2022/7/31

【野望】日清3代目が始める「ジャンクフード改革」

自ら生み出したものを、自らつぶしてでも、新しい変化を作れ──。
日清食品グループの三代目・安藤徳隆氏が、創業者・百福の鞄持ち時代に何度もかけられた言葉だ。
この言葉通り、日清食品の創業家は、先代がつくった事業を「自己否定」しながら、新たな成長を模索してきた。
二代目の宏基氏は、創業者が生み出したカップヌードルを「ぶっつぶせ」と掲げ、日清ラ王やチキンラーメンどんぶりなどのヒット商品を生み出した。
そして三代目の徳隆氏は、「ジャンクフードの次」として、完全栄養食を日清食品の次の柱にしようと意気込んでいる。
完全栄養食とは、1食に必要な栄養素が全て含まれる食品で、これまで日清が創り上げてきた商品とは真逆のコンセプトだ。
ジャンクフードの代表だったカップヌードルの否定とも取られかねない、大胆な事業コンセプトだ。
なぜ、完全栄養食に賭けるのか。三代目として、未来の「食」をどう創造していくのか。
徳隆氏への直撃取材を、ロングインタビューでお届けする。
INDEX
  • ロングセラーへの危機感
  • ジャンクと健康を「両立」せよ
  • 成長の鍵は「BtoBtoC」
  • 変化を「生み出す」会社に

ロングセラーへの危機感

──まず、完全栄養食プロジェクトを始めた背景を教えてください。
安藤 事業を始めた理由は2つあります。
1つ目は、食品メーカーとして従うべき「世界的な食のルール」がここ数年で大きく転換しているからです。
最初に変化を感じたのは、2005年にアメリカの公立学校で、炭酸飲料の販売が禁止となったとき。子どもの肥満があまりにも増え、高カロリーな飲み物を自粛し始めました。
さらにその頃、メキシコでも高カロリーな食品に対して税を課すようになった。世界100カ国以上でカップヌードルを発売している我々も、当然無視できません。
こうした世界の動きは、非常にショッキングでした。
日本でも2018年頃から、無糖飲料ブームが始まりました。現在、飲料全体の50%以上を炭酸水やコーヒー、紅茶などの無糖飲料が占めています。
(写真:Catherine Falls Commercial/Getty Images)
もう1つは、2015年に僕が日清食品(事業会社)の社長になって掲げた2つの社内スローガンが関係しています。