2022/5/23

【賛否】「社員の幸福」を追求する職場トレンドの落とし穴

INDEX
  • コロナ禍での離職を防ぐには
  • 「オフィス特典」に高まる批判
  • お金と感情は置き換えられない
  • 各社で進む「幸福」への取り組み
  • 幸せは「測定」できるのか
  • 働く人が本当に求めているもの

コロナ禍での離職を防ぐには

化学薬品メーカーWD-40を経営するギャリー・リッジが、リーダーシップの師と仰ぐのは、ギリシャの哲学者アリストテレスと、世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOだ。
リッジはまず、アリストテレスの言葉を引用した。「仕事に喜びを感じることが、仕事に完璧さをもたらす」
続いて、ブラックロックの最近の社内メモを大声で読み上げる。「従業員と強い絆で結ばれている企業は、パンデミックの間もずっと、離職率が低く、高い利益を上げている」。
ここで彼は自分のコメントを付け加えた。「まあ、当然ですよね」
WD-40の経営者、ギャリー・リッジ(右)と、人事担当のジェフ・リンドマン(Ariana Drehsler for The New York Times)
WD-40は、鮮やかな青と黄色の容器に入った洗浄剤で、家庭でドアのきしみを修理するのによく使われるアイテムだ。独自の製法で作られたこの洗剤は、さびたボルトを緩め、壁についたクレヨンを消し、車についた虫の死骸を掃除したり、自転車のチェーンのさびを落としたりするのにも役立つ。
リッジは17の支社にいる社員600人に、自分たちの仕事がいかに顧客の役に立っているかを認識することで、仕事にやりがいを感じてほしいと思っている。
それと同時に、同社の型破りな社風に魅力を感じている社員もいるはずだと考えている。
WD-40には管理職がおらず、「コーチ」しかいない。従業員は、「時間、才能、大切なもの」を地域社会に提供することで表彰される(同社はそれを「マザー・テレサ賞」と称している)。また、会議の席で同僚と共に「ポジティブな思い出」をつくることを勧められたりもする。
WD-40のオフィス(Ariana Drehsler for The New York Times)