[アルマトイ 6日 ロイター] - 中央アジアのカザフスタンで燃料価格引き上げに対する抗議デモの一部が暴徒化する中、トカエフ大統領は6日、鎮静に向けてロシアなど旧ソ連諸国でつくる集団安全保障条約機構(CSTO)に支援を要請した。

これを受け、CSTO加盟国であるアルメニアのパシニャン首相は、カザフに平和維持部隊を一定期間派遣すると明らかにした。部隊の規模は不明。

ロシアの国営通信社スプートニクによると、カザフ内務省は5日、抗議デモによって4─5日に警官ら8人が死亡したと明らかにした。ロシアの複数の通信社はその後、カザフメディアの報道として、最大都市アルマトイの空港での「対テロ作戦」で兵士2人が死亡したと伝えた。

抗議デモは燃料価格引き上げが発端となって発生したものの、参加者の間ではナザルバエフ前大統領への批判の声が広がっている。ナザルバエフ氏は2019年に後任にトカエフ氏を任命し一線から退いたが、なお政治的な実権を握っているほか、同氏の親族が経済の大部分を掌握している。

こうした中、トカエフ大統領は5日、ナザルバエフ前大統領を安全保障会議議長から解任した。これに先立ち、内閣総辞職を承認し、代行閣僚に燃料価格引き上げの取り消しを命じたが、騒乱は収まらず、首都ヌルスルタン(旧称アスタナ)のほか、アルマトイと西部マンギスタウ州で非常事態を宣言した。ロシア通信(RIA)によるとその後、非常事態宣言は全土に拡大された。

事情に詳しい関係筋によると、デモ隊はアルマトイの空港を占拠し、フライトはキャンセルされた。

インタファクス通信は当局者の話として、その後、デモ隊は空港から排除されたと伝えた。ロイターはこの報道について確認できていない。

トカエフ大統領は6日未明のテレビ演説で、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンで構成するCSTOに支援を要請したと説明。外国で訓練を受けた「テロリスト」が建物やインフラを襲い、アルマトイの空港で航空機5機を占拠したと述べた。

カザフスタンはナザルバエフ氏の長期政権の下で政治的に安定していたことで、原油や金属などの産業に外国からの多額の投資が流入。今回の騒動を受けカザフスタンのドル建て債の価格が急落するなどの影響が出ている。

政治アナリストは、他の旧ソ連構成国と同様に、自由を否定されたことに対する若者の不満が見せかけ上の安定で覆い隠されていたと指摘。ブルーベイ・アセット・マネジメントの新興市場ストラテジスト、ティム・アッシュ氏は、「民主主義の欠如に対する根源的な不満が根底にある」との見方を示した。

ロシア大統領府は、カザフスタンは自ら内政問題を迅速に解決できるとの見方を示し、他国の干渉をけん制。米ホワイトハウスのサキ報道官は情勢を注視しているとし、自制を呼び掛けた。その上で、米国が混乱を扇動したとのロシアの主張は誤っていると述べた。