2022/11/11

【リニア開業】なぜ橋本はこれから最も価値が上がるまちなのか

NewsPicks Brand Design editor
今後の日本の発展を支えるインフラとして開業が待たれるリニア中央新幹線。最初の開業路線である品川〜名古屋間は約40分で結ばれる予定で、これにより大きな経済効果が期待されている。

また、それに伴い沿線の発展も見過ごせない。中間駅のひとつ「神奈川県駅」が置かれる予定の橋本エリアでは大規模な再開発が進み地価の上昇が続いている。リニア開通によりまちはどのように変わるのか。

そして、このまちに住む魅力とは。TERASS代表 江口亮介氏と、WAmazing代表 加藤史子氏の2人に橋本エリアのポテンシャルを聞いた。

「人口増」はまちの価値を上げる

──リニア新幹線というビッグプロジェクトが動くことで、さまざまな波及効果が考えられます。江口さんはこの影響をどう見ていますか。
江口 不動産的な観点からいえば、中間駅が新たに設立されるエリアの「再開発」に注目しています。
 物件や土地の価値を評価する方法はさまざまですが、基本は「今後、価値が上昇する可能性の高いまち」を探すのが鉄則。
 その際に私が最も重視するのは「人口」なんです。将来的に人口増加が見込まれるのであれば、それに併せて土地の資産価値も上がる可能性が高い。
 そして、人口増加のきっかけとなるテーマのひとつが、「再開発」です。
 現在、不動産業界内で品川が注目されているのも、周辺エリアの大規模な再開発があるから。他にも、武蔵小杉、虎ノ門、中野、池袋など、過去にこれらのエリアの価値が上がったのも同じ理由です。
 だから再開発が決まった時点で「まちの価値」にとってポジティブ。
 その意味でいえば、品川に次ぐリニア新幹線の中間駅「神奈川県駅」が設立される予定の橋本エリアも再開発が進んでいますし、次に人口増の波が来るまちとして注目しています。
──橋本エリアは再開発によってどのように発展していくのでしょうか。
 参考になるのは新横浜駅でしょうか。新横浜駅は東海道新幹線の停車駅として開業後、新幹線直通のベッドタウンとして開発され、まちも発展してきました。橋本エリアはこれに近い方向性で発展していくのではと考えています。
 加えて、新横浜駅は開業当初、周囲に何もない状態からまちができましたが、橋本エリアはすでにターミナル駅を中心としてすでにベッドタウンが形成されています。
 ここにリニア新幹線の新駅が加わり再開発が進めば、オフィスと商業施設、住環境がバランスよく整った住みやすいまちになるのではないでしょうか。
 実際、すでにこうした将来性を織り込み、橋本エリアの土地価格は2014年以降から上がってきていますし、人口も堅調に推移しています。
 ただ、足元では土地価格が上昇しているとはいえ、今後の発展余地を考えるとリニア開通後が本番。あくまで予想ですが、それ以降は価格上昇が本格化するので、現在のような価格帯では不動産は買えなくなるでしょう。
もし今、物件購入を検討されている方がいれば、先行投資の意味合いで橋本エリアのような「再開発中のまち」を基準にしてみるのも面白いかもしれません。
──現在の橋本エリアのイメージとは違うまちになりそうですね。
 そうですね。個人的には今後、橋本エリアが飛躍的に発展するカギは「エンタメ」だと思っています。
 橋本エリアの開発計画について色々な資料を見ると、ファミリー層や高齢者層を大事にしていこうという意図は伝わってくるのですが、将来性を考えるともっと文化やエンタメの要素も十分入る余地があります。
 例えば神奈川県にある横浜スタジアムと日産スタジアムは両方とも駅近のスタジアムで、前者は横浜駅、後者は新横浜から簡単にアクセス可能です。ここで重要なのが、それぞれが「東海道本線でつながっている」という点。
 東京から名古屋まで、都心部だけでなく沿線付近に住む郊外の人たちもこうしたエンタメ施設にアクセスしやすくなるからこそ、そこに人が集中して、副次的にホテルや商業施設も発展し、駅周辺の地価が上昇していく。そして、中心部の地価が上昇すると周辺部の地価も併せて上昇するという理想的な流れができるわけです。
 そうした視点で橋本エリアを見ると、もし周辺に大きなスタジアムができれば、リニアで結ばれた品川〜名古屋(将来的には大阪)間の沿線に住む人にとっては、新横浜や横浜に行くよりも遊びに行きやすい場所になる。
 そうなれば、毎日ではないにせよ半年や月一で大きなイベントが開催されることで人の流れが生まれ、商業施設も発展し、そこに住む人たちも潤っていく。そんなストーリーも考えられますよね。
「リニアの新駅ができるまち」はそれくらいのポテンシャルを秘めていると思います。

