2022/10/11

【ルポ】増殖する「発達障害ビジネス」を徹底調査する

NewsPicks 編集部 記者・編集者
「私のADHD、発達障害について話したいと思います」
今年7月、著名人の木下優樹菜さんがYouTubeに公開したある動画が、精神科医の間で物議を醸している。その内容は、「自分を知ろうと思って」クリニックで検査したところ、ADHD(注意欠如・多動症)であることがわかったというもの。
脳のイラストをサーモグラフィのように色付けした資料を手に、動画の中で検査結果を解説していく。
「脳の中が混線、こんがらがっちゃってるの。前頭葉というところが働いてないの」
「思考回路・伝達ぐるぐる・脳疲労。常にずっと何かを考えている状態」
現在までに60万回近く再生されているこの動画は、木下さんのファンのみならず精神医療の関係者の中でも話題になった。
というのも、この脳波による発達障害の検査は、精神科医たちがそろって「効果がない」「エビデンスが足りない」と指摘しているものだからだ。
発達障害の社会的認知度が高まる中、脳波を測って検査したり、磁気刺激で治療したりするクリニックが増えている。
公的医療保険が適用されない「自由診療」のため、患者は全額自己負担で、治療費は数十万円と高額だ。それでも、そうしたクリニックを訪れる患者は後を絶たない。
なぜ、医師が「効果がない」と指摘する高額な検査や治療に患者が殺到するのか。
現場を取材したところ、発達障害やメンタルクリニックの構造的な問題が浮かび上がってきた。
INDEX
  • 「ブーム化」する発達障害
  • 脳波検査を受けてみた
  • 脳波検査は、信頼できる?
  • うつ病には効くけれど……
  • 「エビデンス」のレベルは低い
  • 学会も「注意喚起」

「ブーム化」する発達障害