2022/6/30

【簡単】意外と知らないPDFの便利な使いみち

NewsPicks BrandDesign ChiefEditor / NewsPicksパブリッシング 編集者
 すべてのビジネスパーソンが一度は触れたことがあるだろうPDFファイル。 
 PCやモバイル、WindowsやMacなどのOSを問わず、どんな環境でも同じデザインの内容を再現できる「閲覧」目的のファイルフォーマットというイメージがある読者が多いことだろう。
 しかし、それはあくまでPDFの特徴の1つにすぎない。
 実はAdobe Document Cloudが2015年にリリースされて以来、PDFの機能の中でもアドビが注力をしているのが、最終のFIXデータになる前の「制作プロセス」におけるコラボレーションをアップデートすることだという。
 ニューズピックスでブランディングのためのメディア広告制作を担う「NewsPicks Brand Design」では、日々、PDFを利用している。PDFの知られざる機能をフル活用することで、どこまで生産性を高めることができるのか。
ここぞとばかりにリアルな業務改善の相談をする様子
 アドビ株式会社でAdobe Acrobatのエバンジェリストである立川太郎氏に、実際に資料を眺めながら「PDFはよく使うが……」となにやら面倒があるらしいNewsPicks Brand Designセールスの小泉保浩が日常業務の課題を相談してみた。
INDEX
  • PDFの基本をおさらい
  • “誰も幸せにならない”クリエイティブの確認フローをどう改善する?
  • 無料のAcrobat Readerでできる報連相

PDFの基本をおさらい

立川 普段、どのようなシーンでPDFをご利用いただいてますか?
小泉 私たちNewsPicksのBrand Designチームはクライアントのブランド広告を制作するのが仕事です。
 そのため、制作記事などのクリエイティブを出演者や代理店、クライアントにPDFで確認いただく、というケースがまずあります。
 あとは、NewsPicksの媒体資料でしょうか。最終的に媒体資料はPDFで配布することになるので。
 PDFだと、先方がどんな環境でもレイアウトが崩れないため、デザインの確認を含む場合はPDFを利用することがほとんどです。
立川 なるほど、ありがとうございます。
 今お話しいただいたように、どんなデバイスで見てもレイアウトが崩れることなく、正確に表示できるというのはPDFの大きな特徴です。
 だからこそ、さまざまな種類のクリエイティブの「確認」にご利用いただくことが多いですね。
 PDFにする段階でファイルサイズを軽量化できたり、誰でも閲覧ができるということも、クリエイティブの「確認」にご利用いただいている理由だと思います。ただ、その利用方法だけだと解決できない課題も出てきます。

“誰も幸せにならない”クリエイティブの確認フローをどう改善する?