不動産購入は「流動性の高さ」がポイント

──とはいえ、橋本の周辺には立川や八王子、町田など、近隣に人気エリアが多い印象です。
 これらのエリアとの一番の違いは「選択肢の多さ」だと思います。
 立川や八王子、町田はすでに街が出来上がっているので、特に駅前で新築マンションや戸建てがあまりないのがネックです。その点、橋本は今後マンションが大規模に供給される予定なので、駅近の物件も選択肢が多いのがいいですね。
 一方で今、勝どきや湾岸エリアではタワーマンションが一気に供給されたことで、同世代の子ども人口が一気に増え、幼稚園や学校、塾などの定員オーバーが問題になりましたが、橋本の場合は埋立地と違って土地も広いので、おそらく柔軟に対応できるでしょう。
──再開発によって物件が大規模に供給されると、同世代が一気に入居し将来的に空室が増えるのではという懸念もあります。
 おっしゃる通り、空き家やゴーストタウン化は問題になっていますが、橋本エリアの場合、まち自体もコンパクトですし再開発は駅周辺が中心です。
 供給されるマンションもそれなりに分譲されることが考えられ、流動性も高く保たれる可能性が高いため、そうした心配はあまりないでしょう。
 加えて、これは私の持論ですが、家を買うときは一生住む場所としてではなく「なるべく売れる・貸せる物件」という視点で買うのが正しいと思っています。VUCAの時代、一度決めたライフプランを途中で変更することはままあるはずです。
 そうしたとき、家を「売りたい」「貸したい」と思っても、買い手や借り手がいなければ成り立ちません。家を買うときの最大のリスクは流動性を失うことなんです。
 その意味では、再開発によって人口が増えているまちの方が物件購入には好ましいですし、居住だけでなく投資目的でもひとつの基準になるかと思います。

橋本エリアは「次の二子玉川」になる

──加藤さんは橋本エリアのポテンシャルをどのようにお考えですか。
加藤 私がイメージする橋本エリアの将来像は「次の二子玉川」なんです。
 約100年前、渋沢栄一が唱えた「田園都市構想」により田園都市線や東急東横線が延伸し田園地域が都市化されたことで「首都」が日本橋周辺から郊外へと拡大しました。
 その結果、たくさんの人が沿線に移り住むようになり、高度経済成長期以降、まちとしてのステータスが高まったのが二子玉川や自由が丘でした。
 そして現在、政府はこの田園都市構想を参考にした「デジタル田園都市構想」を推進しています。この構想にはリニア新幹線についても触れられており、開業に伴い中間駅が開発されることにより、首都の概念もより外へと広がるはずです。
 より自然豊かでQOL高く暮らせる場所へ。その観点から「次の二子玉川」的ポジションとして注目されるのが、橋本エリアというわけです。
──とはいえ、昔からの橋本を知る人からは「神奈川県西部のいち地方都市なのでは……」というイメージを抱く人はいるかもしれません。
 たしかに、率直にいえばリニア開業前の現状では橋本は単なる地方のまちに過ぎません。再開発もこれからです。
 とはいえ橋本は新宿や横浜へのアクセスのしやすさという都市部の豊かさがありつつ、地方都市ならではの生活コストの低さが際立ちます。
 一言でいえば「すごくコスパの良いまち」なんです。
 正直、ファミリー層には都心のど真ん中は住みづらいのです。3LDK程度の広さでも家賃を払えるのは高所得者のなかでも一握りですし、生活コストが非常に高い。
 私も4年前まで港区の虎ノ門に住んでいましたが、周囲に100円ショップの大型店や子供服を売るお店がないので、お台場や豊洲まで出向かなければならず、子育ての観点では非常に不便でした。
 橋本には大きなショッピングモールもあり、シネコンなどのエンタメ施設も揃っていて非常に便利です。生活コストも安いですし、20代後半から30代前半のこれから家族と共に歩む子育て世代にとっては間違いなく住みやすい街だと思います。
 こうしたまちとしての基盤があるうえで、さらにリニアの利便性を享受できるのは橋本の魅力ですよね。
──リニア新幹線の中間駅は橋本以外にも新設が予定されています。
 他のリニア新幹線でいえば岐阜県駅や長野県駅、山梨県駅などが誕生予定ですが、これらの中間駅はかなり自然豊かな場所ですし、率直にいえば「のんびりとした田舎」です。
 個人的には、もし 「東京」と「田舎」で二拠点生活をするなら、これらの中間駅はまさに「良いとこどり」ができる場所として候補に挙がるでしょう。
 ただ、いくら地方部の生活コストが安くても、東京都の二拠点生活は家賃や光熱費などダブルで費用がかかったり、地方部での移動は自家用車が必須だったりと、コストがかなりかかるため、誰もが二拠点生活を選べるわけではありません。
 その点、橋本は他にアクセスできる路線があり、街自体がそれなりの規模になっています。
 都心に住むよりはるかに生活コストが低く、ファミリーにとって暮らしやすく、何でも揃い、何でも食べられて、コスパがいい生活ができる。
 都心部へのアクセスがしやすいために多様な職業選択も可能ですし、美術館やコンサートなど東京でしかおこなわれない催し物にも参加できます。
 完全な田舎でもない地方都市だからこそ「両取り」のライフスタイルが実現できる場所。それが橋本の魅力なのだと思います。
──とはいえリニア開業はしばらく先の話ですし、今、地方都市は人口減少に悩まされていますが、橋本エリアにその影響はどの程度あるでしょうか。
 そもそも地方自治体の人口減少には2つの種類があります。ひとつは自然減で、お年寄りが増える一方で子どもが生まれない状態。
 もうひとつは社会減で、若者の進学先や地元に働く場所がなく結婚相手もいないとなると域内から流出していく減少です。地方都市にとって自然減よりも社会減の方が大きな課題です。
 他方、橋本はリニア開通で都心へのアクセスも格段によくなり、商業施設も立ち、マンションの供給などもなされるので、子育てをしやすいまちになるでしょう。将来的に社会減が少なく日本国内でも珍しい形で発展する可能性が高いのです。
 人口減少の懸念も少なく、都心へのアクセスが1時間以内で、駅周辺の商業施設が充実している。それでいて近隣にキャンプ場や山登りなどが可能な豊富な自然を有しているエリアは関東近辺を見回してもあまり見当たりません。
 これから住まい探しをおこなうのであれば、候補地に入れてみるのも良いかもしれません。
※掲載の現地周辺航空写真は、2022年6月に撮影したものに光等の画像加工処理を施したもので実際とは異なります。