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[東京 29日 ロイター] - 住友商事は29日、VR(仮想現実)を活用した治療用アプリを大学医学部発ベンチャーなどと共同開発すると発表した。大手商社が「デジタル薬」の開発に本格参入するのは初めてで、2035年の市場規模が約2800億円と予想される分野で普及に弾みがつく可能性がある。

住商が提携するのは順天堂大学発ベンチャーのInnoJin(文京区)とVRを開発するイマクリエイト(品川区)で、小児向けの弱視治療用アプリを開発する。25年度の承認申請を目指し、「数十億円の売り上げを見込む」(住友商事メディカルサイエンス部の九鬼高典(訂正)部長代理・高は山かんむりに高)。InnoJinによると100人に3人の割合でおよそ40万人の子どもが弱視と診断されており、VRアプリのゲームを通じストレスなく治療を続けられるという。

住商はすでに医療用アプリの開発を行うサスメドと資本提携しているが、直接開発に関わるのは初めて。開発から販売まで手掛けることでノウハウを蓄積し、他企業との開発も加速する。

治療用アプリは「デジタル薬」と呼ばれる技術を用いて疾病の予防などを行うソフトウエアで、治療が必要な患者に医師が処方する。既存の医薬品では完治が難しい領域を中心に製品開発が行われ、海外では実用化が進んでソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンドも米国でスタートアップに出資している。

日本では14年の薬機法制定時に「医療機器プログラム」として承認の対象となり、認められれば保険適用となる。大手製薬会社やベンチャー企業が参入し、厚生労働省は20年に禁煙治療用、今年8月には高血圧治療用のアプリを承認。サスメドは2月に不眠障害治療用アプリを申請しており、3例目の承認として期待されている。

住商によると富士経済社の試算では、国内での市場規模は20年時点で2億円程度と立ち上がったばかりだが、35年には2850億円に達すると見込んでいる。