大学10兆円ファンド、有力論文「5年1000本」を選考基準
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「国際卓越研究大学の認定に関する基準」として、一応、3つの基準が示されています。
Top10%論文数が1,000本程度(直近の5年間総計)以上となっていること
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総論文数に占める被引用数Top10%論文数の割合が10%程度以上となっていること
または
研究者一人当たりのTop10%論文数において、優れた実績(0.6本程度以上)を有すること
つまり、「1000本」というのは絶対的な条件ではなく、研究者数が少ない大学でも、世界トップの論文を量産する大学なら認証対象になる、ということです。
いずれにしても、これだけだとよくわからない基準でしょう。
まず「トップ10%論文」の意味がわからないでしょう。
「トップ10%論文」は、2018~2020年の3年間で、
中国:46,352(1位)
米国:36,680(2位)
英国: 8,772(3位)
日本: 3,780(12位)
であったとのことです。
これは、文部科学省がつくった、「科学技術指標2022」という報告書に出てきます(126~130ページ)。
「ここでは、自然科学系の論文分析の結果を紹介する。分析には、クラリベイト社 Web of Scienceの SCIE を用いた」とのことで、つまり、自然科学8分野それぞれで、引用された回数が世界で上位10%に入っている論文のことです。
それでは、「トップ10%論文を5年で1000本」をクリアしている大学はどこかというと、この算出方法で各大学のトップ10%論文の数を出しているデータが見つからないのですが(算出方法が変わると、数が変わります。例えば国際共著論文はどう数えるのか、とか。この算出方法は、5人の共著なら5分の1本になります)、2018~2020年の3年間で、日本全国で3780本だった、ということなのですから、仮に5年で日本全体で6000本だとしても、1000本を超えている大学は、2つか3つでしょう。
「研究者一人当たりのTop10%論文数において、優れた実績(0.6本程度以上)」の方なら、医科大学で基準を満たすところがいくつかあるのではないでしょうか。
https://www.mext.go.jp/content/20221115-mxt_gakkikan_000017961_1.pdfこの場合の「有力論文」は直近5年間の引用数を元にした「Top10%論文数」のことなので、「引用されて他の研究に影響を与える」論文を発表することが重要であることはもちろんですが、逆に言うと、発表した論文が「引用されるようにする」ことが、今まで以上に求められているということです。私見ですが、日本は「研究力」が低下したというよりも、「研究発信力」が「相対的に」低下したことが大きな問題であると思います。ただ、成果をまとめれば良い、学位のために論文を出さないと、ということではなく、大事な作品として論文を仕上げ、その売り込みまでがセットと思うべきということですね。
文部科学省が10兆円の大学ファンド基本方針を公表しました。選考基準は引用数上位10%の論文が5年で1000本以上、または研究者1人あたり0.6本程度以上が条件のようです。
文部科学省の発表はこちら:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/06/1418062_00009.htm
NPオリジナルの連載も公開されているので、よろしければご参考にどうぞ
『どうなる?10兆円大学ファンド』:https://newspicks.com/user/20049