2022/9/1

【実体験】「宗教2世」が味わう深い絶望

フリーライター
安倍元首相の銃撃事件では、「宗教2世」の問題も注目を集めている。
「宗教2世」とは、文字通り、宗教信者の子供を指す言葉だ。だが、自分の家庭内で教義、教団活動の影響を直接的に受けるため、それが虐待につながることもある。
自らが信仰した1世とは異なり、2世は宗教との関わりを自らコントロールできず、さらに行政に相談しても「家庭の問題」「信教の自由」で支援を受けるのが難しい。
「例えるならば、家庭が丸ごと宗教団体の支配下にあり、親は子を、子は親を人質に取られた状態です」
旧統一教会信者の両親を持つ40代女性は、宗教2世の問題をこう表現する。
今は脱会したこの女性は、衣食住に教育、結婚まであらゆる局面に宗教が影響してきた過酷な人生に、2世支援のあり方、実際に目にした統一教会と政治との関係までを語ってくれた。
INDEX
  • 空腹のあまり、雑草を…
  • 鉛筆を食べる我が子
  • 「祝福2世」のタブー
  • 政治とのつながりと、子供の絶望
  • カルト2世でなく、「宗教2世」

空腹のあまり、雑草を…

──私は、物心ついた時から中学生のころまで、教団の施設で育ちました。施設は、ほぼ女性ばかりで、多いときで30人以上が暮らしていました。
母はもともと知人の紹介で教団を知り、家族に無断で大学に退学届を出し、同じく高校卒業後に教団と出会った父と合同結婚式で結婚しました。そんな両親の子供である私は、「祝福2世(※)」と呼ばれて育ちました。
※旧統一教会では、信者同士が結婚する「祝福結婚(≒合同結婚式)」で生まれた子供は「祝福2世」と呼ばれる。一方、(子持ちの)親が信者となった場合の子供は「信仰2世」といい、血統の観点から区別される。
教団の「家」には大きな冷蔵庫があり、全ての食べ物と飲み物に名前が書かれていました。ある時、私は空腹のあまり、他の人の名前が書かれたものを食べてしまいました。
そんな私をみんなは、「神の子が泥棒になった」と非難し、母は私をベルトで何度も叩きました。
生まれた瞬間から「宗教2世」の宿命を負った女性。