(ブルームバーグ): SMBC日興証券の相場操縦事件で、金融商品取引法違反(相場操縦)の罪に問われた法人としての同社と元執行役員エクイティ本部副本部長の杉野輝也被告に対する初公判が28日、東京地裁(神田大助裁判長)で午前10時から開かれた。法人代表として出廷した近藤雄一郎社長と杉野被告は、それぞれ起訴内容を認めた。

近藤社長は起訴内容について「その通り間違いありません」と述べた上で、社会に迷惑を掛けたなどとしてあらためて謝罪した。起訴内容について間違いはないか問われた杉野被告も「特にありません」と答えた。

起訴状によると、杉野被告は2019年12月25日、午後2時10分過ぎから午後3時ごろまでの間、大株主が保有株を大量に処分する際に用いられる「ブロックオファー」と呼ばれる取引で、特定の1銘柄の株価を不正に維持したことに関わった。

今回の事件は、市場の「ゲートキーパー」たる大手証券会社の役員らが相場操縦の罪で起訴されるという異例の事態となった。この日の初公判では、約100人が入れる104号法廷の傍聴席はほぼ埋まった。判決期日は来年2月13日に指定した。

日本格付研究所の阪口健吾アナリストは、起訴内容を認めたことはSMBC日興のビジネスにとって「マイナスはマイナス」と指摘。これまでも顧客が同社との取引を控えるなどの影響が出ていたが、それが「長引くことはあるかもしれない」と述べた。

    ブルームバーグ・インテリジェンスの田村晋一シニアアナリストは、既に3月以降ブロックオファー取引だけでなく、株式・債券の両引受市場での主幹事候補からの排除や国内機関投資家の発注停止などの影響が出ていたとみられると指摘。その上で「業績低迷は今期にわたって続くリスクが高いだろう」との見方を示した。

証券取引等監視委員会は、19年12月から21年4月にかけて、合わせて10銘柄の取引で不正があったとして、計8人を金商法違反の疑いで東京地検に刑事告発した。このうち、杉野被告の他、元副社長の佐藤俊弘被告や元専務執行役員のトレボー・ヒル被告、元エクイティ部長の山田誠被告ら6人が起訴された。同地裁によると、27日時点で杉野被告以外の公判期日は決まっていない。

金商法の両罰規定に基づき、法人としてのSMBC日興も起訴された。金融庁は今月7日、売買審査体制や経営管理体制に不備があったなどとして同社に対してブロックオファー取引を3カ月間停止するよう命じたほか、経営責任の明確化も求める行政処分を行った。親会社の三井住友フィナンシャルグループには、同証券の業務運営の改善に必要な対応を求める改善措置命令を出した。

金融庁は同証券に対して再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画を、三井住友FGには同証券の適切な経営管理を行うための改善策を、それぞれ11月7日までに提出するよう求めた。

--取材協力:伊藤小巻.

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