ロシアとウクライナ 戦闘地域の住民避難ルート設置方針で合意
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戦闘地域の住民避難ルートというのは「人道的な回廊」と言われるもので、シリアやイエメンのような絶望的な内戦で、せめてこれだけは設定してくれ、というレベルのものです。ロシアとしては切れる一番簡単なカードのひとつ。実質的には協議はなかなか前進できていない、と見るべきでしょう。
ロシアは、かつてのシリアやイエメン、ガザの内戦で見られたような、いかにも非人道的な行為を、あえて避けているように見えます。シリアでは人道的な回廊が設定できず、アサド政権は散々非難されましたし、イエメンでもこの設定が停戦合意の大きな焦点でした。ロシアはこうした交渉に陰に陽にかかわってきたので、カードの切り方がわかっている。他方、ウクライナ協議団はこうした駆け引きの経験値は高くはないでしょう。ウクライナにとって厳しい状況が続きます。住民の避難ルートの設置は戦場では普通にあることなので、これ自体は結構なことなのですが、問題はそのルートがロシア、ウクライナどちらの方向になるかです。
今一番警戒されているのは、ロシア占領地側にのみに脱出路が設定され、住民を救出し、歓迎されるロシアの解放軍というようなプロパガンダとして使用されることです。
シリアなどでは市街地への無差別爆撃とセットで、こうしたプロパガンダが行われて来ましたので、住民の安全のためには、赤十字や国際的な難民支援NGOなど中立の国際機関の活動と安全を保証するような枠組みが必要です。シリア内戦で激戦地となったアレッポでもこのような住民避難ルートが設定され、一定数の住民がトルコなど国外に避難することができた一方、住民が避難を完了したという名目で、シリア軍はアレッポを猛攻撃し、街は廃墟となった。つまり今回の合意はロシア側総攻撃の布石となる可能性がある。