[シンガポール 25日 ロイター] - シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は25日、金融政策の引き締めを決定した。世界的な供給制約や需要改善を背景にインフレ圧力が高まる中、4月に予定される半期ごとの定例見直しを待たずに行動し、市場にとってはサプライズとなった。

貿易に依存するシンガポール経済は、世界的なインフレ動向の影響を受けやすい。

MASは金利ではなく、主要貿易相手の通貨に対してシンガポールドルを非公開バンドの中で上げ下げさせることによる為替レート設定を通じて金融政策を運営。「シンガポールドル名目実効為替レート(SドルNEER)」として知られる政策バンドの3つのレバー(傾き、中央値、幅)を通じて政策を調整している。

MASは政策バンドの傾きを小幅に引き上げると表明。政策バンドの幅と中央値に変更はないとした。

MASが定例見直しを待たずに行動するのは原油価格急落を受けて政策を緩和した2015年1月以来。

OCBCの国債調査・戦略責任者のセレナ・リン氏は今回は傾きが「若干引き締め」られただけとし、4月の追加引き締めを予想した。

前日に発表された12月のコアインフレ率は約8年ぶりの伸びを記録した。

MASは声明で、昨年10月の「予防的」な引き締めを今回強化したと説明。「中期的物価安定の確保に適切」な措置だと評した。

MASは4月に半期に1度の政策見直しを行う。エコノミストの大半は引き締めを決定すると見込んでいる。

シンガポールドルは予想外の動きを受け、対米ドルで1.3425Sドルと、2021年10月以来の高値を付けた。

MASが新たに示した今年のコアインフレ率の予測は2.0─3.0%と、従来の1.0─2.0%から引き上げた。総合インフレ率の予測も1.5─2.5%から2.5─3.5%に上方修正した。

「供給制約が改善することで、コアインフレ率は上期の高止まりした状態から下期に鈍化する見込みだが、リスクは引き続き上振れに傾いている」との見解を示した。

今年の経済成長率予測は3─5%に据え置いた。

OCBCのリン氏は「22年はシンガポールにとって財政と金融面のダブル引き締めの年になる」と述べた。

シンガポールは2月18日に予算案を発表する予定で、その際に物品・サービス税の引き上げ時期を明らかにする見通しだ。

21年の国内総生産(GDP)は前年比7.2%増と10年以上ぶりの高い伸びを記録。5.4%減と過去最悪のマイナス成長となった20年から急回復を遂げた。政府は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による影響を軽減するため、過去2年間に1000億シンガポールドル超を支出している。