【中国】国営メディアも認めた習近平の「個人的」人事
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個人資産を徹底的に調査するというのは、当初から腐敗撲滅キャンペーンを行ってきた習近平政権らしい方針とも言えますが、穿った見方をすると、中国が将来低迷する可能性に備えて海外に資産を置いておこうとする高官への牽制のようにも思われます。
実際に、民間では海外脱出の動きがだいぶ加速しているようです。https://equity.jiji.com/oversea_economies/2022102400596
一方で、「二つの確立」への理解とそれに則った行動が求められるというのは、何ら特別なことではありません。
中国共産党では、末端の基層組織構成員に至るまで、最新理論へのアップデートが日々求められます。団地ひとつ分の支部であれ、小さな企業の支部であれ、高齢になっても共産党員である以上、最新理論への理解とそれに基づく実践のために勉強会に参加しなくてはなりません。
このあたりのことは、西村晋『中国共産党 世界最強の組織』(https://amzn.asia/d/9ar4Xz4)に詳細に分かりやすく解説されています。大変オススメです。
なお余談ですが、この『中国共産党 世界最強の組織』では、日本のメディアによく出てくるピラミッド型の中国共産党組織図が、実態にそぐわないものであることが指摘されています。
このピラミッド型の組織図というのは、NewsPicksの以下の記事でも用いられているものです。とても分かりやすいのですが、デフォルメしすぎだというのが西村氏の主張です。
https://newspicks.com/news/7684451/body?utm_campaign=np_urlshare&invoker=np_urlshare_uid7465205&utm_source=newspicks&utm_medium=urlshare
そして、西村氏はピラミッド型に代わる対案も提案していますので、今後中国共産党の組織図を作る可能性のある方は、一読しておいても損はないかと思われます。習近平氏は中国共産党のトップである総書記であり、総書記を選ぶのは、共産党中央委員会全体会議です。
万が一、中央委員会全体会議を構成する幹部の中で、反習近平派が多数を占めれば、習近平氏の地位は危うくなります。
204人の中央委員、およびその予備軍である中央委員候補を選ぶ段階から、反習近平派が入らないようにすることが、権力を維持する要です。
中国共産党では、中央委員を含む幹部が身体検査を受け続けるのは、1920年代の初期から当然のことです。
そのために、中国共産党中央規律検査委員会があります。
中央規律検査委員会が報告義務を負うのは、共産党のトップである総書記に対してなので、「個人的人事」といっても、これは中国共産党においては、総書記の職掌です。
もちろん、米国や日本、EUで政党の幹部が選出される方法とは大きく異なります(共産党は除く)。
中央規律検査委員会を使って幹部たちの私生活、家族のことから金の流れ、通信の傍受まで、監視を日常的に行う、というのは、もともとソ連のスターリンが編み出した権力維持の手法ですが、毛沢東はこれをいち早く取り入れ、権力維持の要としてきました。
整風運動、反右派闘争、やがては文化大革命などと称して、毛沢東は共産党幹部たちを繰り返し粛清してきましたが、彼らの言動は、常に毛沢東に把握されていました。
共産党の地方の委員会は、大学や職場、地域で、これはという人材を吸い上げ、地方の声を中央に上げていく仕組みでもあります。
地方の委員会から選ばれた代表が、末端の声を代弁してきました。一方で、地方の委員会による代表選出が、買収合戦の舞台となり、それが忌み嫌われていた、という面もあります。
習近平体制は、中央規律検査委員会を重用し、地方から選ばれる中央委員やその候補の選出に直接介入するようになりました。これは、地方の末端の声を代表する党員が、中央で上に上がっていく機会を奪うことにもなりえます。習近平氏は、今後、独占した権力を下に“祖国統一を果たす”という「中国の夢」の実現に邁進していく可能性は高く、米国との対決姿勢をますます強めていくことになりそうです。現在の国際秩序をつくりあげた米国に対し、その秩序を破壊して新たな秩序を打ち立てようとする中国が挑戦しています。習近平氏は「今後10年がカギだ」と言っていますから、これから超大国同士の力比べが本格化することになるでしょう。
中国をこれまでと同じようにみていては、今後の世界の動向を大きく見誤ることになりそうです。米中関係のフェーズは明らかに変わり、“新たな危険な時代に突入した”という認識を持つ必要があると思っています。