2022/3/15
【解説】元FBIが読み解く、ウクライナ「サイバー戦争」の行方
ロシアによるウクライナ侵攻が20日以上にわたって続く中、250万人以上を国外退避へと追い込んだ苛烈な地上攻撃と並行して、サイバー空間での紛争も激しさを増している。
この「サイバー戦争」はこれからどのように展開し、両当事国以外にどのような被害をもたらすのか。米外交政策研究所(FPRI)の特別研究フェローで、元FBI特別捜査官のクリント・ワッツ氏が読み解く。
(本インタビューは、米ニューヨーク・タイムズのPodcast番組「Sway」にて3月7日に配信された。聞き手は「Sway」パーソナリティのカラ・スウィッシャー)。
- ロシア側のガイドラインが変わった
- 最悪のシナリオは「プーチン敗北」
- アメリカはなぜ「攻勢」に出ないのか
- ロシアが狙う「アメリカの弱点」
- 「サイバーNATO」が難航した理由
- 本当の脅威は「中国」
ロシア側のガイドラインが変わった
──現在のロシアのサイバー戦略とはどのようなもので、どれくらいの被害がもたらされているのでしょうか? ウクライナでは、すでに大手銀行などに対してマルウェア攻撃が行われています。
ワッツ ロシアのサイバー戦略を考えるには、2つの観点があります。
ひとつは、破壊工作やスパイ行為といった目標から考えるというもの。ロシアにとって、ウクライナは常にサイバー分野の中心地でした。ウクライナには、ロシアに劣らず優秀なプログラマーやコンピュータ・サイエンティストがいます。
とはいえ、ウクライナを奪取しようとするならば、ロシアとしてもウクライナの全てを破壊したくはありません。したがって、ウクライナ国内に関しては、あまり破壊的なマルウェアなどは使わないだろうと考えられます。いずれ電力や水道など、全てのインフラを復旧させようと思ったときに困るからです。
クリント・ワッツ氏(Win McNamee/Getty Images)