2022/6/10

【深層】ネタバレチェック・倍速試聴に見る、現代の生きづらさ

NewsPicks編集部

NewsPicks編集部

まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、映画などのポップカルチャーから社会を読み解く、稲田豊史氏だ。

稲田氏の新刊『映画を早送りで観る人たち　ファスト映画・ネタバレ──コンテンツ消費の現在形』は、昨今新たに出現した「倍速視聴」を糸口にしながら、生活のあらゆる場面で効率性を求める現代の若者像、制作側の葛藤を丹念に取材し、コンテンツ消費の今を描いた話題作だ。

前編では同書を元に、昨今、映像作品が早送りや10秒飛ばしで試聴されている実態と、その要因を紐解いた。

【新】現代人が「倍速視聴」せざるを得ないワケ

NewsPicks編集部

2022年06月09日

この後編では稲田氏へのインタビューを通じて、若者を中心に、そのような視聴習慣に至らしめる社会のあり方について、さらに深く迫っていく。

INDEX

• 「正しさ」とは、マジョリティであること
• 多様性の本質を教わっていない
• クリエイターたちの今後

「正しさ」とは、マジョリティであること

──本書は『「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来』と題した稲田さんのWeb連載がベースとなっています。書籍化してからは、改めてどのような反応がありましたか。

コメント

注目のコメント

• 橋本 賢二

  キャリア教育研究家

  ・2022年06月10日

  多数派になるための方法を見極めようとしている傾向はヒシヒシと感じてます。差し障りのない言葉で差し障りないコミュニケーションをするので、価値観を深めることもできていません。これらは若者に限ったことではなく、大人もです。
  
  大学生以下であれば、日中仕事で拘束されている大人よりもコンテンツ消費にかけられる時間が多いので、そのような傾向は強くなると考えられます。最早若者とは言い難い私も、動画コンテンツを倍速視聴しています。その理由は、提供されるコンテンツの情報量の薄く、タイパが悪いからです。
  
  だからと言って、全てが10秒飛ばしや倍速視聴ではありません。ベタベタですがローマの休日の謁見シーンやエヴァンゲリオンのエレベーターシーンなど、時間に引き込まれてしまうものは確かに存在するので、コンテンツの力次第なのだと思います。
  
  誰もがクリエーターになって発信できるからこそ、プロに求める期待値が高くなっているとも言えますね。
• 小堀 拓磨

  金沢大学人間社会学域国際学類/ 第二期Student Picker

  ・2022年06月10日

  「普通のZ世代」は、多様性を認めているというより、自分と違う価値観の人に対して、わざわざ排除はしないけれども、関与もしないという姿勢でした。
  
  この言葉は確かに、と思いました。自分もその傾向が強いと感じますが、同世代で「私は多様な価値観を尊重します、理解しています、認めています」と言っている人たちは大抵の場合、多様な価値観を尊重したり、理解しているというよりも存在だけを認知し、関与していないイメージが強いです。個人的には理解のためには体験すること、経験者から話を聞くこと、など実際にそちらの価値観の側にいる人に対してのアクションが必要なのだと思いますが、そのアクションを取らずに、ただ、そういった価値観を持ち合わせた人がいる、ということを知っているだけの状態を「多様性を認めている」とはき違えている気がします。確かに両者は聞こえは一緒に思えますが、アクションを起こしている/起こしていないという大きな違いがあるように思います。極端に言えば一種の排他的思考なのかもしれません。
  特に性的マイノリティに対してや、「意識高い系」と「普通」の大学生でこのような誤解が起きているように感じます。
• 清水 勝彦

  慶應ビジネススクール 教授

  ・2022年06月10日

  「多様性の本質を教わっていない」という点は実はZ世代だけではないのでは？
  ただ、誰かから教えられるものだとすると、１つの正解を求めるという罠にはまってしまいます。むしろ体験する、実感する場をどう作るかが大切な気がします。