2022/2/18

【新潮流】「アグリ・フードテック界のGAFA」は生まれるか

NewsPicks 編集部 記者・編集者
2022年に注目される最先端のテクノロジーやサイエンスのテーマを紹介する特別企画「10大テクノロジー&サイエンス」──。最後となる今回は、食の分野にフォーカスする。
ここ数年、食の分野で盛り上がっているのは、代替肉や代替ミルク、代替卵など、植物性由来や新しいテクノロジーによって生み出される代替食品だ。
こうした食の加工や販売・配達の分野でテクノロジーを使う「フードテック(FoodTech)」、あるいは、食を作る農業分野でテクノロジーを使う「アグリテック(AgriTech)」に注目が集まる。
スタートアップ企業への先行投資が進むアメリカでは、これらを合わせて「アグリ・フードテック(AgriFoodTech)」という名称まで生まれている。
(写真:中尾由里子/アフロ)
アグリ・フードテックは、先進国における健康志向の高まりや、Z世代を中心としたサステナブルさ(持続可能)を嗜好する消費マインドの変化によって、今後も大きな成長が見込まれている。
ただし、足元では、この動きを象徴する上場スタートアップ2社の株価が下落を続けている。
植物性代替肉を手がける米ビヨンド・ミートや、「オーツミルク(オーツ麦のミルク)」を製造するスウェーデンのオートリーだ。
2021年5月に上場したオートリーは、同6月に時価総額が164億ドル(約1兆8800億円)まで上がったが、その後どんどん下がり、2022年2月には40億ドル(4600億円)前後で推移している。
2019年5月に上場したビヨンド・ミートも、オートリーと同じような下落を続けており、時価総額も同じ水準まで下がっている。
世界人口が2050年にかけて100億人へと増えていく中で、アグリ・フードテック業界はこれからどうなっていくのか。また日本企業に勝ち筋はあるのか。
2014年に創業し、大学発・技術系ベンチャーへのインキュベーション投資に特化した独立系ベンチャーキャピタル「Beyond Next Ventures」(東京・中央)においてアグリ・フードテック分野で活動する有馬暁澄マネージャーの解説を中心に、最新状況をレポートする。
INDEX
  • 食肉市場「200兆円」の戦い
  • 代替肉はすでにレッドオーシャン
  • 培養肉の鍵は技術
  • アグリフード界のGAFA

食肉市場「200兆円」の戦い

アグリ・フードテック系スタートアップ企業への投資は、世界で年々増えている。2021年の調達金額は、合計で305億ドル(3.5兆円)に達している(下図)。