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原油高で消費国から産油国に所得移転が生じています。その意味では致し方がないところですが、特にエネルギー政策での失点は大きいと言えるのではないでしょうか。そうした中での経常黒字の減少です。これを対外均衡と評価して良いかは、かなり微妙なところでしょう。

また少子高齢化が急速に進み、人手不足が質量双方で深刻化している中で、為替安で生産拠点が国内に回帰する、という話は楽観的過ぎると私は考えています。構造変化は多少なりとも進むはずですが。

なお、輸出・生産関数で円安効果のメリットを説く人もいます。確かに長期推計ならまだ日本でもモデルがフィットするでしょうが、東日本の震災後に生産拠点の現地化がかなり進んだことなど、近年の構造変化をきちんと織り込んだ形で推計すると、かなり違った答えが出てくるはずです。
とはいえ、パンデミックや戦争といった100年に一度あるかどうかといった事象が立て続けに起こり、歴史的な輸入インフレが発生したのに黒字を維持しているという意味では、日本の経常黒字の頑健性が示されている思います。
やはり背景には、400兆円を超える世界最大の対外純資産国であることがあります。
加えて、国内資産と海外資産の収益率は明らかに経済成長している海外の方が高いわけですから、そうそう簡単に経常赤字にはならないでしょう。
ただ、これは逆説的に考えれば、日本国内の投資の魅力が低いことも意味しますので、必ずしも良い側面ばかりではありませんが。
結局、円安相場の根本的背景としてこうした需給環境の変遷を踏まえておかないと「米金利下がったのでドル売りで円買いになった」という解説だけに終始することになると思います。それはもちろん大きな話であり重要ですが、元々の円高「水準」に戻るかどうかは今の貿易赤字の大きさを見る限り直感的には厳しいのでは、と感じます。シンプルに「円を売りたい人(輸入企業)が多い」という事実は尊重した方が良いと思います。
日本の所得の源泉はGDP(=国内総“生産”)、即ち日本で新たに生みだされた広~い意味でのモノとサービスの価値で、官民合わせてそれ以上に費消すれば経常収支が赤字になって、節約すれば余ったものが外国に売れるので経常収支が黒字になる構図です。
日本は政府が赤字で自分の取り分、即ち税収以上にモノとサービスを費消するけれど、民間が節約して取り分(≒政府に税金を払った残り)全てを使わず節約し、民間の節約が政府の赤字より大きいので経常収支が黒字を保っているのです。
ところがここに来て日本が輸入に頼る資源の価格が高騰し、円の価値の低下が輪を掛けて、経常収支が大きく減ったということですね。基軸通貨を持つゆえ経常収支の赤字を黒字国が国債を買って補ってくれる米国は別にして、経常収支の赤字国は通貨価値の面でも外国からの借金の面でも輸入に頼る資源の安定調達の面でも不安定な状況に置かれます。政府が大赤字で巨額の借金を抱え、日銀が巨額の国債を買い占める日本の場合、万が一にも経常収支が恒常的な赤字に陥り対外債務国に転じる兆候が出てくると、そうしたリスクが現実のものになりかねません。
「経常収支の黒字額は前年同期比63.1%減の3兆5057億円」というニュースの裏側には、そうした怖さが隠れています (・・;
日経新聞によると「上半期の経常黒字額としては14年1~6月期以来、8年ぶりの水準」とのこと。

財務省発表の国際収支状況の上半期分は下記
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2022half.htm

「経常黒字3兆5057億円、22年上期 8年ぶり低水準」(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA080GX0Y2A800C2000000/
原油価格上昇と円安が重なったので、当然の結果でしょう。

これを一過性と見るか、永続的なものと見るか?
難しいところです。