2022/2/15

【実録】「攻殻機動隊」に僕らは導かれた

NewsPicks 記者
100年以上の歴史があるSFの系譜の中にあって、日本人研究者や起業家の間でバイブルと呼ばれる伝説的な作品がある。
「攻殻機動隊」だ。
1989年にオリジナル漫画の連載がスタートして以降、現在までシリーズが世に出続けている、日本のSF作品の金字塔だ。
特に工学者の間では必読書として読み継がれ、作品に触発された研究が次々に花開きつつあるのだ。
なぜ、「攻殻機動隊(以下、「攻殻」)」は人の想像力を刺激するのだろうか。この作品に多大な影響を受けた研究者・起業家・評論家への取材を元に、その秘密を解き明かしていく。

平成の不況に生まれた傑作

シリーズの中でも特に評価が高く一般的に知られているのが、1989年に連載を開始した士郎正宗氏による漫画と、1995年に公開された押井守監督の映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」だ。
「攻殻」ファンの工学者や技術者では、この2つの作品に影響を受けたと語る人が多い。
両作品が誕生した80年代終わりから90年代の日本は、バブル崩壊からの平成不況にあり、ITバブル前夜、という経済的な谷間の時代だった。
『攻殻機動隊論』(作品社)の著者であり、文芸評論家の藤田直哉氏は、次のように指摘している。