スマホシフトで苦戦する、王者グーグル
2014/10/22, The New York Times
広告主より早い、ユーザーのスマホシフト
グーグルはこの数か月というもの、無人機配送プロジェクトを公開したり、病気で手が震える人のためのスプーンを開発した企業を買収したりと、「本業」以外で意欲的な動きを見せてきた。だが同社が10月16日に発表した第3四半期の決算を見れば、グーグルとはウェブ広告で稼ぐ会社だったことを思い出すはずだ。
結論から言えば、この決算に投資家は落胆し、株価は下落した。
グーグルの年間売上高は毎年約20%ずつ増加しており、今年は600億ドルに達するとみられる。素晴らしい業績だが、そこには投資家たちが指摘し続けてきた課題もかいま見える。つまり、モバイル広告による収入をどうやって増やしていくかだ。
ネットユーザーはパソコンよりスマートフォンにより多くの時間を費やすようになっているが、モバイル端末の広告料はデスクトップより単価が安い。そのためグーグルの広告収入は明らかに落ち込んでいる。
グーグルはこの1年、広告主に対してモバイル端末への掲載を増やすよう積極的に呼びかけてきた。そうすれば、モバイルの広告料も望ましいレベルに達するのではないかと期待していたからだ。
広告主がモバイルを避けているというわけではない。市場調査会社「eマーケッター」によれば、広告主がモバイル端末に投じる広告費は過去2年で約3倍に増加。アメリカの広告市場の11.4%を占めるまでになった。
問題はユーザーのシフトが広告主以上のペースで進んでいることだ。人々は今や自分の時間の4分の1近くをスマートフォンなどの携帯電話に使っている(しかも、この割合に通話時間は含まれていない)。比較のために2012年の数字をあげれば、ユーザーは自分の時間の14%を携帯電話に費やし、広告主は全体の約3%をモバイル広告に投じていた。
モバイル広告の市場規模が、グーグルの最大の収入源であるデスクトップ広告に迫りつつあるのなら、同社は戦略を変えないといけない。
グーグルは広告収入の内訳を公表していないため、その何割をモバイルが占めているのかは分からない。ただ広告のクリック1回ごとに同社が受け取る金額(コスト・パー・クリック=CPC)は減少しており、その原因はモバイル広告のクリック数が増えているにもかかわらず、単価が安いことだと考えられる。
コスト・パー・クリック減少に歯止めはかかるか
グーグルは複雑なオークションによって広告スペースを売るため、自ら広告料を高く設定することはできない。広告主たちがライバル企業より高い値段を提示して競い合ってこそ、広告料は吊り上がる。
そのためグーグルはこの1年、さまざまな手法で広告主たちにモバイルへの掲載を促してきた。一例が、昨年から導入した「エンハンスト・キャンペーン」だ。従来はパソコンやスマホなど端末ごとに広告の入札を行っていたが、一度のオークションで複数の端末に広告を出せるようにした。
また広告の効果を広告主が把握できる新機能「推定合計コンバージョン」も昨年から導入した。広告主はユーザーがどのようにして複数の端末間を行ったり来たりしているか確認できる。具体的には、スマホで検索していた商品を1時間後に家のパソコンから購入したというような消費動向が分かる。
この機能の目的は、広告主にモバイル広告によってその場で購入させることができなくても、その広告の効果が後で出てくる可能性があることを示すことだ。現に、多くの人が後になって違う端末からアクセスして購入したり、実際の店舗まで行って買い物をしたりしている。
こうした努力でグーグルはコスト・パー・クリックの減少に歯止めをかけられるだろうか?
RBCキャピタルマーケッツのアナリスト、マーク・マハニーはその可能性はあると語る。マハニーは、グーグルが前四半期からコスト・パー・クリックの増減率を自社サイトとパートナーサイト別に発表するようになった点を指摘する。以前は公表されていなかったこのデータから、コスト・パー・クリックの減少率は自社サイトのほうが大きいことが分かる。
マハニーは、グーグルが投資家に対してよりオープンに情報を公開し始めたことを評価している。
(執筆:CONOR DOUGHERTY記者、写真:Karsten Moran for The New York Times、翻訳:中村エマ)
(c) 2014 New York Times News Service
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コメント
注目のコメント
スマホ広告を大きく伸ばすのは至難。本命は課金ビジネスではないでしょうか。アナリストの椎名さんが指摘するように、グーグルが通信ビジネスに参入したら面白い。https://newspicks.com/news/660777/
否応ないモバイルシフトのなかでGoogleがどう進化するのか興味深い。
記事は主にモバイルの広告単価が低いことの影響を指摘してるが、「スマホで検索しなくね?」の議論がある通り、人々の「知の入口」におけるGoogleのシェアはPC時代よりは低下するのでしょう
AndroidというOSレイヤーや、アプリマーケットレイヤーを抑えている強みはあるものの現状ではマネタイズは弱い
実は成長の大きな部分はM&Aによった支えられていて「自力で産み出したのは検索広告だけの巨大な一発屋」とも言われるGoogleさんの一つの転換点なのでしょう自分がスマホ使ってて思うのは、画面小さい中で不必要な広告がその狭い中で出てくるとイライラするということ。必要なものを綺麗に出すという点で、意識が小さい画面に集中してるから、モバイルは要求水準がPCより高い。
その観点で、実際の送客につながる地図情報と嗜好活用したO2Oを上手くできるかが、Googleに限らずモバイル広告で各社重要と見てる背景。また決済もそこで手数料取るか、手数料取らずに情報収集に徹しO2Oに活かすかというのも悩ましいところ。