2022/6/15

【動画広告の最前線】なぜNewsPicksの動画は、ユーザーに届くのか

NewsPicks Brand Design / Senior Editor
 スマートフォンでの動画視聴時間は近年、爆発的に伸びている。マーケティング手法として動画に注目する企業は多い。
 一方で、誰もが発信の術を手にし、コンテンツがあふれる時代でもある。
 そんななか、企画力を武器に視聴者の心を掴む“伝わる動画”を生み出すのが、次世代映像コンテンツ制作のプロ集団「NewsPicks Studios」だ。
 2018年の立ち上げ以降、『The UPDATE』や『WEEKLY OCHIAI』『OFFRECO.』といったNewsPicksオリジナルシリーズを生み出し続け、企業からのスポンサード番組のニーズも年々高まっている。
 総発信時代に、メディアのプロが手がける動画広告の価値とは。NewsPicks Studiosの動画コンテンツは、どのように企業の課題を解決しているのか。
 前半は、幅広いコンテンツに精通する電通のエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター 眞鍋亮平氏と、NewsPicks Studios取締役兼チーフプロデューサー 木嵜綾奈の対談から、動画市場を俯瞰する。
 続く後半は、NewsPicks Studiosシニアエディター 川口あいに、企業ブランディングに貢献する番組制作のリアルを聞いた。
INDEX
  • 生活シーンで変わる情報摂取の手段
  • 視聴ではなく、“体験”できる番組
  • コンテンツファーストだからこそ成果が出る
  • 多様な課題に対応できる番組フォーマット
  • 伝えるには、動画だけにこだわらない
  • ブランド価値を高める3つのポイント

生活シーンで変わる情報摂取の手段

──コロナ禍での外出制限もあって、動画市場は急速に拡大しています。今後どのような変化が起こると予想されていますか?
眞鍋 動画、特にスマートフォンでの動画視聴はさらに伸びると考えています。大容量でも高速通信が可能な5Gが急速に普及していますから。
 大きな流れとしては、ストレスなく見られる動画がより望まれていくのではないでしょうか。
 ただ、完全に動画シフトするとも思っていません。
 たとえば僕の1日を見ても、頭がクリアな朝はテキストの記事を読み、運動中は画面を見る必要のない音声コンテンツを聴く。そして疲れた夜は、受動的に眺めるだけでも楽しめる動画を……。
 そんなふうに、1日の中でも気分や状態で情報摂取の手段を使い分けているからです。
──NewsPicks Studios(以下、NPS)の番組コンテンツには、この2年ほどでどのような変化がありましたか?
木嵜 全体的な視聴数が伸びるなかで、特に就活関連の企画がヒットし、20代前後の視聴者の増加を感じています。
 NewsPicksのアプリがAPP Storeの「就活生が使っているアプリランキング」で第1位になったことや、NewsPicksの法人契約プランが広がり、若手社員に活用されていることが要因の一つかもしれません。
 私たちは以前から“日本の未来を創るコンテンツ作り”を意識していましたが、この変化を踏まえ、若年層向けコンテンツの拡充に力を入れています。
 たとえば先日は、2年ぶりの起業プレゼン・リアリティショー『メイクマネー』で、24歳以下が対象の特別版を制作しました。
 番組内では、当時小学6年生のプレゼンに注目が集まりました。
 スタンディングオベーションが起こるほどの高いクオリティにもかかわらず、彼は「全然うまくできなかった」と座り込み、涙をこぼすんです。
※NewsPicksプレミアム会員限定コンテンツです。
 それに対して、リアルタイム配信では私たちも驚くほどの勢いで視聴者のコメントが寄せられて……。経済番組もこれだけ熱量が高いものにできるのだな、と。
眞鍋 討論番組『The UPDATE』では、ソニーの若手ピッチイベントとの特別コラボ番組もありましたよね。
 NewsPicksの番組が、次の時代を作る若手ビジネスパーソンの登竜門になる可能性も感じます。
──NewsPicksで人気のあるコンテンツのトレンドはありますか?
木嵜 考え方や抽象度の高い概念を学べるコンテンツから、見た翌日に使えるハウツー動画に流行が移っているように思います。
 The UPDATEのFIRE(※)当事者のゲスト回も人気でした。
※Financial Independence, Retire Early:経済的自立と早期リタイア
※NewsPicksプレミアム会員限定コンテンツです。
 また媒体を問わず、動画の短尺化は2022年のトレンドです。あえて1時間ほどの番組にこだわるNPSでも、YouTubeのショート動画やTikTok仕様でコンテンツを切り出す挑戦をしています。
 その結果、先ほどのメイクマネー U-24は、TikTokとYouTubeでの再生数が合計1300万回を超えました。起業家や経営者、出演者と同じ若年層の方々が「絶対に観たほうがいい」とSNSで拡散してくれたんです。
 異なる媒体フォーマットでNewsPicksらしさを表現するのには苦労しましたが、そこから本編の視聴につながるといった成果も出始めています。

