【迷走】中台緊張で低迷する中国の「台湾取り込み策」
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日本にとってもそうですが、台湾にとって、中国は20年前と比べれば巨大な潜在的チャンスのある国ではなくなっている、ということがあります。
中国経済が成熟し、自国人の人材も企業も十分以上に育成され、外国の企業をこれまでほどは必要としなくなった、ということでもあります。
少子高齢化が進み、中国市場がこれ以上拡大するかどうかはかなり疑問で、人件費はまだ上がるでしょう。それでも、隣国に超巨大な市場がある、というのは他の国の追随を許さない魅力ではあります。
中国が台湾にとって魅力的でなくなっていく、というのは、中国が台湾を従属させるためのカードが少なくなっていく、ということでもあります。
ロシアのように魅力の少ない国を見ればわかりますが、文化的、地理的、資源面などの有利なカードを持つにもかかわらず、経済でウクライナを従属させることができないため、軍事力でウクライナを屈服させようとすることになりました。
中国も、カードが軍事力しかないと判断すれば、軍事力で解決しようとするでしょう。
もっとも、中国は、ロシアに比べれば、まだ魅力的なカードを多く持つ国です。
台湾も日本も、「脱中国」が課題になっています。製造拠点の移転、新しい市場の開拓、外国人観光客の中国以外からの招致、中国以外からの留学生招致、等々、様々な分野で進めてきています。
台湾は「新南向政策」によって、ベトナムをはじめとする東南アジアを軸として、新たな製造拠点や市場を開拓してきました。
日本にも半導体などの製造拠点を設ける、というのは台湾の「脱中国」と大いに関係あることでしょう。というより、事が起きた時は、九州の人口(現在は1400万人)の3分の1は台湾人になる、といった規模の避難も必要になるでしょうから、その準備という面もあるでしょう。
日本は台湾と一蓮托生であるべき多くの理由があるのですが、そのための準備のペースは、台湾に比べると遅れています。
注目のコメント
平和的統一を目指して中国が取っていた大陸に住む台湾人への優遇策が経済低迷や政治的緊張で、うまくいっていないという香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事です。
一方で、中国と台湾の経済的繋がりの深さもよく分かるため、台湾が中国と関係を絶つのは、相当な痛みを伴い、困難なようにもみえます。いろいろな視点が入っている、複雑ですが興味深い記事です。米中対立の激化、中国経済の低迷など原因は構造的でしょう。3期目入りした習近平は台湾に対して引き続きアメとムチを同時に使っていくでしょう。台湾への圧力と取り込み策を同時に強化していく。問題はそれをどうマネージするか。
一方、中国の大学で仕事をしたことのある人間として思うのは、各大学の党支部は、間違いなく「台湾籍学生」(「留学生」とは呼ばない)に対する思想工作を強化するという点。こちらも、奨学金や入学基準といった優遇策だけでなく、思想面も同時に強化するでしょう。
中国の政府関係者がしばしば言うように、「中国で利益を得ながら、中国を批判することは許さない」というスタンスです。各国政府、企業は、そんな政策を益々強化する共産党が領導する中国経済社会とどう付き合うか。これは私たち自身の課題です。