EU、ロシア産石油禁輸で合意 追加制裁、一部除外で妥協
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まず1つ重要なのは、これが、「2022年度12月末までに」達成される、ということですね。
それまでは、EU各国とも、ロシア原油の輸入を続けます。
ドイツのように、「8月までには輸入を半減させる」という独自目標を掲げている国もありますが。
EUの、全会一致でなければ決定できない、という規則が、ハンガリー1国の反対によって、ロシアへの制裁効果をかなり弱めることになりました。
ロシアから見れば、EUというのは、1か国を切り崩せば操れる相手、ということになります。日経の記事でもコメントしましたが、妥協はヨーロッパお得意のパターンです。あとは、実効性でしょうか。
やると言えばやる組織ではないので、その「ヌエ」のような組織的な性質をきちんと理解したいところです。元々25%しかロシア依存していなくて、海上からの流通ルートが多い石油禁輸の方がEU.にとってはハードルは低い。しかも、半分は製品輸入(軽油やガソリン等の形)での輸入なので、ロシアがEU外に輸出して、精製してしまえばどこが原産かは判別はつかないし、既にギリシャ沖での積み替え(STS)が横行しており、ガスよりも抜け道が多い、欧州向けの輸送量減少分の殆どを買い取っているインドのような国の行動をどこまで抑えられるかで、その効果が決まる。
困るのは、ロシアからパイプラインでのみ輸入している内陸のハンガリー等の国で、代替流通ルート確保等の為に1800億ユーロをEUに要求していたが、今回の合意ではどの金額で手が打たれたのかが注目される。
また、イタリアは対露制裁の影響で、シチリアにあるルクオイルの製油所がルクオイルとしか取引できなくなり、ロシア産100%となってしまっている問題がある。島の雇用問題でもあり、止めるわけにもいかず、国有化が議論されている。
今年は米国をはじめとして、IEA加盟国で平均110万バレル/日程度が備蓄解放されているので、中東産油国等のOPEC+が元々の増産計画通りに進めば、年内にロシア産輸入をほとんどゼロにする事は、計算上は可能。ただ、備蓄解放は年内に終了する予定で、その後も戦争が続き、厳格な禁輸を続ける事は難しいだろう。
問題は、ロシア側が順番に供給を止めているガス供給の方。もうすぐデンマーク向けガス供給も止まると見られている。EUのLNG輸入キャバは既にフル稼働だが、次の冬に向けた在庫蓄積は昨年並かそれを下回る趨勢。EU側にとってガス供給停止は耐えられないが、ロシアにとっての打撃は石油の10分の1(輸出額ベース)。この非対称性と、政治的建前、外交当局とエネルギー当局のミスコミュニケーションから導かれる結果は、かなり厳しいものとなるだろう。