2022/10/3

【祝ノーベル賞】ペーボ博士が解き明かした人類の進化の秘密

宮崎大学 教授
スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月3日、2022年のノーベル生理学・医学賞を、ドイツのマックスプランク進化人類学研究所所長で沖縄科学技術大学院大学客員教授のスバンテ・ペーボ博士に授与すると発表した。
授賞理由は「絶滅したヒト族のゲノムと人類の進化に関する発見」。
地球史上で、「人類」と呼ばれる種は、私たち現生人類だけではない。現生人類が登場する前、そしてその後も、複数の人類が存在していた。
その中でも、私たちと最も近い存在がネアンデルタール人だ。
ペーボ博士は、人類学の分野にDNA解析の手法を初めて持ち込み、ネアンデルタール人のゲノム解読を成し遂げた。
さらに、約6万年前にアフリカから移住してきた現生人類に、絶滅したネアンデルタール人から遺伝子が受け継がれていることも突き止めた。
これは現生人類とネアンデルタール人が共存していた時代に、両者の間で混血が起きていたこと示す成果だった。しかもその「痕跡」は、日本人を含む、アフリカ以外のすべての現生人類のDNAにも残っているという。
私たちはどこからやってきたのか。そしてDNA中の「痕跡」は、私たちに何をもたらしたのか──。
新村芳人・宮崎大学教授が、新型コロナに関連する研究成果も交えて解説した、2020年10月公開の記事を再掲でお届けする。

新型コロナの驚きの最新研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で猛威を振るっている。
日本を含む東アジアでは、欧米などに比べて重症者や死亡者の比率がかなり少ないが、その理由はよくわかっていない。マスクをつけることに抵抗がない、握手をしないなどの文化的背景もあるだろうが、それだけではこの大きな違いは説明できない。
そのため、新型コロナを重症化させないための東アジア人固有の何か─「ファクターX」─があるのだ、と考える人もいる。
2020年9月30日、ドイツ、マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボらは、ネアンデルタール人から受け継いだDNAが「ファクターX」かもしれない、とする驚きの研究結果を発表した。