中性子でがん治療装置、次世代半導体材料「SiC」で小型化
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放射線治療では治療が難しい膵臓癌などに対しても、SiCパワー半導体を電源に利用したBNCT治療装置の有効性が期待されています。
SiCパワー半導体電源により、加速器を大幅に小型化でき、放射線が一方向からだけでなく、複数の方向からも可能な多門照射が可能となります。
つまり体表近くから深い膵臓などにも多方向から照射できるということで、より患部に集中照射できるので、治療効果も高く、人体への負担も大幅に軽減されます。
しかも放射線エネルギーが小さいので、薄い遮蔽壁で小型化の治療装置を覆う対応で済みます。
大型となるBNCT治療装置は放射線エネルギーが大きく、一方向照射で体の表面近くへの照射になります。また遮蔽壁のある専用の建屋に大型の加速器を設置します。
この点がSiC-BNCT治療装置の画期的なところです。
京都府立医大での治験も2024年以降に予定されています。
因みにSiCパワー半導体はロームが協力しています。
亡くなられた堀場製作所創業者、堀場雅夫氏も関心を持たれていたようです。
紹介動画
#80/次世代の半導体を開発・製造/福島SiC応用技研株式会社 代表取締役 古久保雄二/この国の行く末2
https://m.youtube.com/watch?v=XrIz6APNCaQ
PS
「SiC半導体は250度C以上の高温で動作し」と記事にはありますが、シリコンSiのパワー半導体IGBTでは250℃以上では動作しませんが、SiCパワー半導体は、250℃以上でも動作するということです。
高温動作限界は材料や放熱対策にもよるでしょうが、350-400℃でも動作します。
大電流を流すことができるのは、高温動作が可能だからです。それが装置を小型化でき、多門照射できる治療装置を可能にしているわけです。中性子は、(がん組織も正常組織も含めて)体を通り抜けてしまう率が高いので、吸収断面積(放射線から見た的の大きさのような量)が大きいホウ素をつかって、ホウ素のあるところで、中性子線が吸収されるようにするということですね。
加えて、ホウ素を含んだ物質(医薬品として外部から入れる)が、がん細胞に集まるようにする工夫も同時に必要ということですね。がん細胞に多く発現しているタンパク質に結合するホウ素を含んだ低分子化合物や、抗体とホウ素含有化合物をリンカーで結んだ抗体薬物複合体など、いろいろ考えられると思います。
もともと中性子は、体を通り抜けてしまう確率が高いで、X線やγ線などに比べて皮膚など表面組織の損傷を抑えて、深部のがんを狙えるということでしょう。
SiCが使われるのも興味深いですね。福島県双葉郡楢葉町拠点のスタートアップ「福島SiC応用技研」。2020年にはシリーズCで30億円を調達しており、累計調達額は50億円を超えるなど、高い資金調達力もあります。
http://www.fukushima-sic.co.jp/index.html
がん細胞のみを選択的に攻撃する治療といえば、陽子線がん治療が浮かびましたが(スタートアップだとビービットメディカルが有名)、ホウ素中性子捕捉療法はさらに次のステージなのですね。
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