「中国料理店があるから台湾は中国」 報道官ツイートに失笑の嵐
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華春瑩報道官本人と会ったことがありますが、海外勤務経験が長くスマートな印象があります。台湾を巡りなぜこのような低レベルなツイートをしたのか。中国外務省内で起きている異変と関係がありそうです。外国勤務の大使4人が相次いで死亡したほか、日本で勤務していた大使館幹部も突如失踪する事件が相次いでいます。外務省が習近平指導部の粛清のターゲットになっているのでしょう。華氏自身も指導部から睨まれないように「得点稼ぎ」をした可能性があります。
華氏は現在報道局長だけでなく、部長助理(Assistant Minister of Foreign Affairs)も務めています。中国外交部の中で「主要官員」(Principal Officials)と呼ばれる高官の中の高官です(中国外交部本省内で序列9位)。
そんな優秀でスマートな彼女が、なぜこのような低レベルの発言をしてしまったのか。実際に、彼女だけでなく、他の報道官(例えば趙立堅氏)が自ら墓穴を掘るような失言をすることがあります。習近平時代になって、王毅外相のリーダーシップの下、中国外交部報道官による「戦狼外交」が問題視されるようになって、「失言」はむしろ増えている印象です。
この問題を考える時、私が念頭に置く前提が2つあります。
1つは、彼ら・彼女らも人間であるということ。「百戦錬磨」の中国共産党システムの下で、政治的に絶対的忠実性と正確性が要求される環境においても、失言をすることがある。彼ら・彼女らもロボットではない。そこから見えてくる中国共産党政治の生々しさはフォーカスに値する。
もう1つは、習近平体制下で、対外的、特にライバルの米国、歴史的複雑性を抱える日本、核心的利益である台湾といった政治的に敏感なテーマにおいて、絶対にミスが許されない状況下にあるからこそ、必要以上の守りに入ったり、逆に攻めに行ったりする傾向が強くなり、それが失言を誘発しているということ。
私が知る限り、「失言」の責任追及は極めて内部的に行われ、表には出てきません。組織としての処分は慎重に行われ、外部には気づかれないことも多いです。台湾が「中華民国」であることをやめて、台湾という中華とは別個の国になった時、何が中国による台湾領有権の根拠となるのか、というのは、潜在的に30年以上存在している問題です。
今は、台湾政府は、「中華民国」であり、清朝の後継国家であると自任しています。
中華人民共和国は、「中華民国」の後継国家であると自任しています。「中華民国」に替わって、米国や日本を含め、世界のほとんどの国が中華人民共和国を国家承認した、国連にも議席を得て常任理事国になった、つまり中華人民共和国が「中華民国」の後継国家であることは国際的に承認されている、というのが中国政府の立場です。
台湾が「中華民国」の残党である以上、後継国家である中華人民共和国に吸収されるのが当然である、という論理が成り立ちます。南北朝が統一されたら、南朝についていた武将たちも京都の朝廷に臣従するようなものです。
それでは、台湾政府が自分たちは「中華民国ではない」と主張した時、何を根拠に中国は台湾の領有権を主張するのか、というのは潜在的な懸案であり続けています。
「同じ文明だから」というしかないでしょう。まさか餃子を食べているから中国の領土だ、などと言われてはたまりませんが、国語が同じである、故宮博物館がある、といった諸々の「中華文明としての一体性」が、数千人の学者を動員して立証されようとするでしょう。
現在、ロシアがウクライナへの侵略を正当化している例に見られるような、文明というあやふやな、どうとでも区切ることができるものを根拠に戦争を仕掛けるというのは、科学的な根拠のない暴挙です。
ただ、「民主的に選ばれた政権」を国家の成立の根拠として受け入れるなら、台湾の独立にケチをつけることができなくなります。
「文明」という、正体のない、すごいような、別に明確にならなくても誰も困らないようなものを振りかざして、台湾の独立を否定する以外には手がないでしょう。