視聴ではなく、“体験”できる番組

──ショート動画が広まるなかで、NPSがあえて長尺にこだわる理由は何でしょうか?
木嵜 得られる“学びの量”が大きいからです。
 たとえばThe UPDATEは、前半が現状の課題整理、後半パートで未来を考える…といった形で、トークテーマを切り替えながら議論を深めていく番組構成にしています。
 1時間あるからこそ語れるテーマがありますし、ゲスト同士の予想外の化学反応も起こるんです。
眞鍋 The UPDATEは、ゲストの金言を表彰する「キングオブコメント」システムが発明ですよね。
 視聴者には気づきにつながるし、出演者側にも「何かパンチラインを言わなきゃ」という緊張感が生まれる。僕も出演させてもらったときは、かなり事前準備を頑張りましたよ(笑)。
 強い言葉が出れば、短尺動画として切り出しても魅力的なコンテンツになります。
 Twitterの予告動画で興味を持った人がYouTubeで15分バージョンの動画を観て、さらに深い内容はNewsPicksで……。
 こんなふうに、ユーザーのニーズに合わせた段階的な視聴体験を設計できるのは、長さのある番組コンテンツの強みだと思います。
──他のプラットフォームではなく、NewsPicks上で観てもらうメリットは?
眞鍋 NewsPicksでのリアルタイム視聴には、そこにしかない熱量があります。視聴者から、時には出演者も加わってコメントがどんどん寄せられ、自分もそこに参加できる。
 つまり、作られた番組をただ見る“視聴”ではなく、自分も一緒にコンテンツを盛り上げているという“体験”なんです。
木嵜 視聴者同士でコミュニケーションが取りやすく、どんなユーザーがどういった感想を抱いているかがわかるのも、コミュニティが基盤にあるNewsPicksの特長です。
 私たちNPSも、一緒に視聴しながらいただいたコメントはすべて読み、次の企画に生かしています。
眞鍋 NewsPicksの番組には情報感度の高いビジネスパーソンが、エンゲージメント高く集まっています。スポンサー企業にとって、まさに広告を届けたい層の方々がいる魅力的な場ですよね。
──数々のCM作品を手掛けてきた眞鍋さんにお聞きしたいのですが、テレビCMとスマホで視聴されるCM動画とでは、広告としてどのような差が出るのでしょうか。
眞鍋 まずアプローチのスタンスがまったく異なりますね。
 テレビで流れるCMは、番組の合間に自然と目に入るもの。前後にオンエアされる他のCMよりもいかに目立つかが勝負どころです。
 一方、スマホの画面は非常にプライベートな領域です。
 好きなコンテンツを観ている最中に挟み込まれる広告は、“異物”として見る側のストレスが大きい。いかに嫌われず、おもしろがってもらえるかが重要です。そしてあわよくば、SNSなどでシェアしてもらいたい。
 開くアプリやシーンによってもユーザーの気分は違うはず。そこに寄り添えるよう、広告コンテンツを作り分けねばなりません。