立川 では課題はなんでしょうか。
小泉 業務で常々感じるのが、デザインされたプレビュー記事などのレビューがとても非効率だということです。
 NewsPicksに掲載されるスポンサード記事の制作を進める際には、実際の公開時と同じページレイアウトでクライアントに確認いただかなくてはいけません。
 テストページで確認いただく場合もあれば、PDFで送付する場合もあるんですが、いずれにせよ、クライアントからはいろいろな形で赤入れをいただくんですよね。
 たとえばデザイン図版だけで構成されるインフォグラフィック等の場合は、紙に印刷して、手書きで赤入れしたものをスキャンしてPDFを送付いただくこともあれば、修正点をテキストの箇条書きでいただく場合もあります。
 後者の場合は、そもそもどこの修正指示なのかを改めてクリエイティブをさらって探さなくてはいけなかったりもして。
 この修正のやりとりが多いときは4回、5回とあるので、かなり手間がかかってしまっているんですよね。
立川 面倒ですよね。依頼する方も、される方も、誰も幸せにならない。
小泉 あと、クライアントの複数の部署から別々で修正の指示をいただいたり、エンドクライアントと広告代理店からそれぞれ赤字をいただいたり。そういったケースはそもそも修正内容をマージしなきゃいけなかったりも……。
立川 私はこのような現象を「ばらばらフィードバック」と呼んでいるのですが、フィードバックがばらばらに来ると取りまとめるのに時間がかかるし、抜け漏れ等のミスも発生しやすくなるんですね。
 また、フィードバックをする側も都度、修正箇所のスクリーンショットを撮って修正内容をテキストで伝えないといけないので、同じぐらい大変です。本来なら、このような無駄な作業は誰もやりたくないはずです。
小泉 具体的にはどうすればいいのでしょうか?
立川 小泉さんはAcrobatを使ってPDFをクラウド上で共有できるのはご存じでしたか?
小泉 いえ、知らなかったです。PDFファイルを添付して送っていました。
立川 確かにPDFファイルを添付して送る人は多いですよね。
しかし、今はAcrobatのクラウド機能が充実しており、誰でも即座にリンクを発行し、簡単に関係者にPDFを共有することができるんですよ。
小泉 えっと、やってみます。あ、これは簡単ですね。
立川 それだけでも便利なのですが、PDFをクラウドで共有する最大のメリットは、アップされたPDF文書に複数人の担当者が直接コメントを書き込むことができることです。
 コメントもテキストだけでなく、ハイライトや描画ツールを使うことで、紙に赤入れしているような感覚で手書き風に指示をすることもできるんです。
小泉 おお、NewsPicksではインフォグラフィックや図版が多い記事も多いので、赤入れをするときにダイレクトに表現できて、最適なフィードバックができそうですね。
 内容の修正はどうでしょうか?
立川 はい、PDFは編集できないものと思っている方も多いのですが、Adobe Acrobatのソフトを使用すれば、テキストや図形の「変更・削除・追加」なども行うことができます。
好評を博したPDF徹底活用のテクニックについての記事
 写真を加工したり、デザインオブジェクトに手を加えたいときは「編集に使用するツール」からPhotoshopやIllustratorを起動させることで、これらのツールで行った修正を直接オリジナルのPDFに反映することができます。
 テキスト情報だけのファイルであれば、Wordファイルをクラウドで共有して、校閲機能を使った方がスマートだと思います。
 ただ、Webサイトやカタログ、マニュアルのような制作物、など。つまり、「デザイン・レイアウトの確認」が必要なものは、Acrobatを使ってPDFをクラウドで共有し、コメントを入れるのが最適だということです。
 それはPDFだからレイアウトが崩れないのはもちろんのこと、制作物のPDFに直接コメントを追加することで、修正箇所や修正内容をより効率良く、正確に伝えることができるからです。
 結果、フィードバックをする側も受け取る側も仕事が効率化できます。
 また、PDFを共有された人はAcrobatを持っていなくても、ブラウザー上でコメントが追加できます。つまり、PCでも、スマホでも、インターネットさえつながればどこでも作業ができるので、環境が異なる複数のメンバーがいるプロジェクトに向いていると言えます。

無料のAcrobat Readerでできる報連相

小泉 弊社だと媒体資料を四半期ごとに更新しているので、そのレビューにもよさそうです。ちなみにこの機能は無料で試せるのでしょうか?
立川 はい、無料のAcrobat Readerを持っていれば、2GBまでの容量内でPDFをクラウドで共有できます。PDFを共有される側は、一切の登録なしにすぐにコメントが追加できます。ただ、無料アカウントを作っていただくと、特定のメンバーにメンションを⾶ばせるようになって便利なので、おすすめです。
※有料版Adobe Acrobatではクラウドの容量が100GBまで増える
 また、コメントを書き入れた部分はスレッド形式になるので、そのままコメントでコミュニケーションをとることもできます。
 たとえば明確な指示ではないけれど、ちょっと気になって確認したいことや相談したいことがあった場合、これまでは電話、メール、チャットなどで個別にコミュニケーションをとっていましたよね。
 そういったコミュニケーションもPDF上で行うことができますし、修正が完了したら該当する部分のコメントで報告をすることもできる。
 つまり、PDF上ですべてのコミュニケーションが完結できるんです。
小泉 なるほど、PDFがコミュニケーションの場になるんですね。
立川 近年ではマイクロソフトさんとの連携を強化しており、Microsoft Teams内でPDFを共有して、そのままコメントが書き込めるようになりました。
 Microsoft Teamsから出る必要がなく、社内の他のコミュニケーションと、PDF上の制作に関するコミュニケーションがシームレスにつながるようになったんです。
小泉 これまでもPDFは使っていたのですが、軽いし、きちんと表示できるので良いよね、というぐらいの認識しかなく。とても勉強になりました。
立川 今、小泉さんがおっしゃったことは、世の中のほとんどのビジネスパーソンが思っていることだと思います。PDFは最終文書のためのフォーマットですよね、と。
 ですので、是非これを機にNewsPicksさんのようなメディア企業にPDFを最大限にご活用いただいて、世の中の不便をなくしてクリエイティブな世界を一緒につくっていければと思います。