告をするため、粉飾を強要する地方党員。こういう例は多いのはないでしょうか。これを拒むと、融資や支援を受けられなくなる。
スタートアップを育てる、という姿勢はいいが、成長した段階で、天下る(経営ボードに地方党員が就任)。創業者や従業員にとっては、やってられない、という心情でしょう。
そして最終的には、競争のない「寝そべり」に突入。弱体化は進む。