(ブルームバーグ): トヨタ自動車は26日、佐藤恒治執行役員(53)が社長に昇格すると発表した。豊田章男社長(66)は代表権のある会長に就任する。異動日は4月1日で、今年の定時株主総会での承認を経て正式決定する。創業家以外でトヨタのトップになるのは14年ぶり。

トヨタの発表資料によると、佐藤氏は早稲田大学理工学部卒業後、1992年にトヨタに入社。高級車ブランド「レクサス」のエンジニアから同社長などを歴任して21年1月以降執行役員を務めている。豊田氏が務める最高経営責任者(CEO)の役職も佐藤氏が担うことになるという。

現在の内山田竹志会長は取締役となり、株主総会後に退任を予定している。

 

豊田氏はトヨタ創業者である豊田喜一郎氏の孫に当たり、09年に渡辺捷昭氏の後継として社長に就任。リーマンショック後で巨額の赤字を計上したトヨタで、「いい車づくり」など創業の原点である顧客中心の姿勢を掲げて立て直しを進めた。

就任直後には米国でのトヨタ車の大規模リコール問題に直面し、米下院委員会の公聴会に出席して事態の収拾を図った。その後も東日本大震災や超円高、電気自動車や自動運転など新技術の台頭など自動車業界の大変革の中、トヨタのかじ取りを進めてきた。

電動化や自動運転など新技術が登場し、自動車業界は「100年に1度の変革期」を迎えていると言われており、トヨタは経営トップの大幅な若返りを図ることで生き残りを目指すことになる。

車屋からモビリティ・カンパニーへ

レーシング・ドライバーとしても知られる豊田社長は26日の会見で、変革期の中で自身は「車屋としての限界」を感じていると述べ、佐藤氏には若さを武器に、移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティ・カンパニー」への転換という使命を託したいと語った。

佐藤氏は会見で、豊田社長から社長就任の内示をもらったときに「自分らしくやりなさいという言葉をかけていただいた」と振り返り、新たな経営チームで自分らしく役割を果たしていくとの考えを示した。エンジニアとして長く車作りに携わってきたという同氏は「車を作ることが大好きです。だからこそ車を作り続ける社長でありたい」と続けた。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は電話取材で、豊田社長について「今までも広くいろいろな分野で健闘していた」とした上で、社会・経済情勢が不安定となっている中、「会長になることでより幅広い視野で経営を見られ、マネジメントが強化されてトヨタにはいいと思う」と評価。佐藤氏については「若い人に任せたいメッセージと取れる。ポジティブに捉えている」と述べた。

--取材協力:黄恂恂.

(会見での発言を追加して更新します)

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