2022/3/3

【新】E・マスクも注力。東大研究者が明かす「脳×AI融合」の今

NewsPicks編集部
まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、人工知能を通じて脳の機能を拡張する研究に従事する、現役医師の紺野大地氏だ。
脳科学者・池谷裕二氏との共同執筆であり、自身初の著書『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社)の中で、紺野氏は脳研究と人工知能研究の歴史についてひも解いたうえで、両者をかけ合わせた新たな研究の進展について解説している。
現役プロ棋士が人工知能に敗れ、人間の仕事が次々に代替されていく。信じられないスピードで発展する人工知能が、人間の脳に接続されたとき、人間はどのような進化を遂げるのか。
「SFの世界」では片付けられない数年先の未来について、著者であり研究の当事者でもある紺野氏の目線から解説してもらおう。
INDEX
  • 人工知能と人間が手を取り合う未来
  • 冬の時代から、開花の時代へ
  • 結婚相手も人工知能が選ぶ?
  • 人工知能で脳の限界を突破する

人工知能と人間が手を取り合う未来

「現役プロ棋士、人工知能に敗れる」。──2013年3月30日、佐藤慎一四段(当時)が将棋ソフト「Ponanza」に敗れたというニュースが大きな話題を呼んだ。
プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトウェアとの非公式棋戦「将棋電王戦」は、人工知能の技術進展を市井の人に広く認知させるきっかけになった。
同年は英・オックスフォード大学で人工知能の研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授(当時)が「人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる」という予測を発表した年でもある。
(写真:Tero Vesalainen / iStock)
衝撃的なニュースの相次ぐ報道に、「自分の仕事が本当になくなってしまうのではないか」と恐怖を感じた人もいただろう。
人工知能が膨大な数の余剰労働力を生み出すのは間違いない事実だ。しかし、それを悲観するのではなく、むしろ人工知能を活用することで、人類を前進させようと研究に命を燃やす人も少なくない。
医師・神経科学研究者である紺野氏は、その一人だ。紺野氏は、著書『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』の中で「人類と人工知能とが互いの強みを活かして手を取り合うことで、どちらか一方ではたどり着けないところまで行くことができる。それこそが人類が目指すべき未来だ」と話す。
紺野氏が描く未来は、こうだ。