ロシア産の欧州向けガス輸送、ウクライナが一部停止へ 供給に不安も
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ウクライナ経由でなくてもノルドストリームとかパイプラインはたくさんあり、本件そのものの欧州への影響は限定的。ロシアから「ウクライナ経由」で欧州に向かうガスの3分の1に当たる供給量が停止されるということで、欧州への流量ではおそらく1割程度の減少。欧州としても想定内だろう。アゼルバイジャン - ジョージア - トルコから欧州へのガスの流量も増えている。
問題は、これがロシア側から天然ガスを全面的に切ってくる動きの始まりなのではないか、ということ。石油と天然ガスは、ぜんぜん違う。天然ガスのほうがロシアへの依存度が高い。ロシアとしてはガスの流れを欧州に切られる前に、先に切るぞ、というシグナルかもしれない。石油禁輸についてハンガリーなどまだ欧州内で割れているので、そこに揺さぶりをかけてきている可能性もある。ヨーロッパ向けのガス輸送ができなくなった、といっているのはウクライナ国営のGas TSOですが、その理由として、ウクライナ北東部Sokhranivkaの中継地点にロシアからガスが送られなくなったからである、という説明をしています。
この中継地点一帯はロシア軍の占領下なので、この説明が正しければ、ロシアが意図的にガスの輸送を止めた、ということになります。
この中継地点を止めるだけで、ロシアからヨーロッパ諸国へ輸出されているガスの3分の1を止めることができます。
ウクライナ政府の言い分は、ロシア側の妨害によって「不可抗力」でガスの一部をヨーロッパに輸送できなくなっている、というものです。
一方、ロシア政府は、国営ガスプロムはガスの輸送に努めており、ヨーロッパ諸国との間の契約に違反していない、と反論しています。
親ロシア派地域でガス無断「抜き取り」か ウクライナ国営企業、経由の供給停止
https://www.sankei.com/article/20220511-P7EPBQCJ6JI4JDUMLVDKORQDR4/さて、細かい話ですが、ウクライナのガス運送システム会社を「GTSOU」というのは、エネルギー業界での言い回しで、Gはガス、TSOはTransmission System Operator(送ガス系統運営者)を、Uはウクライナを指しています。
このTSOというコトバを電力に使えば、「送電系統運営者」又は単に送電会社と訳します。
ウクライナ語では、GTSOUとは言わず、「ウクルトランスガス」と呼びます。ロシア語、ウクライナ語に多い、複数の単語を繋げて一つの別の単語を造語したものです。
ウクルトランスガスの親会社はウクライナ最大の企業である「石油ガス公社」(ナフトガス)となっています。同社一社だけでウクライナの税収の15%を占め、7万人弱が勤務しています。
毎度のことながら、今回の一件もウクライナ・ロシア間の情報操作のネタに使われています。
ウクライナ側はウクライナ支配下にあるスジャに接続点を移して欧州向けのガス供給を続けると発表し、対するロシア側は、ウクライナが「不可抗力」によりガス供給がなくなったと主張しているのは事実無根であり、他のパイプライン支線にガス供給路を移すことは出来ないと主張しています。
さて、かつて川端康成はガス自殺を遂げましたが、それは当時のガスが、石炭から抽出するコークガスであったことに依ります。かつて西ドイツもガス供給はコークガスに依存しており、天然ガスによる「クリーン」なガス供給が渇望されていました。
天然ガスはソ連にある、そこで先ず永世中立国のオーストリアにソ連ガスが入ったのが、奇しくも「プラハの春」でチェコの民営化がソ連の戦車に踏みにじられた1968年でした。
当時、西側は一斉にソ連を批判しましたが、ソ連とのエネルギー協力は、東西対話の「地下水脈」として維持存続する任を与えられました。
時代は変わるものです。
https://ieei.or.jp/2021/03/special201704025/