2022/1/16

【及川×高橋】経営者、母として。本に教えられた大切なこと

ポーラ初の女性社長・及川美紀氏と、若くして起業したジーンクエスト社長・高橋祥子氏。2人をゲストに迎えた番組「彼女たちの本棚」が1月9日に配信された。ともに社長であり母でもある「彼女たち」は、どんな本に人生やキャリアのヒントを得てきたのか。本記事では、番組のハイライトとともに、番組未公開の愛読書リストを公開する。
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本を通じて「複数の視点」を持つ

及川 読書の素晴らしい点は、他人の思考や感覚をなぞれることだと思っています。本を読めば読むほど、自分の中に振れ幅が生まれる。
高橋 いろいろな思考に触れることで自分の考えを客観視できるようになりますし、より洗練されていきますよね。
及川 常に複数の視点から物事を捉え続けることは非常に大切です。お客さまの視点と会社の視点、経営の視点と社員の視点、数字と感情……。こうした振れ幅をもって考えるうえで、読書は大きな助けになっています。
及川美紀 ポーラ代表取締役社長。1991年大学卒業後、ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。美容教育、営業推進業務、商品企画部長を経て、2012年執行役員。2014年に取締役に就任。2020年よりポーラ初の女性社長に就任。
高橋 私は経営者であると同時に研究者でもあるのですが、「どちらなんですか?」と聞かれて悩んだ時期もありました。けれど読書を通じ、複合的な視点を持てたことで、今では「融合した1つの職業だ」と考えられるようになりました。
高橋祥子 ジーンクエスト代表取締役社長。東京大学大学院 農学生命科学専攻応用生命科学科修了(博士号取得)。2013年 東京大学大学院在学中に初の個人向けゲノム解析ベンチャーを起業。個人向け遺伝子解析事業と創薬研究支援事業を行う。
及川 子育ての参考に読んだ本が、結果としてマネジメントに生きることもあります。例えば「子は親の鏡」という言葉があるのですが、これは経営者と社員の関係でも同じ。
コロナ禍で「大変な時期だから浮かれちゃいけない」と思って真剣な表情でいたら、みんなが私の顔を見て不安になってしまったんです。逆に、明るく元気に「みんなで乗り越えられるよ!」と言うことで、社員も元気になると学びました。
高橋 特に厳しいとき、どういう表情をするかは重要ですよね。チームも経営者を映す鏡だと思います。

人生を変えた「愛読書たち」

マネジメントでも子育てでも、本に多大な影響を受けてきたと語る、及川氏と高橋氏。
番組では両者が特に影響を受けた珠玉の5冊を紹介しているが、本記事では、番組内で紹介しきれなかった「未公開リスト」について、推薦コメントとともに一挙公開する。

及川氏、推薦の6冊

「出版は2010年ですが、書かれたのは2000年。当時20歳の若者は40歳になっているはずで、期待通りの進化をしていれば、日本はどうなっているはずだったのか。若者が本当の意味での大人になるということはどういうことだろうかと考えてしまいます」(及川)
「ブレイディみかこさんの知性に圧倒されます。今の時代の課題解決の可能性を、多様性とその受容ということのみでひとくくりにせず『思考』することの必要性を説いています。多様な視点、多元的な解決策、考え続け、アクションを起こすことの大切さに気づかされます。弱者に目を向ける徹底的にぶれない軸も魅力です」(及川)
「第2次大戦終戦後、朝鮮から3人の小さな子どもを連れて女手一つで引き揚げてくるノンフィクション。自分はこれほどまでに子どもを守れるだろうか、母とは、親とは、その責任とは。理不尽な状況下でも、今を打開しないと道は開けない、ということを身をもって体現されている姿に圧倒されました」(及川)
「きっぷのいい先輩に叱られたような、活力を与えてくれる言葉の数々。パワーが欲しいときに読む本です。あまりに好きすぎていろんな人にプレゼントしたりしています。励まされ、叱られ、奮い立たされる言葉の数々。言葉ってすごい!と思います」(及川)
「空想の余地、大事ですよね。アンの『気の持ちよう』『心のあり方次第』という考え方が、今の自分を形作っているように思います」(及川)
「生きる、と能動態で書かれているわけが、この本を読んで響いてきます。人生どう終わるか、自分の生にどう責任を持つか。六本木のスタバで読んでしまい、不覚にも落涙を止められませんでした」(及川)

高橋氏、推薦の4冊

「生物学について学び始めた頃に読んだ本。外界の環境が必ず変化することを前提にした生物の仕組みから学ぶことが多く、その世界の深さに魅了されました」(高橋)
「本来リーダー気質であるかに関係なく、人間の特性を客観的に理解し、1人の力を拡張する考え方をするすると現実に落とし込んでいく。ある意味生物としての根幹を突く本書は、どんな職業の方でも糧になると思います」(高橋)
「リスクコミュニケーションにおいて、とても勉強になりました。
危機に陥っていると世論合意を形成すること、行動への責任を認識しているということを発信すること、何が問題なのかを明確にして発信すること。
ナショナルアイデンティティを改めて認識すること、状況に応じて柔軟になる部分と揺るがない価値観を明確にして発信すること、など。有事にリーダーがやるべきことが明確に書かれています」(高橋)
「育児については根性論がまかり通っていますが、なぜヒトの赤ちゃんは他の動物と比べて脆弱性が高く子育てが大変なのか、脳がどのように発達するのか、なぜイヤイヤ期は存在するのか、思春期の脳に対する役割とは、などの知識を持つことで、育児に対する解像度が高まります」(高橋)
異なるフィールド、異なる年代でありながら、愛読書を通して互いの共通項を見いだし、対話を深めていった及川氏と高橋氏。
動画では一体どんな本が登場しているか、ぜひ対談の模様と併せてご覧ください。
対談の最後に、おすすめの本を交換した(タップで動画ルームに移動します)