2022/12/16

先進企業がなぜ「地域と組む」か? 成功する自治体の連携協定戦略

NewsPicks Re:gion 編集長
 音声番組「地域経済のリアルがわかるRe:gion Radio」は、地域経済にちょっと興味のあるビジネスパーソンに向けた、聴くだけで「地域を変えるビジネス」に詳しくなれる番組です。

 毎週月・木の2回配信、ゲストには毎回Re:gionピッカーが登場します。3人目のゲストは北海道・上川町の役場職員であり「上川町東京事務所」のマネージャーを務める三谷航平氏。

 山岳地帯の小さな町ながら、先進的な企業と数多くの連携協定を結び、事業創出につなげている自治体の新たな経営戦略とは? 本記事では、本編の一部をダイジェストでお届けします。

【MC】
瀧川奈津希 / KSB瀬戸内海放送アナウンサー
木下斉 / エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
呉琢磨 / NewsPicks Re:gion 編集長

【前編】“町役場”がここまで攻める!?

──三谷さんは北海道・上川町の役場職員でありながら、いまは「上川町東京事務所」のマネージャーとして東京に常駐しているんですよね。その狙いとは?
三谷 まず上川町について簡単に紹介すると、道東の“大雪山”という巨大な自然公園エリアにある、人口約4000人の小さな町です。
 私はその役場で新卒から働いていたんですが、あるとき「このままだと近い将来、確実に人口が減って、町が衰退していく」ということが決定的にわかってしまって。
 自分たちの地域内のリソースだけでは、絶対にその将来像を変えられない。だったら外部のリソースとつながるしかない! 自分が東京でフロント営業の役目を担おう! と考えたんです。
瀧川 三谷さんが東京に出てきて、様々な「つながり」を結んだことをきっかけに、上川町は現在、数々の有名企業との連携協定を結ぶことに成功しているんですね。
 連携先のアウトドアメーカー「コロンビア」が上川町に直営店を作ったり、廃校になった小学校を舞台に「チームラボ」と教育プログラムを作ったり、「NewsPicks」と都市と地域を繋ぐ共創コミュニティを立ち上げるなど、大小様々な官民連携のプロジェクトが生まれています。すごいですね!
三谷 本当に嬉しいことです。地域内の力だけでは解決できない課題に対して、地域外にある“同じ目線で向き合ってくれる企業の力”をかけ合わせることで解決していきたいと考えています。
瀧川 これって、移住者を増やそうとしていた従来の地方創生とはまったく違いますよね。どうしてその発想に至ったんですか?
三谷 そうですね。これからの上川町は「町の人口規模や経済規模をKPIに置かないまちづくり」を目指していきます。
 このまま人口が減少したとしても、町民の事業基盤が盤石であれば一定の規模は維持できます。そのベースがあった上で、上川町は人口や経済規模ではなく「町の豊かさ」にフォーカスしていきたいんです。
 経済規模は人口に比例しますが、町の豊かさは比例しないはずです。
 地域外から面白い人たちがどんどん上川町に来てくれて、いろいろな形で関わってくれれば、地域は豊かにできる。それが、われわれのような自治体が採るべき経営戦略じゃないかと考えているんです。

【中編】東京⇆地域の双方をつなぐ役割

──三谷さんは東京に出ていく際、まず民間の出版社に「出向」という形で進出したんですよね。しかも、その提案書をいきなり町長にプレゼンして、「行ってこい!」と承認を勝ち取ったとか。
木下 これは珍しいケースですよね。どうして民間の出版社だったんですか?
三谷 上川町と企業のつながりを数多く作ることがゴールなので、どうせ出向するなら絶対に民間、業種としてはメディアがいいと考えたんです。産業を超えていろいろな企業と関われるので。
 出版は業務自体も面白かったですし、いろいろな企業の方とお会いできただけでなく、クリエイターの方々とのつながりも作れたのは予想外の収穫でした。
 今、連携協定を結んでいる企業とのご縁は、すべて出向先での仕事からつながっています。出版社と上川町の名刺を両方持っていたので、ご挨拶したときにたくさんの企業さんが「上川町に行ってみたい」と興味を持ってくれたんです。
木下 首都圏企業は地域との接点がないと、興味があってもどの地域で何ができるかわからない。そこで三谷さんが「東京のフロント」としてコーディネーター役になったのが上手くいったんですね。

【後編】これからは「複数関連携協定」が必要

三谷 実は今日、私から木下さんに質問したいことがあるんです。
 私たちとしては、上川町←→企業間の連携だけでなく、連携している企業同士もつながって、ひとつのチームとして動けないかと思っているんです。とはいえ、企業ごとに考え方もやり方も違うなかで、どうすればいいか悩んでいて…。
木下 まさに、これからの地域×企業の連携は「複数間連携協定」に進化していくと思ってます。企業だけでなく地域側もひとつの自治体だけでなく、集合になっていく方が強みが出せるはず。
 というのも、地域再生の重要な観点として「ライバルは世界にいる」からです。例えば上川町なら「ライバルは世界の山岳リゾート」になるんですよ。
 世界の競合を相手に、ひとつの自治体で孤軍奮闘しても限界がある。そこで、「大雪山系を世界に通用する山岳リゾートにする!」という大きなビジョンを掲げて、共感する自治体や民間企業と連携協定を結んで、地域一丸となって開発や運営ができれば、大きなパワーになりえる。
 このような複数間連携協定の動きが、地域の次のステップになるのではないかと思っています。
──面白いですね。距離的に近い自治体と組むだけでなく、テーマ別に組んだり、規模の近い自治体同士で組むとか、いろいろな複数間連携の形がありそうですね。
(続きはぜひ本編でお楽しみください)
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