コンテンツファーストだからこそ成果が出る

──一億総発信時代と言われる今、NPSが動画制作のプロ集団として持つ強みとは何でしょうか?
木嵜 チームの強みの一つは、クリエイターとしての多様性です。
 映画やバラエティ番組など多様なジャンルの経験者がいます。業務委託の方を含む女性スタッフの割合は映像業界の平均以上ですし、海外出身のスタッフもいる。
 その全員が多様なアプローチで、“かっこよくて、おもしろくて、学べる経済コンテンツ”を目指しています。
 経済トークバラエティのOFFRECO.は、番組の設計段階から広告動画のプロである眞鍋さんに加わっていただいていますよね。
──スポンサード回のみでなく、番組の設計からですか?
眞鍋 スポンサード回をもはじめから想定した番組設計だからこそ、異物にならない広告の見せ方が追求できるのかもしれません。
 NewsPicksの番組は、MCの方々がゲストの“生の言葉”を引き出してくれます。観る側からしても、完璧に作り込んだ台本よりも、そうやって自然に発せられる言葉のほうが、伝わってきやすいですよね。
 コンテンツファーストで作るから、視聴者も楽しんでくれる。だからこそ、そこにコンテンツと密接に連携した広告を乗せても成果が出て、何度もリピートしてくださる企業がいらっしゃるのだと思います。

多様な課題に対応できる番組フォーマット

 前半の対談では、ユーザーに伝わる動画のあり方が語られた。
ではNPSでは実際に、スポンサー企業の要望をどのように汲み上げ、視聴者に伝わる動画を作り上げているのか?
 NPSでスポンサード企画を担当し、番組MCも務める川口あいに聞いた。
──NewsPicksの動画広告を活用する企業はさまざまです。情報発信や広告に関して、どのような課題を抱えていますか?
川口 非常に多いのは「SDGsやDXなどの喫緊の課題に取り組んでいるものの、それをどう対外的に発信するか悩んでいる」という相談です。
 視座の高いメッセージほど抽象度が高く、どうしても似通ってくるので、企業の独自性を表現しにくくなってしまうんですよね。
──なるほど。そういった課題に、NPSではどうアプローチしているのでしょうか?
川口 その企業らしいメッセージを引き出せるように、主に2通りのアプローチを提案しています。
 1つは、NewsPicksのオリジナル番組の活用です。『The UPDATE』や『OFFRECO.』といった人気シリーズのフォーマットを生かします。
 たとえばThe UPDATEは、NewsPicksプロピッカーをはじめとする有識者たちの白熱した議論が醍醐味です。
 スポンサー企業の強みや独自性、彼らの伝えたいメッセージが際立つ“問い”を立て、トークテーマに落とし込んでいきます。
 また最近は、テーマ領域のキーパーソンとして自社のトップや社員に出演してもらい、“企業の顔”として打ち出していく企業が増えている印象です。
 有識者と同じテーブルにつき、対等に議論を交わす姿を見せられるThe UPDATEは、業界での存在感を示すのにも有効です
 リピート出稿でさらなるブランディング強化に役立ててくださっているクライアントもいます。
 もし「自分たちのサービスやビジョンについて、じっくりと語りたい」という場合は、オリジナルのトーク番組を作る『NewSession』によるアプローチをご提案しています。
 いずれのアプローチでも、ポイントは「ビジネスパーソンたちにとっての学びとなるテーマが起点」ということ。そこから、クライアントの伝えたいメッセージまで落とし込んでいく。
 ストーリーを描くために、発信の目的から丁寧に整理し、きめ細かくヒアリングしながら動画の完成までをNPSが並走していきます。
──それぞれの番組シリーズは、どのように広告で活用できますか?
 スポンサー回のご要望が多いのは、100回以上続く長寿番組のThe UPDATEです。
 主に共感型の議論からのキーワード訴求を得意としていますが、自社サービスやプロダクトを紹介するコーナー枠「UPDATE BOX」の挿入も、オプションで可能です。
 トークバラエティのOFFRECO.は、議論が難しいニッチなテーマにも向いています
 たとえば大手SIer様のスポンサード回は、「ホワイトハッカー」を取り上げ、有識者が語るDXの総論と当事者の“ここだけの話”が交わり、エンタメ性と熱量の高い内容に仕上がりました。
 始まったばかりの『New Door』は、視聴者参加型のビジネスお悩み相談番組。NewsPicksユーザーたちとのリアルなコミュニケーションができる場なので、キャリア系の企業さんと相性がよさそうです。
 また、インナーイベントとのコラボで、社員エンゲージメントを高めるといった活用法も見込んでいます。
 そしてNewSessionはこのなかで唯一、広告を前提に開発されたシリーズです。
 クライアントと少人数のトークセッションを展開するフォーマットが特徴。NPSの番組制作の知見をもとに、読者・クライアント・NewsPicksの「三方良し」となるコンテンツが作れるよう、きめ細かく企画を練っていきます。

伝えるには、動画だけにこだわらない

──先ほど「三方良し」という言葉がありましたが、その実現のために、制作工程ではどのような工夫をしていますか?
 そこは永遠の課題ですね(笑)。記事と違って、動画は一発勝負の面があるので、本番までの段取りが非常に重要です。とはいえ、台本を作り込むのではありません。
 事前に番組の構成を詰めるのはもちろん、効果的な切り口、つまり“問い”を考え抜きます。
 NewsPicksはビジネス感度の高いユーザーが集まっているからこそ、半端な切り口ではメッセージが届きません
 ヒアリングを通じて、クライアント自身も気づいていない魅力が見つかれば、アピールポイントに立ち戻ってご提案することもあります。
 そして時には、動画以外の手法もフラットに提案します。動画も記事にもイベントにも対応できるのが、NewsPicksの強みですから。
 たとえば、もしどうしても説明過多になりそうな場合は、動画と記事のセットでプランニングするケースもあります。
 動画で関心を持ったユーザーが記事で詳細を読むという流れをNewsPicks上で作ることで、動画に“押し売り感”が出てしまうのを防げるのです。
──タレントや有識者にクライアントの社員の方も出演する番組は、キャスティングも重要になりそうです。
 キャスティングは命ですね。最近では、過去にオリジナル番組に出演いただいたタレントさんのほうから「ぜひスポンサードでもお願いします」と声をかけてくださるケースも増えています。
 番組内での出演者同士の出会いが、協業などのお取り組みのきっかけになることも多いようです。

ブランド価値を高める3つのポイント

──企業のブランド価値を高めるために、NPSの動画コンテンツはどのような形で貢献していますか?
 自社からでも発信が容易な時代に、私たちNPSが提供できる価値は大きく分けて3つあると思います。
 まずは、理想的な視聴者が集まる場づくりです。
 眞鍋さんと木嵜の対談でもお話しした通り、NewsPicksのオリジナル番組には、ビジネスへの関心が強く、活発にコメントで反応してくれるファンがついています。
 こうしたエンゲージメントの高いユーザーさんたちこそが、NewsPicksの価値の源泉です。
 もう一つは、世界観の作り込み
「NewsPicksの動画はかっこいい」と、デザインのクオリティもよく評価いただくポイントです。
 配信後に自社サイトに格納するなど、コンテンツの二次利用でマーケティング施策に活用されているとの声も聞きます。
──中長期的にもブランディングに活用されているのですね。
 そのようです。そして何より重要な貢献は、制作の過程。メディアとして培ってきた“伝える知見”を生かしてクライアントに並走する点です。
 クライアントは「これを伝えたい」という並々ならぬ思いをお持ちです。最初は無理難題と思えるようなオーダーをいただくこともありますが、私たちNPSは常に前向きに「どうしたら実現できそうか?」を考えます。
 クライアントに寄り添い、経験やデータをもとに細部まで共に作っていくからこそ、信頼いただけている部分は大きいでしょう。
 昨年、計5本の動画を出稿いただいたNTTコミュニケーションズさんとは、定例会議を毎週実施して、情報共有や相談を行いながら番組を作り込んでいきました。
 このように日々クライアントの要望に向き合うなかで、NPSにできることの幅も広がっています。
 長尺・議論型というNewsPicksらしさはそのままに、ますますフレキシブルに、伝わる動画を追求していきます。